披露宴そして出発《たびだち》~感謝をこめて~
「キレーイ!さすが怜羅!」
「やっぱりウエディングドレスって良いよね~。」
新婦の友人席で声が上がる。
「綺麗な嫁さんだな。」
「あんな綺麗な嫁さんなら、俺も結婚したい。」
新郎の友人席でも声が上がる。
「黙っていれば美男美女ですな。」
会社関係の席では毒舌が上がる。
披露宴もいよいよ終盤。余興もスピーチも堪能して、最後は急遽、手紙を読むことにした。手紙を読むのだけは止めてくれと、父から言われていたが、きちんとお礼を言うタイミングを逃したままなので。後悔したくないから。こういう時のために用意してあった手紙を読むことにした。
「それでは、新婦からのお手紙をお願いします。」
会場がシーンとする中、怜羅が立ち上がり、マイクを持つ。
『本当は手紙は読まない約束だったのに、破ってごめんなさい。きちんと挨拶ができないまま、今日も式場へ出発してしまったので、用意しておいた手紙を読むことにしました。小さなときから、病気やケガばかりで、たくさん心配をかけてすみませんでした。気の休まる暇もなかったよね?私が高い熱を出した日や、大きなケガで手術をした日に、徹夜で付き添ってくれたことは、今でも忘れていません。反抗期で口をきかなくなった頃も、黙って見守ってくれましたね。学校から呼び出しを受けた時も、私に代わって頭を下げてくれたこと。あの時はわからなかったけど、誰かのために頭を下げる大変さを知ってから、思い出すたびに反省するばかりでした。あの時はすみませんでした。お父さんとたくさん散歩したことは、今でも楽しい思い出です。お母さんが陰となり日なたとなり、支えてくれたこと、ずっと感謝しています。たくさんケンカしたけど、いつも私の味方をしてくれるお兄ちゃん。ありがとう。私、この家に生まれてきて良かったと、心から感謝しています。25年間お世話になりました。』
涙声になりながらもなんとか読み終えると、両家の両親も智也も泣いていた。ほとんどの招待客が泣いていた。慣れているはずの司会者やスタッフも涙ぐんでいた。
「怜羅さん、ありがとうございました。では、続きまして、新郎新婦からご両親に花束贈呈です。」
花束を抱えて、それぞれの両親の前に進む。智也の両親は笑顔だが、怜羅の両親は、二人で怜羅を抱きしめるようにして泣いた。新居は近いから、これからもすぐに会えるのになぜかさみしい。これが家を出るということなのだろう。
新郎新婦と両親の6人が並んでお辞儀をすると、拍手が上がった。
翌日の午後、空港に両家の面々が勢ぞろいした。ハネムーンの見送りに来たのだ。行き先はオーストラリア。ペンギンが見たいという怜羅のリクエストで決めた。
昨日とは打ってかわって、みんな笑顔だ。チェックインを済ませ、スーツケースを預けてからしばらくおしゃべりを楽しむ。
「気をつけて行ってきてね。」
「暴飲暴食するなよ。」
「写真、見せてね。」
「ペンギン、連れて来ちゃダメだよ?」
みんなが言いたいことを言ううちに時間が過ぎていった。
いよいよ出発。旅慣れた智也に連れられるようにして手荷物検査の列に並ぶ。列の最後尾から振り返ると、みんな手を振っていた。
嬉しいようなちょっとさみしいような出発だ。怜羅は涙が出そうになって、ごまかすように大きく手を振って出発口へ消えていった。
「行ってきます!」
〔完〕




