ペンギンに会いに。
怜羅の「ペンギンが見たい。」というリクエストで早速、翌日は水族館に行った二人。
「ペンギン、ペンギン♪」
車の中で怜羅はそればかり言っている。怜羅がペンギンになってしまいそうだ。
「怜羅…。」
「“ペンギン”以外の事、話して…。」
「はい…?」
「今朝は、ペンギンという単語以外、ほとんど聞いてないよ。」
「んーと…。ペンギンの口の中はすごいトゲトゲなんだよ。」
「だから!それもペンギンネタだし。」
「…じゃあ、智也はどんな動物が好き?」
「全部!虫も金魚も好き。」
「虫も!?」
「虫も好き。」
「キモーい!」
さてさて。ペンギンネタから少しだけ離れた頃に水族館に到着。
「わーい!」
ガシッ!
怜羅が走り出そうとしたとき、動きが止められた。智也が怜羅の手をつかんで止めたのだ。
「頼むから、子供みたいな事、しないでくれ。」
智也が苦笑しながら肘を差し出す。
「ほら。デートなんだから。」
「恥ずかしいな…。」
怜羅が照れくさそうに肘に手を乗せる。
「ここで迷子になる方が恥ずかしいと思うよ。」
智也がククク、と笑っている。会社にいる時とは、えらい違いだ。
「ほら、一緒に歩いて、順番に見ていこうよ。」
怜羅は智也の言葉に笑顔で頷く。
大きな水槽の中で魚の群れがキラキラ光る。小さな個室のような水槽の中では、珍しい色の魚がじっとしている。
「キレーイ!」
「ほら、見とれてると、はぐれるぞ。」
人の群れの中、智也が引き寄せる。すっぽりと腕の中に収まったら、耳が智也の鼓動をとらえる。次の瞬間、二人は唇を重ねていた。人ごみの中での一瞬のキスにびっくりしていると、智也が微笑んで怜羅の頭を優しくポンポンとたたく。
「お。飛び込んだ!」
「あの子、可愛い!」
順番に見て回って、ペンギンのコーナーに着いた。ガラスの向こうでは、色々な種類のペンギンが水に飛び込んだり、泳いだり、飛ぶように陸に上がったり。見ていて飽きない。そして智也は、怜羅を見ていて飽きないようだ。先ほどから動物も見ているが、怜羅は目をキラキラさせながら、ともすれば、走ってどこかに行ってしまいそうで、ホントに新鮮に反応している。いつぞや、「メモっつっただろ!」だの「こら、山下!」だのと言った怖い先輩とは思えないのだ。
「…何見てんの?」
怜羅が怪訝そうに振り向く。
「ペンギンより、子供みたいな怜羅を見てる方が飽きない。」
「何よ、ソレ~!」
むくれる怜羅の手を智也が引っ張る。
「お土産を見に行こうよ。」
ワキワキとお土産を見ている怜羅を見て、智也がクスクス笑っている。お土産屋は、ペンギンのものでいっぱいで、怜羅が子供みたいにはしゃいでいるのだ。
「かーわーいー!」
怜羅は中でもコウテイペンギンのぬいぐるみが特に気に入ったらしく、抱き上げて見つめている。
「じゃあ、プレゼントするよ。」
「え?そんな…。」
「俺だと思って、いつも車に乗せておいて。」
言うが早いか、智也はぬいぐるみをヒョイと抱き上げてレジに向かうと、すぐに紙袋を大事そうに持って戻ってきた。
「はい。可愛がってやってね。」
「ありがとう。」
…頼んだぞ、コウテイペンギン君!
怜羅の笑顔を見ながら、LINE攻勢の相手が気になっている智也は、
出張が多くなりそうな自分に代わって、コウテイペンギン君に願いを託した。




