ご対面。
「あらあら。そんなことがあったの。会ってもらえるのね?ところで、怜羅さん、お母さんにも会わせてくれない?こないだはチラッと見ただけじゃない?キレイな娘よね。」
智也は智也で、家に帰ってすぐに話したのだ。
つい数日前に、出張帰りに送ってもらった時に、家族には姿を見られているので、付き合っていることは、知られていたが、いきなりの結婚がらみの話に智也の家族全員が驚いていた。それでも誤解を解くチャンスを得られたことに安心したようだ。
そう。二人は、つい数日前に付き合いだしたばかり。そしてもう結婚について考えている。それにまだ、そういう関係になっていないのに、迷わなかった。それまでの傾向を思えば不思議なのだが、すんなり受け入れられている。
ついに迎えた日曜日。
怜羅は母と二人、車に乗る。ピエールに向かっているのだ。理子と怜羅のお気に入りの店。母を案内するのは初めてだが、母の口にも合うだろう。
智也は、自信たっぷりな様子を怜羅に見せたものの、ドキドキしながらピエールに向かっていた。怜羅の母親がどんな人なんだろうということも興味深い。姑になる予定なのだから。
ほぼ同時に到着して、3人で店に入る。すでに仲の良い3人のような雰囲気だ。
席に座って、まずオーダーする。もちろんケーキセットだ。
「お母さん、何がいい?」
「怜羅と一緒の。」
「飲み物はコーヒー?」
「智也は?」
「コーヒーと…ケーキは、おすすめは?」
「今日の品揃えなら、プリンタルト!」
「じゃあ、それ!」
怜羅の母と智也が同時に声を上げ、思わず顔を見合わせて笑う。
「今日は、ありがとうございます。山下智也です。」
オーダーを済ませてから、智也があらたまる。母も頭を下げる。
「僕の家はクリスチャンですが、僕の母も、もともと仏教だし、仏教の方とのお付き合いもしていますので数珠も持っています。両親にも話しましたが、我が家としては、宗教が違っても、ご実家とのご縁を離すようなことは決してありません。」
母は静かに聴いている。
「…そう、ですか。」
「はい。大丈夫です。そしていずれ、僕の仕事の都合で海外に行く日が来ると思います。その時は怜羅さんを、連れて行きたいです。」
智也がまっすぐに向き合う。未来の姑に向き合う。
「…そう。怜羅、英語、忘れちゃったんじゃない?勉強しときなさいよ。」
母が微笑む。
「お待たせいたしました。」
ちょうど良いタイミングで運ばれてきたケーキに母が思わず微笑む。
怜羅は、母がかなり柔和な対応をしたことに拍子抜けした。この対応は無抵抗に近い。なので喜びを実感したのは、数秒後だった。
…智也。ありがとう。お母さん、ありがとう。
嬉々としてフォークを持つ母に、二人はホッとする。
大好きなプリンタルトは、今までで一番おいしいケーキとなった。




