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よくお似合いですよ。

「よくお似合いですよ。」

担当者が言う。


結婚式まで半年足らずのある日曜日のこと。2回目の衣裳合わせに式場に来ているのだ。


「よくお似合いですよ。」

今日、この言葉を何回聞いただろう。

ウエディングドレスと、カクテルドレスを何着か試着しているのだが、黒い制服に身を包んだ担当者は、これしか言わない。本当に見ているのか、面倒くさがっているのか、心配になった怜羅は、絶対に似合わなそうな色のドレスに袖を通してみると、彼女はやっと違う言葉を発した。

「お客様には、そのドレスはちょっと…。」

辛うじて見ていたようだ。しかし…

「今迄着たドレスの中でオススメはありますか?」

「お客様はなんでもお似合いになりますよ。」

「ちゃんと見てくれてます?」

「胸元に大きなリボンのあしらわれた赤いドレスが特に…。」

「そんなドレス、着てませんけど?」

微笑む怜羅に赤面する担当者。

…などという一コマが繰り広げられ、ずっとデレデレしていた智也まで苦笑してしまった。


「そろそろ、お料理や引出物も決めないとね。次のブライダルフェアで見て、決めることになるみたいだよ。」

「じゃあ、次回は両方のお母さんにもご一緒してもらわないとな。」

「ところで。智也はどう思う?」

「何が?」

「ドレス。どれがいいと思う?担当者さん、何も言わないから不安なの。」

「全部、似合う。」

「それじゃあ、あの担当者さんと同じじゃない!」

「だって、本当だもん。」

「もー!何言ってんのよ!」

そんな会話も智也の腕の中で繰り広げられている。怜羅は腕の中で智也を見上げる。

あの花冷えの夜から一年が経った今も、智也の腕の中に怜羅がいる。そして智也は腕の中の怜羅を見つめて言う。

「ここは、怜羅の場所。」

職場では相変わらず「山下」「岡田さん」と呼び合っているし、怖い先輩の仮面をキープしているので、怜羅がこんな風に甘える様子は、誰かに知られたら、ゆすりのネタくらいにはなるだろう。


夏には、結納をして、正式に婚約する。それからいよいよオープンにできる。悪いことをしているわけでもないのに秘密にすることは、スリルもあったが、何かとやりづらく、言うに言えない嫉妬ジェラシーに悶々とすることも多々あり。やっとそこから解放されると思うと結婚式よりも待ち遠しく思える時がある。


智也の部屋のソファで2人で衣裳合わせの時の写真を見る。手を重ねて、怜羅を後ろから抱きしめる形で座っているので、怜羅の頭が智也の頬に当たる。怜羅が顔を上げると唇を重ねる。

「そろそろドレスを決定して、小物や、俺のタキシードを決めないとな。」

「そうだね…。」

並べた写真を見比べているうちに、夕闇に包まれる2人だった。

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