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勉強会!

きままにさんからのリクエストの短編を書いてみました。

……けど、“お泊り会”がリクエストだったのに、なぜか“勉強会”主体の話になっているような……。

……と、取り敢えず、これはクローが初等部六年生(12歳)の時の話です!

是非、お楽しみ下さい!

幻世暦4996年5月中旬。

春の暖かさが徐々に夏の暑さに変わり始めるこの時期。

僕──神刃 クローは、地に着きそうな程伸びた自分の髪を不満げに弄りながら、床で黒コゲになっている同級生の男子生徒達三人に聞く。

「……で? 僕を拉致しようとした理由は何なんだい?」

「ら、拉致しようとしたワケじゃ……」

「いきなり後ろから袋を被せてきた上に、縄で縛ろうとしておいて、よくそんなことが言えるね?」

「じょ、女子生徒に頼まれて……」

『……“ボルト・ショック”、スタ──』

「ままま待て! 嘘じゃないんだ! 本当に!!」

「……何でそんなこと頼まれたんだい?」

「ほ、ほら、もうすぐ中間テストの時期だろう? だから、皆がクローにテスト勉強を教えて貰おうと思って……」

「でも、それならここまでする必要ないよね?」

「「「そ、それは、その……」」」

僕のその言葉を聞いた三人は、引き攣った顔を見合わせた後、何故か顔を赤くさせながら言った。


「「「そうして連れて行ったら、多分女子がクローを(女子の制服に)着替えさせるかみ……、と思って……」」」


──ブチッ。

『──“絶攻雷ストライクボルテクス”──』

「ちょ、ちょっと待て、クロー!」

「その魔法は、さっきのよりも五段階上の……」

「そんなの喰らったら流石に俺達でも──」

『──────スタート』

「「「──ゥッギャァァァアアアアアッッッ!!!」」」

……エクシリオン魔導学園の敷地内に、初等部六年生の男子生徒の悲鳴が響き渡った。


 □□□


「……で、まぁ、そういうワケでルゴールくん達を折檻したんだけど」

「ムゥ……それはルゴールくん達の自業自得だから仕方無いよね……」

「「「確かに……」」」

ここは、エクシリオン魔導学園の学生街エリアにある初等部の純人用女子寮。

そこまで三人の男子生徒を(比喩ではなく)引き摺ってきた僕が見たのは、幾つかの広い部屋を利用して簡易の教室を作っているクラスメイト達の姿だった。

どうやら、属性魔法科に所属している初等部六年生の大半が教えを請いに来ているらしい。

僕は、ルゴールくんを始めとする先程の三人をそこら辺に放りながら、僕と同じく教師役に抜擢された幼馴染の白鏡しろかがみ 彩那あやなに理由を説明し、用意されていたクッションに腰を下ろす。

そして、今回の企画の発案者であるクラスメイト──犬妖精クー・シーのミルファ・知環ちわ・アルマルマちゃんの方を見て、諦念を滲ませた表情をしなかせら質問をした。

「……で、今日のスケジュールは?」

「話が早くていいね、クローちゃん」

「僕は男だよ」

「取り敢えず、今日はテスト一週間前なんだけど、一週間ずっとクローちゃんや彩那ちゃんに教師役をさせるワケにもいかないからね」

「僕は男だよ」

「だから今から夜中の十二時までの十時間で、一通りテストのポイントだけ教えて貰って、後は自分達でやろうってワケ」

「……スルーされた」

僕は見事に一方的に話をするミルファちゃんに辟易しながらも、その話に出てきた一箇所が引っかかり続けて質問をする。

「……で、十二時までやるって言ってたけど、流石にそんな時間に“吟声ぎんせいの森”抜けて帰るのは(常識的には)厳しいんだけど?」

「ん? あぁ、帰省組のこと? なら、大丈夫。先生に特別に女子寮ここの宿泊許可を取ってるから」

「それって……今日はココに男子を泊めるってこと?」

「そゆこと! 安心して、クローちゃんはちゃんと女子の部屋で保護してあげるから」

「なんでっ!? 不安要素しか無いと思うんだけど!?」

「え? クローくんは、ルゴールくん達と一緒の方がいいの?」

「うっ……!」

「その点、女子の方なら大丈夫だよ! ちょっと着せ替えをするくらいだから!!」

「………………」

……男子と女子、どちらの側で寝たほうが安全か考えた僕は、案外“吟声の森”を抜けるのが一番安全なんじゃないか? と考えていた。


 □□□


……一時間後。

「──クロー、基本七属性って、火と水と風と土と……後は何だっけ?」

「雷と光と闇……これ、基礎の基礎なんだから、ちゃんと覚えとこうよ、貝塚くん……」

「彩那ちゃん、身に纏うように発動する魔法の名称って何?」

「あぁ、装備型アーマードタイプのこと? 特殊能力エキストラスキルを持つものが多いのが特徴の魔法だけど……それ、確か今回のテストの範囲にはなかった筈だよ、トトロちゃん?」


……二時間後。

「クローちゃん、“ヴィオレットスパーク”の実演をしてくれない?」

「的が無いから、今はちょっと……。後、僕は男だよ、ヒソカちゃん」

「彩那ちゃん、この身に纏うように発動する魔法って何か分かる?」

装備型アーマードタイプだよ。特殊能力エクストラスキルを持っているものが多いつて、さっきトトロちゃんに説明したんだけど。……けど、これテスト範囲に入ってなかった筈なんだけど、キサラちゃん?」


……三時間後。

「クロー! スーツ姿に眼鏡をかけて、女性教師スタイルに!!」

『“ヴィオレットスパーク”、スタート』

「あばばばば!」

「ありがとうね、ルゴールくん。わざわざ的になってくれて」


……四時間後。

『“絶攻雷ストライクボルテクス”、スタート』

(((今度は何を言ったんだよ、ルゴール……)))

「白鏡ー、この身に纏うよーに発動する魔法って何ー?」

「だーかーらー、装備型アーマードタイプって言ってるでしょうっ!? もうこれで何人目か知らないけど、それはテストにでないからねっ!? 分かった、貝塚くん!?」

「はーい………………」


……五時間後。

「白鏡さーん。この身に纏って発動する水属性の魔法って……」

「それは装備型アーマードタイプ……じゃなかった。えーと、それは“アズールマント”って言う装備型防御魔法だけどヒソカちゃん、結局テスト範囲に入ってないよ!?」

「クローちゃーん、お腹空いたー」

「いや、僕にそんなことを言われても。後、僕は男だよ、トトロちゃん」

「けど、もう七時だし、そろそろ晩御飯の用意をしないとねー」

僕とトトロちゃんの話を聞いていたのか、疲れて机に突っ伏していたミルファちゃんが顔を上げながらそう言う。

その言葉を聞いた僕は、髪を纏めていたバレッタを外しながら聞いた。

「用意って……どこかで食べるとかじゃないの?」

「いや……この時間には、この大人数で行けるお店は開いてないし。と言うか、あったとしても予約とか一切してないし」

「じゃあ、晩御飯はどうするの?」

「まぁ、炊事場を借りる許可も取ってあるし、おにぎりとサンドイッチ、味噌汁でもあれば十分でしょ?」

「うん、まぁ、それで十分だろうけど。だれがそれを作るの?」

「ん? あぁ、女子の成績優秀者が作ってくれるから、安心してクローちゃんと彩那ちゃんは教師役をやっといて」

「分かった」

「了解。……後、僕は男だよ」

「はいい。クローちゃんは可愛い男の娘ってわかってるから、二人は勉強を教えてあげて。八時くらいには出来ると思うから」

「……何か釈然としないけど、取り敢えず了解。あと、ミルファちゃんは何で厨房に行こうとしているの?」

「え? いや、みんなのご飯を作るため……」

「ダメだよ、ミルファちゃん。ミルファちゃんは成績優秀者じゃないんだから」

「……前々から思ってたんだけどさ。クローくんって結構Sだよね」

「親切ってことだと思っとくよ」


……六時間後。

「はーい、皆! 夜食が出来たよー!」

「……もう、範囲は半分以上終わってるし、食事しお風呂の休憩を二時間程取ろうか」

「「「さんせーい!」」」

僕の言葉を聞いた皆が、一斉に賛成の意思を表示する。

……そりゃあ、六時間も休まずに勉強してたもんね。

教えていたこっちが辟易する位……混沌カオスだったし。

彩那なんか、何度も何度もテスト範囲を確認して、装備型アーマードタイプは範囲に入ってないー! って叫んでいたし。

取り敢えず、まぁ、折角の休憩なんだし。

「それじゃあ……」

「「「いっただきまーす!」」」


……七時間後。

「……で、何だけどさ。僕、お風呂どうしようか?」

「どうしようって、男子と一緒に入ればいいじゃない」

「……ルゴールくんがいる以上、僕の身に危険があるんだよ」

「じゃあ、女子風呂に一緒に入る?」

「いや、ダメでしょ、それは。僕、皆が上がってから一人で入るから、その間、彩那に教師役を頼もうかと……」

「えー、イヤだよ。何度も何度も装備型アーマードタイプについて聞かれるのは」

「そこをお願いします、彩那! 男子達に絶対に覗きをさせないようにするから!」

「……しょうがないなぁ。分かった、少しの間苦労してあげるよ、クロー」

「ありがとう、彩那! じゃあ、ルゴールくんがもう覗きに行ってるようだし、早速行ってくるよ!」

「え! もう!?」

……その後の一時間の内に、七回“ボルト・ショック”が放たれ、その度にルゴールくんを始めとする男子生徒達の悲鳴が響いた。


……八時間後。

「ねぇ、クローちゃん。次はこの装備型アーマードタイプってやつを実演してくれない?」

「いいけど、ヒソカちゃん。後、僕は男だよ。……あ、そうだ。ルゴールくん、ちょっとこっちに来て」

「呼んだか、クロー?」

「あ、うん。ちょっとそこでじっとしててね?」

「え? なんで──」

『“スタンナックル”、スタート』

「──って、アババババ!?」

「……と、まぁ、こんな感じに、装備型アーマードタイプには“スタンナックル”の痺れみたいに特殊効果エクストラスキルが付いていて」

「ちょっと待て、クロー! お前、今何で俺を的にした!?」

「まぁ、日頃の行いが悪いせい?」

「疑問系で返すなっ!」


……九時間後。

「……うぅ~。眠い……」

「「「眠そうにしているクローちゃん、可愛い──っ!!!」」」

「白鏡ー、この身に纏うように発動する魔法って──」

「あ! ダメだよ、ルゴールくん! 今、彩那ちゃんに装備型アーマードタイプの質問なんかしたら──」

『……響き渡れ、“スタン・ナックル”!』

「──って、アババババ!?」

「──装備型アーマードタイプの魔法をされる、って言おうとしたのに……」


……そして、十時間後。

「………………よし!」

「「「──終わった──────っっっ!!」」」

深夜十二時を迎え、ようやくテストの全範囲を終えた彩那達が一斉に歓喜の声を上げる。

この十時間、ひたすらテスト勉強をしていた割りには、皆元気そうで羨ましい。

僕なんて、眠気で視界が霞んで、殆ど前が見えなくなって来ているというのに。

しかし……本当に眠い……。

龍人ドラグーンである僕だが、睡眠時間は純人とそう変わらないので、この時間に眠くなるのは不思議ではないのだが、何故かいつもより眠気が強い気がする。

何か疲れることをしたのだろうか、と殆ど回らない頭で考えて、しかしすぐに答えが出せた。

(そう言えば今日、ルゴールくんに三十回近く魔法放ったもんな……)

彼にセクハラ紛いのことをされまくったせいで、僕はこんなに疲れているのだろう。

(明日になったら、お仕置きなくちゃ……)

僕は心の中でそう呟きながら、ゆっくりと目を閉じた……。


 □□□


「あれ? そう言えばクローは?」

勉強会が終わり、皆と喜びを分かち合っていた私──白鏡 彩那は、一緒に教師をやっていた幼馴染の神刃しんじん クローがどこにもいないことに気付き、回りの皆にそう聞く。

「そう言えば……確かにクローのやついねぇな」

「どこ行ったんだろう、クローちゃん?」

ルゴールくんもミルファちゃんも辺りをキョロキョロと見渡すが、やはりクローの姿は見つからない。

と、部屋の隅辺りにいたキサラちゃんが何かに気付いたのか、声を出さないように右手で口を押さえながら、左手で私達を手招きする。

それを見た私達は首を傾げながらもキサラちゃんに近付き……思いっきり息を呑む。

この部屋を簡易教室に改装する際に、箪笥やソファなどの家具を一時的に部屋の端に追いやっていたのだが。

……その追いやっていた一つのソファの上で寝ているのだ、クローが。

その普通の女子よりも遥かに長い黒髪を、纏めもせずに散らばらせ。

処女雪のように真っ白だったその柔らかそうな頬を、桃のように上気させ。

黒いチョーカーが巻きつけられたその細い首を、艶やかにさらけ出し。

美少女と間違えられても仕方の無いその可憐な容姿を、少しばかり綻ばせ。

気持ち良さそうに寝ていたのだ。

そんなクローの姿を見た私達は、一斉に口を押さえて、心の中で叫ぶ。

(((何コレ、可愛い──────っっっ!!!)))

部屋にいた女子生徒達は急いで部屋を出て、自分の部屋から映像記録用の魔導球スフィアを取って来ようとするし、男子なんて今にもクローに襲い掛かりそうだ。

……間違っても、絶対そんなことはさせないけど。

しかし、このクローの可愛い寝顔に興奮した私達は、真夜中だと言うのに、その後一時間は半狂乱で騒ぎ続けた。

そして──、


……翌日。

「……誰かなぁ? 僕が寝ている間に、女物のパジャマに着替えさせたのは?」

「「「ルゴールくん!」」」

「ちょっ! お前ら裏切るのがあまりにも早過ぎ──」

『……“天雷衝閃ライトニングバースト”、スタート!!』

「ぎにゃぁぁぁあああっっっ!!!」

朝からルゴールくんのそんな声が、女子寮全体に響く。




結局、この早朝の雷撃のせいで前日の記憶が殆ど吹き飛んだルゴールくんは、一週間後のテストで赤点を取りましたとさ。

めでたし、めでたし?

楽しんでいただけたでしょうか?

感想・評価・レビュー・お気に入り登録・リクエストを心よりお待ちしています。

以上、現野 イビツでした!

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