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秋晴れの日に。

ブルートパーズの指輪は、なかなか人目を引いた。智也が気づいて、うれしそうに怜羅に報告する。

「隣のテーブルにいたカップルが、ずっとその指輪のこと話題にしてたぜ。」

「ホント~?」

「“負けちゃいられない!”なんて言って、彼氏におねだりしてたぞ。」

そう言って、怜羅の右手をうれしそうに見つめる智也だった。


智也の香港と日本の往復が続く中、気づいたら暑い夏が過ぎ、秋を迎えていた。

「さて、そろそろ…。」

「松茸のシーズンよね。松茸ご飯食べたいな。リンゴ狩りも楽しそう。」

「お前は食べることばっかりだな。」

「じゃあ、紅葉狩りにする?」

「そうじゃなくて。今度、お邪魔してもいいですか?って、お母さんに伝えてくれる?」

「え…?」

「そろそろ、ご両親に会って挨拶したい。」


智也の家はオープンなので「ご飯食べて行きなさいよ。」と、しょっちゅう怜羅は食事をごちそうになっていた。なので、すっかり顔なじみになっていたが、怜羅の家はオープンではないので、まだ父と会っていないのだ。とはいうものの、母がすっかり智也を気に入っていたので、父も観念していたらしく、日取りはあっさり決まった。


さて、当日。さわやかな秋晴れの土曜日。

母はいつもよりキレイめな服を着て、ご機嫌だ。父は朝から飲んで、母にたしなめられている。父なりに、反対するまいと観念してのやけ酒らしい。

スーツ姿の智也が座敷に通された時にはすでに出来上がっていた。

怜羅は母と一緒にキッチンと座敷を行き来して、2人の様子をうかがい見ていた。怜羅は気が気じゃないのだ。

昼間だというのに、智也もお酒をすすめられ、口をつける。仕事の様子や、家庭の様子を聞かれているようだ。

しばらくののち智也が頭を下げた。

「結婚を前提にお付き合いさせてください。怜羅さんをください。」

「こんなで良かったら、どうぞお持ちください。ただし!絶対に返品しないと約束してください。」

そう言って智也に頭を下げた。いつまでも娘を手放したくない父の、精一杯のはなむけといえよう。

父が、自分と同い年の智也に頭を下げる様子を見て、思わず涙が出てくる怜羅だった。

「俺の負けだ。酒の飲めないヤツなら、そんな婿要らんと言ってやるつもりだった…。山下君強いな…。」

そのまま座敷でパタリと寝てしまった父だった。


外はまだ明るい時間。秋晴れの空の下、2人は近所を散歩に出る。

「大丈夫?だいぶ飲まされたんじゃない?」

「ちょっと、ね。お父さん強いな。正直、ちょっとヤバかった。」

怜羅の肩を抱き寄せる。

「ちょっと、酔っ払い!ここ、外だよ。」

「いいの!」

智也は強引にキスをすると人目を気にしてもがく怜羅を抱きしめる。

「俺の親にもきちんと報告しないとな。」

昼下がりの日差しが、2人の影を長く地面に描き出していた。

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