約束。
コウテイペンギン君を連れて、水族館を後にしてから、帰りの方向に向かいながらのドライブを楽しんで、晩御飯も食べ、すっかり暗くなった頃。二人は公園を手をつないで歩いていた。人のいない公園は、なんて静かなんだろう。
吸い込まれそうな暗く不思議な空間に、星の光が華やぎを添える。
立ち止まり、暗さを感じていると、智也に包み込まれる。鼓動と腕の優しさが怜羅の体に染み込む。唇をゆっくりと重ねる。キスがこんなに温かいものだったのかと、久しぶりに思い出す。智也は唇を離すと、さらに深く包み込んだ。怜羅も智也を抱きしめる。
「あの…。真剣に、…その…結婚の事も考えて付き合って欲しいんだ。」
智也は包み込んだままで言った。
「結婚!?」
怜羅ががばっと顔を上げる。
「…まだ、考えられないかな…?」
怜羅は耳を疑った。次の恋すら考えられないと思っていた矢先に、こんな事があるなんて、キツネにつままれた気分だった。
「どうして、泣くの?」
優しい指が怜羅の頬を拭う。怜羅は涙が出ていたことすら気づいてなかった。
「夢みたい…。だって、私…。」
「言わなくていい。」
…前の彼と別れたばかりだよ?
「就職して、2年目に入ったばかりだから、すぐにってわけじゃないんだけど、怜羅を俺の嫁さんにしたい。」
智也は、まっすぐに怜羅を見つめる。迷いは、少しもなかった。
「智也のお嫁さん…なる。」
「良かった!約束ね。」
再び智也は、胸にしまいこむように怜羅を抱きしめた。
車に戻って、エンジンをかける智也に、怜羅がきく。
「ところで。そういうコトもしないうちに結婚を決めて、いいの?」
「じゃあ、帰り、寄ってく?」
「え?」
…私、誘っちゃった?
「怜羅が、本当にいいのだったら、すぐにでも抱きたいけど、結婚をダシにしているみたいだから。それに、そういうコトしないで結婚を決めちゃいけないなんて決まり、ないだろ?」
「そうだね。」
「大事にするから。出張が多いから、思うように会えない時もあるけど、大事にするから。」
「智也…。」
「明日、行きたいところ、考えておいて。今日はもう送って行くよ。」
額にキスをすると、智也はハンドルを握った。




