召還前日 2
放課後。私と陸斗は不本意だけど一緒に帰る。家が隣だから仕方ない。私のお母さんと陸斗のおばさんは同級生で、凄く仲が良い。
「………なぁ、音」
私の少し後ろを歩く陸斗が何か言いたげにしてる。どうせ、またゲームの話しだろう。
男の子はゲームが好きだけど陸斗も例外じゃない。高校生になっても夜更かしする程ゲームに夢中だ。
「…何?」
周りから仲が良いと思われても嫌だし、冷たく返す事にした。
「んだよ。まだ怒ってんのか、昼間の事……なっ。俺ん家でゲームやろうぜ! 弥生も呼んで」
やっぱりゲームの話しだ。それに昼間の事、謝りもしない。これが喧嘩の種になる事が少なくなかったけどいつの間にか喧嘩してるの忘れていつもみたいに遊んでたなぁ。
「嫌よ。大体、高校生にもなってゲームって。恥ずかしいから止めたら? 私も弥生も好きじゃないし」
あ……ちょっと強く言い過ぎたかな。
陸斗を見てみるとショックを受けてるようだった。唇を噛み、私を睨む。
「…あぁ、そうかよ。 お前なんかと遊ばねぇ!じゃあな、絶壁女!」
「なっ! 陸斗の変態!!」
陸斗は走って行ってしまった。またやってしまった。喧嘩はいつもの事だけど最近は喧嘩する程、胸が苦しくなる。
私が悪いのかもしれないけど何よ、絶壁女って!
陸斗って巨乳が好きな訳?やっぱり変態。
家に帰るとお母さんがご機嫌だった。私の家はお母さん、私、弟の三人家族。お父さんは病気で私が中学校の時に亡くなった。そんな不幸を乗り越えてお母さんも私も強くなった……と思う。
「あら、音? そんな所で何突っ立ってるの。またりっくんと喧嘩でもしたんでしょ」
「そ、そんな事ないよ……それよりお母さん、りっくんって呼ぶの止めなよ。アイツも高校生だし」
そう言いながらカバンをソファに放り投げ、私は冷蔵庫から麦茶を取り出す。
お母さんは可愛い物が好きで小さい頃の陸斗を見て、「りっくん」と呼んだのがきっかけで今もそう呼んでる。
「高校生になっても子供は子供なのよ♪ あ、そうそう。音、これをりっくん家に持って行ってくれない?」
お母さんは私にタッパーを押し付ける。中身を見ると豆大福が入っていた。
「これ……」
「そうよ。京子ちゃんが亡くなってもうすぐ一回忌でしょ? 京子ちゃんが好きだった豆大福、お仏壇に供えてあげて」
嫌だったけど断れなかった。喧嘩したばっかりなのにまさか陸斗の家に行く事になるとは…。
タッパーを手に、隣の家に向かう。インターホンを押そうとする手が震える。でもこれを届けないと家に帰れない!
(……よし)
決意を込めてインターホンを押した。ピンポーンという軽い音が何度も繰り返される。
『……ゲームは嫌いなんじゃなかったか?』
嫌味を込めて言われた!
腹が立ったけど、ここは抑えて用件だけを伝える。
「実は……お母さんが、おばさんの仏壇に供える豆大福を作ったから…その……持って来たんだけど」
『……………………分かった』
長い沈黙の後、陸斗はそれだけ言うとインターホンからプツンという音がした。
それから数秒後、今度はドアが開いた。そこには制服姿の陸斗が立っていた。
(制服のままゲームしてたんだ)
「…入れよ」
「う、うん……お邪魔します」
冷たい陸斗の声に寂しさを堪えながら静かにそう言った。陸斗の家には小さい頃からよく言ってるから懐かしさは感じない。
リビングに入ると部屋が寂しく感じた。活気のない、暗い家。それはきっと京子さんの死が原因だろう。リビングの一角に仏壇がある。そこには京子さんの幸せいっぱいの写真があった。
「……おばさん、これ…お母さんからです」
涙を堪えながらタッパーの中からラップに包まれた豆大福を置いて手を合わせる。
そんな様子を陸斗は椅子に座って見ていた。
「…ふぅ。 じゃ、帰るね」
何もする事ないし、ここに居ても気まずいだけだもん。それに陸斗の顔 見れない。
「待てよ」
引き留められた!
まさか引き留められると思ってなかったからビックリした。
「…え、何?」
「豆大福の礼は近いうちにするって…お前ん所のおばさんによろしくな」
…なんだ、そんな事か。
………………へ? わわわ私ったら何を期待したのよ!
「う、うん。任せて」
「……なぁ、音」
またか。今度は何よ。
振り返って文句を言おうとした時。
「……俺の家、いつから壊れたんだろうな」
陸斗の口からそんな聞きたくない言葉を聞いた。
何を言ってるんだろ? 壊れた? だってまだおじさんが…
「りっ、陸斗―――!」
陸斗は久しぶりに泣いていた。声も出さずにただ、手で顔を隠し、泣いていた。
私は何も言えずただ立ち尽くした。
なんかシリアスっぽくてすいません!
異世界ものなのにまだ異世界に行きません。
でも読むの止めないで下さい!!!




