お義母さん。
「ただいま〜。」
「お邪魔します。」
山下家に到着し、それぞれ挨拶をして玄関に立つ。
「おー。二人とも、よく来たな。」
兄の洋一が出迎えてくれる。と、そこへドタバタと足音が聞こえる。弟の勇人が階段を駆け下りてきた。
「お義姉さん。本日もお美しい!」
勇人が怜羅の手を取った途端に、智也が笑いながら小突く。
「怜羅に色目つかってどーすんだよ!」
三兄弟の中で、智也が最初に結婚する。兄も弟も、相手がいないのか、休日は、こうして家にいることが多いのだ。
「怜羅さん、いらっしゃい。」
智也の母も笑顔で出迎えてくれる。こういう時、本当に良い家族に恵まれたと、いつも思う。
「お義母さん、これ…。」
手土産のピエールのケーキを差し出す。
「あらあら。そんな気を遣ってもらって。じゃあ早速お茶にしましょう。」
義母と一緒に皿やフォークを並べ、コーヒーと紅茶を用意する。
「式の打ち合わせはどう?」
「だいたい済みました。昨日も午前中に料理や引き出物の確認をしたところです。」
「そう。…ところで、まだ変更できるのかしら?…いえね。怜羅さんのお母さん、ケーキカットを希望していたでしょ?せっかくだから、追加してもいいんじゃないかと思って。」
ブライダルフェアの時に、ケーキカットか鏡開きかシャンパンタワーの中から、多数決で鏡開きに決めたのだが、怜羅の母を思うと、ケーキカットもやっても良いのではないかと、いうことだった。
…お義母さん、優しいな。
「ありがとうございます。ちょっと聞いてみます。」
「二人で何話してるの?」
背後から智也が声をかける。
「式の時のケーキカット、追加してもいいんじゃないかと思って。ホラ、怜羅さんのお母さん、ケーキカットが希望だったでしょ?」
「まあ、いいんじゃない?」
「そうこなくっちゃ!」
すぐに式場に問い合わせると、OKとのことだった。智也の母に伝えるとさらに素敵な提案があった。
『せっかくだから、怜羅さんのお母さんには内緒ね。サプライズにしましょう。』
追加料金も、岡田家にわからないように義母が払ってくれることになった。お世話になりっぱなしである。
「楽しみだね。」
楽しい時間はあっという間に過ぎて、夜になり、今は帰りの車の中だ。
「そうだな。それにしても、お袋のやつ、怜羅にやたら甘いよな。」
「私の人徳よね。」
怜羅がおどける。
「自分で言うか?」
「人徳のあるお嫁さんで、智也は幸せね。」
「お前なあ…。幸せだけどさ。」
2人でケラケラ笑う。“ごちそうさま”な2人であった。




