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迎えに来てくれる?

電話やLINEで連絡を取り合って、10日間ほど経った、ある水曜日の晩。智也がスマホを前に独り言を言っていた。

「迎えに来て。…迎えに来てくれる?うーん…。何て言おう。」

帰国のフライトが決まったので、怜羅に連絡をしたいのだが、どう言おうかと、思案中なのだ。告白前からこんなことで大丈夫なんだろうか。

「チョ、チョコを早く渡したいから、迎えに来て。…うーん。恩着せがましいなあ。早く会いたいから、迎えに…。告白とセットみたいだしなあ…。」

後者は、もし怜羅にその気がなかった場合にNGだろう。

「エッチな漫画を読んでたこと、内緒にしてあげるから迎えに来て!って言ってみようかなあ。」

目的を見失っている智也。脅してどうする?


一方、怜羅のスマホは、田所からのLINEが何回か入っていて、辟易していた。会社でも顔を合わせると何か言ってくる上に、夜はLINE攻勢だ。

『なんで返事くれないの?』

『俺、悪いことした?』

『フレンチをご馳走するよ。』

同期ゆえに、気まずくなるのがイヤで、スルーしているのだが、田所は執拗にLINEを入れてくる。

「田所〜。空気読め〜!」

これではストーカーの一歩手前である。


怜羅のスマホが鳴る。ビクッとしてから、息を吸い込んで…

「しつこい!もう誘ってこないで!」

「え…。怜羅?」

声を聞いてハッとする。

「智也?ごめん!動転して、間違えた!」

「何か、あった?」

「いやその、あの…。」

「もしかして、元彼?」

「違うの。実は、執拗にLINEを入れてくる人がいて…。」

「どんな風に?」

「映画の誘いを断ったんだけど、ゴハン行こうとかしつこいの。」

「そうなんだ…。」

気まずい沈黙が流れる。話さない方がよかったかもしれないと後悔した。

「じゃあ、俺がメシに誘ったらどうする?」

「え?」

「明後日、空港まで迎えに来て。その後、メシ行こう。」

「帰ってこられるの?わかった!お迎え行く!」

「よかったー。夕方着のフライトだから、よろしくね。じゃあ、明後日ね。」

智也は電話を切ってから、ホッとしてビールを喉に流し込む。どう言おうか、もしくは断られたらどうしようかと、ドキドキしていた上に、第一声に驚いて、喉がカラカラだった。ホッとして独り言も楽しげだ。

「明後日が楽しみだな。うれしいから、チョコをもう一つ追加しようかな。あ。ピアスの方がいいかな。」

…しかし、執拗なヤツって、気になるな。社内のヤツか…?油断できないな。

早くも智也の心配が始まっていた。


一方、怜羅の部屋では、ファッションショーが繰り広げられていた。

「何着てこう。家に送って行ったとき、もしお母様に見られたら…。」

智也の母親にチラリとでも姿を見られる可能性があるので短いスカートや、派手な色はNG!でも可愛いのがいい!とこだわって選んだのは、初夏らしいオフホワイトのニットのアンサンブルに柔らかい生地の薄いモカブラウンのパンツの組み合わせ。アクセサリーは全体的に小ぶりのものをセレクト。バッグも同系色のシンプルな物に。

「よし!完璧!」

早くも明後日の服をセットして、ベッドに入る怜羅だった。



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