三回戦 横顏は霞を伴い
世界唯一にして最高峰の学園
世界最高権力機関監修の騎士育成学園――その名は“フロックハート”――
主に4つのエリアに別れるティアル王国、東エリアの大半を占め、施設内には、森林や噴水広場、巨大図書館などが揃っている。
なかでも、有名なのが学園内の時計台で、王国に代々仕える時計屋の芸術的作品である。
300年前に起こった戦争を経て、未来の平和と秩序を担っていくものを世の中に多く輩出するため第7代ティアル王国国王“ラフォーレ・ド・ティアル”により設立された。
守るべきは己の身だけにあらず。
救いの手を民へ。
ラフォーレは国王ながら、民の事情を生涯をもって献身的に考えた、権力や地位といった身分が先を歩く今では理解できるものは少ないであろう。さらに彼は、人間の血筋であったが、魔法にも長けていたそうだ。
命の目覚めを誘う精霊、春がこの学園にも出現するようになったこの季節に、学園の入学式が今年も執り行われる。年に一度、術式によって時計台の鐘が鳴らされる日でもあり、渡れ、渡れ、繋げーーと語りかけるかの如くそれは海をも超えていくのだ。
学園内部―――ゲート広場
思わずのけぞってしまう高さの時計台。
「でけぇ――………」
「結輔君、さっきからよく飽きないのね?」
「あっ、すみません……そんなにみいってましたか?」
「えぇ…」
「アリスさんはこの王国に住んでるんですよね?」
唐突な質問に目を瞬く。
「そう――…ね、それがどうかしたの?」
アリスが軽く返すと結輔の表情が徐々に曇る――
「いや、こんな素晴らしい装飾のされた時計台を毎日見れるなんて、その、羨ましいと思いまして――.....祖国は一度、壊滅にまで追い込まれましたから....」
あっ――……アリスの胸に鈍い痛みが襲ってくる、全身が煩くてまわりの音が消えかけそうになる
「殲滅しなければ」
ブワッ
巻き上がる風。
ーーー空気が、怯えた。
アリスは目がうつろになっているが、しかし、体は結輔の方向を向いている。
「アリスさん?」
はっ―――…
「ごっ、ごめんなさい、もうすぐ時間ね、行こうか」
とことこと歩き始めたアリスは心なしか顔色が優れないようにみえた。初めてあった時みたいだ――
「そうですねっ」
大丈夫そうだと結輔は安心するが、先行くアリスに疑問を抱く....、けれど、何だか聞いてはいけない気がしたのだった。
時計台のそばへ行くとそこは、真新しい制服に身を包んだ新入生達がぞろぞろと集まっていた。
人の多さにおののきつつある結輔に、声をかけるアリス。
「静まり.....」
サーーッ、消えた、音が
「あのっ!?え、!?」
「魔法の一つ、今から大切なことを言うわ、だから音を消したの。普通の子達には会話をしてるようにしか見えないわ、私より格上のものじゃなければ干渉もできないし、安心をして」
「え、はい!」
きょとん、といまいち状況をのみこめていない結輔にアリスはそれで、と続けえう。
「ここの学園で生活してく以上私が五大騎士というのは必ず伏せること、それは昨日話したわね?」
「勿論です、エクランドさんにも言われましたし……」
―――いいかい、結輔君?私は旅が好きだ。
だから、この地位が利用できることが多くある。けど、本来公にすることではないんだ。顔だって気密情報さ。もしも君の責任でばれたら…………クククッ―――
「それと、機関との関わりを持っている、それだけで、あなたは、他の学生に後ろだてがあると睨まれ、疎まれ、....狙われるわ」
訝しげな表情をみせる、アリス。
「え?」
「ワンドは力を増幅させすぎた。掲げる文句すら誠かしれないわ。平和、秩序というけれど、誰しも方向性が同じとは限らないわ、だから、犬に嗅ぎつけられなうようにね、せめて、君だけでも。
皆、偽りを被って生きているのよ」
ざわざわとまた音が色が確かに帰ってくる。
言えなかった、最後の言葉。
どうして、そんな悲しそうな顔するんですか....っ