お母さんに会わせて。
「実は…。」
怜羅の両親が、宗教に対する偏見が強いこと。智也がクリスチャンだと知ったら、とても難しい顔をしたことを話した。
…ああ。もう、ここまでかもしれない。
話し終えた後、智也の顔を見ることができない。怜羅は料理に手をつける気にもなれないで黙りこんでいる。
「ご両親に会わせて。せめて、お母さんにだけでも。」
智也が発した言葉は、覚悟していた怜羅には、嬉しくも意外な一言だった。
「智也…?」
「クリスチャンに対する考え方もそれぞれだと思うし。要するに、俺の人間性を買ってもらえばいいんだろ?」
びっくりして、言葉を失ったままの怜羅に、智也が言う。
「確かお母さん、ケーキ好きって言ってたよね?お気に入りのケーキ屋さんで、お母さんに会わせて。」
…話して、良かった。
涙があふれ出す。達夫のときのこともあったし、もう、今日までかもしれないとまで思っただけにホッとしてポロポロと涙が止まらない。
「昨日から、ずっと心配していたの?」
黙ってうなずく。うなずくとまた涙がこぼれた。
「心配しなくて大丈夫だよ。さ。メシ食おう。冷めないうちに。」
安心したら少しお腹がすいてきた怜羅。箸を手にしながら、もうひとつの心配ごとも言ってみる。
「…それに、智也のご両親は、私との結婚、反対しないかしら?大学のレベルが違いすぎるもん。」
「大丈夫だよ。たぶん反対しない。…というか、反対させない!」
事実、智也の出身大学は偏差値も高い、いわゆる名門大学なのだ。それに対して、怜羅の出身は、知名度も低いし、偏差値も比べ物にならないくらい低い。体裁を気にする家なら門前払いの可能性だって十分にある。
「大事にするって言っただろ?」
「話して良かった。もう、どうしようかと思って…。」
「さあ、時間と店を決めよう。どこのケーキ屋さんにする?今度の日曜日で大丈夫?」
家に帰るなり、怜羅は母に話した。母はすぐに父に話したようで、ブツブツ言っているのが丸聞こえだった。
「そんな、前の男と別れたばかりの上にすぐに次の男に会えだ?会ってみたいならお前が一人で会ってこい!」
そんな父の声を尻目に、そーっと部屋に引き揚げて本を読んでいると、母がやってきた。
「日曜日、何時に行ったら良い?お母さんだけ行くね。」
恐る恐る母の顔を見ると、笑顔だった。
…会ってくれるんだ!よかった。
怜羅は急いで智也に報告をした。
『お母さんが、会ってくれるって。10時に“ピエール”でいい?』
『OKです。よろしく伝えといてください。では日曜日に。』




