召還 前日
「………本当に、冒険者様は現れるのでしょうか? 考えたくありませんが失敗すれば私や魔導師の方々も死んでしまいます」
ここは城内。この城の主らしき人物は立派な王座に座っている。それともう一人の少女は可憐なドレスを着ている。少女の背後には話に出てきた魔導師が数人いた。
「ふむ、分かっている。お前はたった一人の娘だ…だがこれはこの国だけでない、世界の問題でもあるんだ。協力してくれ」
「………はい」
王の言葉に少女は渋々返事をすると王は満足したのか、機嫌がよくなった。
それとは別に少女の心境は複雑でとても喜べる気分ではない。
(…失敗しなければ良いけど)
少女は一人、窓から見える星空を見ながらそう心の中で呟いた。
◇◇◇
「こら、陸斗!! 待ちなさいよっ」
「へへんだ。ノロマなお前に俺が捕まえられるかよ!悔しかったら捕まえてみろよ、バーカ」
早速ですが私、如月 音はある一人の困った奴を追い掛けていた。奴とは困った事に幼馴染みだ。だから幼稚園からずっとこんな調子。
花の高校生になったんだから恋人ぐらい作りたいけどいつもコイツとつるんでるせいで乱暴者だと誤解されてしまった。
「相変わらず仲が良いね、音と草壁君は。幼馴染みだからかな?」
「ちょっと弥生! こんな奴と仲が良いだなんて止めてよ。それに毎回言ってるけどコイツと幼馴染みって事が嫌なの」
私と陸斗が言い争ってる中、呑気に弁当箱を開ける御門 弥生は小学校の頃からの親友。何と、家は神社で巫女さんなの。ある時は礼儀正しく、誰にでも優しい。まさに大和撫子だ。それに胸も私よりある。
黒髪で肩に少しつくぐらいの長さで幼く見える顔立ちは男子を虜にしてしまう程。
「はいはい、それで今日は何されたの?」
一番の長所はここだ。誰にでも優しく、相談に乗ってくれる。弥生と同じクラスになれば悩み事が無くなるっていう伝説がある。その事からクラス、いや弥生を知ってる人からは通称 マザーと密かに呼ばれているのだ。
「それが聞いてよ。陸斗ったら胸見て「小っさ」って言ったの! 酷いよね。 昔からそう、私が嫌がる事を平気でして喜ぶような奴なんだよ」
私は溜まっていた陸斗に対する不満を一方的に話した。弥生はいつもながらお弁当を食べながら話しを聞いてる。
ながて話し終わって弥生も食べ終わった。弁当箱を素早く片付けるとやっと意見を貰える。
「それっていつもの事じゃない。私の知る限りじゃ小学校の頃から同じよ? よく言うわよね、女子にちょっかい出す男子はその女子が好きだって」
弥生は意地悪く上目遣いで私を見て微笑む。今までで一番悪いというか有り得ない。つまり、弥生が言いたいのか陸斗が私を好きだって言うんでしょ?
そんなの有り得ない。