報告。其の2
「もうすぐ、会社辞めることにした。…結婚する。」
翌日の昼休みに、怜羅はお弁当仲間に発表した。
「!」
仲間は、食事を頬張っていて口を開けないまま、びっくりした表情を向ける。
「黙っててゴメン。寿退社して、派遣で働くことにしたの。」
「ちょっと待って!彼いたの?相手、誰?」
なんとか飲み込んだ1人が口を開く。
「同じ部署の…山下…。」
「山下って、あの山下智也?」
「あの、って何よ。」
「若手の中ではトップクラスなんでしょ。営業成績ナンバー3に入るって聞いてるわよ。有名人じゃない!」
…そういえば、そんなこと聞いたような。
「ナニナニ?楽しそうじゃん。」
“放送局”こと同期の井上香奈が察知して、怜羅たちのテーブルにやってきた。
…出た!放送局!
「怜羅が、ね〜?怜羅。」
一人が怜羅に振る。
「結婚するの。会社もあと少しで辞めるから。」
怜羅が言った途端に、香奈の目が目がキラキラし始める。そりゃそうだろう。彼女のスクープとしては大事件なのだから。怜羅としては、もうオープンにしたところだし、相手にするのもバカバカしいので、好きなだけ“報道”させることにした。
「え~?マジマジ?おめでとう!ところで、相手は?」
「同じ部署の山下っていう人なんだけど、知ってる?」
「当たり前じゃない!若手のイケメン注目株だもの。マジで~?どうりで、田所くんが相手にされなかったわけだ。」
…アンタが田所をけしかけたんでしょうが。こういうことばっかりやって、本当に下品な趣味だわ。
この下品な娘とも、もうすぐおさらばできると思うことに怜羅はホッとしているのだ。
「結婚するんだってな。おめでとう。」
昼休みもあと数分のとき、部署に戻る途中で背後から声をかけられた。声の主は、案の定、田所だった。
「それはどうも。私、辞めるから、もうお別れね。お世話になりました。」
もう知っていることに驚きながらも、怜羅が軽くお辞儀をする。“放送局”恐るべしである。
「けっこう好きだったんだぞ。一度くらい食事に付き合ってほしかったよ。」
「他の娘のほうが絶対、アンタは幸せになれるわ。」
「つれないなあ。」
「じゃあ、急ぐから。」
田所につかまると長いので、足早に立ち去る。
「おめでとう!」
部署に戻ると、先輩や同僚から口々に言われた。
「あ、ありがとうございます。」
照れながら頭を下げて、席につく。智也を見ると、智也もみんなに囲まれて照れ笑いをしていた。
午後の仕事前に理子にLINEを入れる。
『週末に結納が済んで、昨日、今日で会社で発表したよ。スッキリしたー。』




