うたたね。
怜羅はシャワーを浴びながらつぶやく。
「胸、小さいって言われたら、どうしよう…。下手って言われたらどうしよう…。」
そんなに経験がない上に、そういうことに自信がない怜羅は、智也のところに行きたいのにためらっている。ベッドでは、シャワーを済ませた智也が待っている。
バスルームからそっとのぞくと、智也はベッドで横になってテレビを見ていた。そっとのぞいている怜羅に気づいて声をかける。
「おいで。」
そっと歩いて行くと、ためらう間もないまま智也の腕にすっぽりと包まれる。
…なんて心地良いんだろう。
耳に、頬に、唇に智也の唇を感じる。大好きと伝えたくて、怜羅は何度も抱きしめる。
「智也…。」
抱きしめながら名前を呼ぶ。智也も応えるように抱きしめる。肌が触れあうだけで安心できる。
気づいたら、腕の中で眠っていた。
「…よく眠っていたね。腕枕したら、スヤスヤと眠っちゃったから、可愛い寝顔を見てた。」
見られていたことが恥ずかしくて、思わずシーツで顔を覆う。
「可愛いから、いいの。」
智也が額にキスして抱きしめる。
「もう少し、こうしてて、いい?」
「いいよ…。」
怜羅が智也の唇をふさぐ。
抱き合って、唇を重ねているうちに二人はまた眠っていた。
「すっかり遅くなっちゃったな。もう帰らないとな…。」
智也が言う。助手席の怜羅は名残惜しい気持ちでいっぱいだ。運転している横顔を見つめている。
「怜羅、そんな表情しないで。また寝顔を見たくなっちゃうから。」
智也が怜羅の頭をポンポンとたたく。明日からまた、会社では“知らん顔”して過ごすのだ。明日にはまた智也を「山下」と呼ぶ。
毎日、智也といられたら、いいのに。
日曜日の夜は切ない…。
「晩メシは、モスバーガーはどう?俺、大好きなんだよ。」
智也がわざと明るく言う。
「そうしようか。」
怜羅はハンバーガーはあまり好きではないが、モスバーガーは別。
日が浅いだけに、まだお互い好みをほとんど知らないのだ。そしてお互いのお気に入りも知らないので、それもまた新鮮だ。
ハンバーガーをかじりながら智也が言う。
「こういうのも、いいね。結婚したら、忙しい日は仕事帰りにモスとかさ。」
「それ助かるー!たまにはモスろうね!」
「早く結婚して、可愛い寝顔、毎日見たいな。」
「ちょっと、まわりに聞こえるから、やめて。」
「だって、怜羅の寝顔、可愛かったんだもん。腕枕したら、赤ちゃんみたいにスヤスヤ寝ちゃうし。」
「だから!聞こえるから!」
店は空いていても、そういう問題ではないのだ。しかし、ご機嫌な智也はニコニコだ。
切なさを、智也が少し和らげてくれた夜だった。




