三話 はじめてのふぁんたじー
はい、小並以下感満載のサブタイトルです!
完全にふざけましたすいませんorz
その夜。
颯斗は七海に気づかれないように家の庭へ出ていた。
「さーて、じゃあ俺だけの権能を試してみますか....」
「こういうのは大体.....《隠れ家》ッ!」
権能の名前を叫び、手を前に突き出す。
すると、目の前の空間が歪み、円形のゲートが出現した。
「よっし、ビンゴ!さーて、中はどうなっているのか....」
不意に、召喚時の夢の内容が過ぎったが気にせずに俺はゲートをくぐった。
「どういうことだ、これは....」
空間の中をきょろきょろと見渡しながら俺が思ったのは...
"まるで自分の部屋にそっくりじゃないか"ということだった。
「まさか、あれは....隠れ家のイメージ?」
それならこの白い壁や床以外には何一つ自分の部屋と変わらないことも納得できる。
俺の部屋から物全てを持ってきたような配置だ。何故かコンセントがあるが。
そして、一歩足を踏み出したところでソレの声が聞こえた。
「アナタは、誰....ですか?」
「え?」
声のした所へ反射的に振り向くと、ベッドには俺より少し年下な印象を受ける現代っ子から見ればコスプレの衣装を着こなす美少女が居た。
髪は銀髪で目は青く、ちょこんと座り俺に視線を投げかけてくる。
「え、誰って....この権能の持ち主だけど...」
「..あぁ、貴方が新しく所有者になるタテハラ・ハヤトさんですか。」
「お、おう....って何で知ってるんだ?」
「そこは気にしなくても大丈夫です。魔力波長、計測......測定完了。遺伝子情報....記憶。ステータス定着...完了。これで貴方は正式に権能の所有権者になりました。」
いや、気になるんだが。というかサラッと凄いことされたんだが.....ってマスター!?この娘の!?ってかこの娘権能!?
そんな俺の疑問や感情もつゆ知らず謎の美少女こと隠れ家は...
「よろしくお願いします、マスター。」
なんて言って微笑した。
取り敢えずその日は今日は疲れたから寝る、と言って1日を終えた。
そして翌日.....
「颯斗、何か言う事は?」
「この度は誠に申し訳ございませんでした.....」
七海に精一杯謝っている俺。
今は現在進行形で夜中抜け出したことを謝罪している最中である。
「この世界は危険がいっぱいって言ったよね!?特に夜なんか最も危ない時間帯じゃない!」
七海は怒りに身を任せて俺を叱っている。魔法の一発や二発放ってきそうだ。
「いや、昨晩は事情があってだな.....!」
「問答無用!《ライトボール》!!」
あっ、やっぱり放ってきた。
光魔法と思われる一撃を受けて俺は吹っ飛んで壁に背を打ち付けた。
また背中かよ、などというツッコミをする前に―――
「グハッ...!?」
「あっ.........」
七海もやっと正気を取り戻したらしい。
「ゴメン、颯斗...ごめんなさい...」
不安げな表情で謝ってくる七海に俺は
「い、いや、大丈夫だぞ?魔法も見れたしな...」
と言いながら起き上がる。
そして、歩み寄り俯いている七海の頭を撫でた。
「ほら、俯いていると幸せが逃げるぞ?」
「!.....もう、それって溜息をつくと、でしょ?」
「おっと、そうだった。」
大分雰囲気が緩和されたな.....よし、ここで...
「あと...悪かった、昨晩は権能の確認をしていたんだ。自分の力を確かめたくてな.....本当にすまない。」
誠意を示す為に土下座して謝罪する。
「えっ......と、取り敢えず頭を上げて!理由は分かったし許すから!」
「そうか?なら良かった...」
許してもらえたことに安堵しながら俺は昨晩の行いを反省した。
幾ら確認の為とはいえ迂闊すぎた。
「....さて、取り敢えず魔法の練習しよっか。元勇者の特別授業だから覚悟しておくんだよ?」
「おぉっ!やっと俺にも魔法が....!」
目を輝かせよっしゃぁ!とガッツポーズを決める颯斗に思わず七海はくすっと笑う。
「じゃあ、早速ステータスを見せて。どんな感じか見るから。」
「おう、了解。《ステータス》」
自分のステータスを表示させ反転させて七海に見せる。
あっさりと自分の命とも言えるステータスを見せてきた颯斗に異世界で数年を過ごしてきた七海は驚くがすぐに立て直して颯斗のステータスを見た。
「!....ねぇ、この『???』って...」
あ、やっぱり気づいたか。そりゃあ謎感満載だよな..
「あぁ、それは分かんないからスルーしてた奴だな。
権能の方も早く試したかったし。」
「ふーん.....」
何か気になるような返事をしながら七海はステータスを眺めていた。
「な、何だよ。言っとくけど俺には分からないからな?」
「それは分かってる。まぁ、私もそれの仕組みは分からないんだけど...」
そうか....と納得しかけてふと気づく。
「七海....それだと何が起こるかは知ってる、みたいな言い方だけど...」
「うん、知ってるよ?」
「え?」
案外あっさりとした答えに拍子抜けした。自分としては緊迫したシリアス展開を予想していたのだが。いや、でも七海の場合日常パートが多くなる予感しかしない。
「んー...実際に見せた方が早いかな。《エクスカリバー》」
「へ?エクスカリバー?」
元の世界なら世界中の誰もが知っていると言っても過言ではない聖剣の名前を呟いた幼馴染みに戸惑いを隠せず、何の意味があるのか問おうとして―――
―――彼女の手の中にある一本の剣の存在に俺は驚いた。
サーベルではない西洋剣のサイズで....何故西洋剣のサイズが分かるかは患っていたからとしか答えようがないし恥ずかしい。
中二.....黒歴史.....うっ、頭が。
と、取り敢えず七海の剣に話を戻すと特徴としては黄金で精密な装飾が施されている。そして何よりもオーラが違う。まさに聖剣と言わんばかりに溢れる神聖なオーラが聖剣から放出され、わずかな時間の内にこの家に蔓延していた。
「本物、なのか?」
何時にもなく真剣な面持ちで颯斗が問う。
「へ?いや、まぁ、そうだよ?これは私の聖剣エクスカリバーで間違いない。まぁ、あの伝説の物かは分からないけど...」
戸惑いながらも真実を話す七海が見たのは―――
「ーーぇ」
「ん?」
「凄ぇ!凄ぇよ七海!聖剣使いとかカッコイイな!」
「えっ」
―――瞳を輝かせ羨望の眼差しで自分を見つめてくる幼馴染みの姿だった。
「いやぁ〜凄いな...!流石元勇者!いよっ、日本い..いや、違う。いよっ、異世界一っ!」
変なテンションで七海を褒め称える颯斗。傍から見るとおだてているようにしか見えないが颯斗の本心である。
「も、もう、颯斗ったら...」
それが分かっている七海は顔を照れて頬をほんの少し赤らめる。そこに照れ以外の感情はまだない。
「こ、こほんっ。まぁ、固有武器の話はこれくらいにして話を戻して...魔法について教えるよ。」
「おぉっ!待ってました!」
今、お説教とかお説教とかお説教とか(固有武器についての話も少しはあったが)によって予定より長い時間をかけてようやく元勇者アヤセ・ナナミによる特別講義が始まった。
補足(?)
・颯斗君の中学二年生の時期は黒歴史。(比較的軽傷)
・固有武器