第6話◎与えられた試練
<変更のお知らせ>
今まで文章の終わりは全て
「~しました」「~です」
のような終わりかたを
していましたが
第6話からは
「~だ」「~した」
などのような書き方を
したいと思います。
突然の変更を、尚、
ご理解頂けると幸いです。
引き続き
「赤花の繋ぐ二つの世界」を
楽しんで読んでいただけたら
とても嬉しいです!
バーチャルが
夏木達に渡した手紙を
ゆっくり封を切る。
手紙にはこう記されていた。あの今問題の集団、"ダッドウィンダー"からの手紙であった。
“我々の計画を邪魔する者は
誰であろうが
容赦なく強力魔法で
もがき苦しめてやる。
最初の忠告だ。最近、
旅をする若者三人が
計画を邪魔する可能性が
出てきているとこちらに
噂が流れている。
邪魔をされては困るのでね
君たちには大人しく
してもらいたい。
命が惜しければ今すぐ
布団に潜り、
寝んねでもしときな。
もし…これ以上
行動を起こすのならば
覚悟するがよい!
ダッドウィンダー軍”
もう既に
ダッドウィンダーの集団に
夏木達の名が流れていた。
下手すればダッドウィンダーが動き出し、夏木達の命を一瞬で奪いに来るかもしれない。
アースは震え…夏木の袖を掴み、ガタガタと怯えてた。
夏木は鋭い眼差しで
ブラッドから手紙を奪い取り
一気に破り捨ててしまった。
ブラッド
「夏木…何を!?」
夏木
「私は死ぬのなんか怖くないわ!始めから死ぬのを覚悟でこうして旅をしているんだもの。アース…死ぬのが怖いのなら外れてくれて構わないのよ。私は…妹を…家族を救うためなら命だって投げ捨ててやる」
夏木は強い言葉で
ブラッドとアースの顔を
順番に眺め、それっきり
二人が口を開くのを待った。
ブラッド
「俺は夏木のガードだ。お前を守るために俺はどこまでもついていくぞ」
ブラッドは
迷いの隙もなくそう答えた。
アースは
しばらく悩んでいたが
やがて、拳を握り…
アース
「お…オイラもついてく!夏木とブラッドと一緒に強くなるって決めたんだ。オイラは昔から1度決めたことは絶対に曲げないし諦めないよ!」
アースは少し震えていたが
真っ直ぐな瞳で夏木に伝えた
夏木
「それじゃあ…決まりね」
優しく微笑み
怯むことなく"命の島"へ
向かい始めた。
夏木も、もっと器用に…正確に…確実に魔法を使いこなせるようにならなければいけない。まだまともに戦えないアースを助けるためにも…。
そう強く胸に言い聞かせる夏木。
ブラッド
「お前は少しずつだが…確実に強くなっている。魔力も…気持ちも。自分に自信を持っていいぞ。…容姿もな」
夏木
「え…?今なんて?」
ブラッド
「いや…」
フッと笑い夏木の頭を軽く叩く。
夏木は自然に頬を赤く染め、それっきり黙ってしまった。アースがそれを見て軽くニヤニヤしていた。それを感じ取り、夏木は頬を赤く染めて口をとがらせながらアースをジッと睨んだ。
そうして、三人並んで会話をしながらいつのまにか丸1日歩き続けていた。
ブラッド
「ふぅ…また野宿になりそうだな。さて、お前らはどうしたい?夜は進むのが危ない。」
ブラッドは二人を見て
返事を待つ。
すると…夏木はふと考え
夏木
「ねぇ、私の光魔法で辺りを明るくできないのかな?」
と頭に浮かんだ事を
ブラッドに伝えた。
ブラッドは少し考え、
1度やってみろと言った。
そして、夏木は両手を合わせ
体全体の気を手に集中させて
呪文をとなえた
夏木
「心をも灯す優しい光よ。闇となったこの地を照らせ。ビーンフラッシュ!」
夏木が呪文を唱え、
両手を空に向けた瞬間
光は空に向かいパァっと
一気に光が広がり
辺りは昼間のように
明るくなった。
アース
「すっげぇ!」
ブラッド
「なかなかだな。飲み込みと成長が早い。まったく、驚きだよ」
夏木
「光魔法を選択して良かった!どんな時でも役に立てるんだもの。」
夏木が嬉しそうに笑顔をこぼす。
さぁ、命の島まであと少しです。いつ、ダッドウィンダー軍が夏木達に仕掛けてくるかわからない。だが彼等は前へ進む。自らの目標、目的を果たすために。
しばらく進み、ようやく景色が変化したが、大きな岩が行く手を阻んでいた。二十メートル以上はあろう大きな岩で、別の場所に動かすのは不可能であった。
ブラッド
「…仕方ない。別の道を探すか。」
三人が別のルートを探すことにして、後ろを振り向いた途端、既に魔物が三体こちらを睨み…威嚇していた。
名:ウーリー
魔種:炎
説:虎のような大きさで、凶暴な性格。仲間を集めて、集団で攻撃を仕掛けてくる。
ブラッド
「…まずいな。後ろは岩だ。逃げることは出来ない。戦うしかないぞ。…出来るか?」
夏木達はうなずき
魔法を唱える体勢に入った。
ウーリーは三体。1人1体を相手にすることにした。
ブラッドが先手を打ち、呪文を唱えた。
ブラッド
「この世に眠る風の精霊よ。今こそ力を発揮せよ。ワンダートルネード!」
ブラッドの呪文と共に風の精霊が動き出し、みるみるうちにとてつもなく大きな竜巻を作り、ウーリーを巻き込んでいった。
アースもそれを見て
ウーリーを睨み呪文を唱える
アース
「…っっ…!やってみるっきゃねぇ!!ファイアーボンバー!」
アースは力一杯唱え、炎の爆弾をウーリーにぶつけた。普通の相手なら焼け焦げて跡形もなくなってしまうだろう。
…しかし。
ウーリーにはかすり傷一つついていなかったのだ。
アース
「な…なんでだ…?」
アースの魔種は炎、ウーリーの魔種も炎の為、お互いぶつかり合い、ぶつり技でないと敵を倒すことができない。アースはそれを理解し、突然、恐怖に襲われた。
その瞬間、ウーリーは歯を鳴らし、アースに飛びかかった。鋭い爪でアースの細い腕を切り裂いてしまった。
アース
「うあぁぁああぁ!!!」
アースはもがき倒れ、傷付いた腕を必死に治そうとした。
夏木
「あ…アース!!」
傷付いたアースを
救おうとするが…夏木にも余裕が無かった。ウーリーが夏木を狙い、攻撃の準備をしていた。
ブラッド
「夏木!アースは俺がなんとかする。お前は戦いに集中しろ!」
ブラッドが叫び、アースの元へ駆け寄る。その姿を見て夏木は目の前の敵に集中した。
夏木
「ウーリー…貴方は…私の大切な仲間を傷付けた。その罪は永遠に消えない。ホンリーライト!」
夏木が呪文を唱えると
光の玉が集まり、ウーリーに
向かって発射された。
爆弾のように
光が次々と爆発し、
ウーリーを苦しめた。
しばらくして、ウーリーは
気絶し、ウーリーの仲間も
森に帰っていった。
夏木はガクッと力が抜けたが、すぐにアースの方へと向かった。
ブラッドは必死に
風魔法で傷を癒しているが
傷が深すぎて効果がない。
ブラッド
「まずいな…。」
夏木
「い…急いで命の島に向かおうよ!」
これは時間との戦い。出血が酷い為、長時間経つと意識を失い、最悪…命を落とすことも考えられる。
アースは痛みが酷いようで、ずっと汗をかいて苦しんだ表情を見せていた。
ブラッドはアースを抱え、夏木に"走れ"と叫び、先の見えない道をずっと走っていった。
8歳の幼い仲間…
アースを救うために…。