第24話◎ファイン
夏木
「初めまして。私は夏木」
ブラッド
「俺はブラッドだ」
アース
「お…オイラはアース」
自己紹介をして、みんな椅子に座った。
サルエル
「僕達は12年付き合ってようやく結婚したんだよ」
夏木
「そんなに長い時間、交際していたんですか!どうしてもっと早くに結婚しようと考えなかったのですか?」
ユティ
「私と彼は遠距離だったからなかなか会えなかったの。お金もなかったし…。でも彼がこうしてお金を貯めて私の住むこの街、リンプンビズキスに来てくれたから」
夏木
「それで12年の月日が経ったんですね。すごい相手を想う強い気持ちが伝わってきます!」
夏木は両手を胸に当てて、嬉しそうな表情で聞いていた。
ファイン
「アースだっけ?アースは何歳に結婚したい?」
ファインが無邪気に椅子の上で飛び跳ねて聞いた。
アースは突然の質問に焦りを見せながらもファインに答える。
アース
「今オイラは結婚なんて興味ないよ。旅ばっかだしオイラまだこんなんだし結婚なんて…」
ファイン
「あら、夢がないのねー。あたしは18歳までには結婚するの!初恋の人と結婚するって決めてるんだからっ」
ファインは頬を赤らめて、夢を語り始めた。
ユティ
「この子ったら」
ユティはクスクスと笑いながら話を聞いている。
夏木は少し寂しそうな表情をしてつぶやいた。
夏木
「いいなぁ、そんな素敵な夢があって……………。」
ブラッド
「…夏木?」
夏木
「私は元の世界へ戻ったら、たくさんの妹の世話もしなきゃならないしお金もない。結婚なんて夢のまた夢だよ」
夏木は弱々しく笑って髪をかきあげる。
サルエル
「夏木ちゃんは可愛いし優しそうだから相手はいくらでもいそうだけどね~」
サルエルは※カールティを飲んで夏木に話しかけた。
(※カールティとは、未知の世界で一般的に飲まれている紅茶のようなもの)
しばらくそのような話をして、気付けば既に日が沈んでいた。
ユティ
「あら、もうこんな時間。ごめんなさいね夏木ちゃん達。こんな遅くまで引き留めて、良かったら今晩は泊まっていって?もし数日この街に滞在するなら何日でも泊まって頂いて構わないわ」
ブラッド
「せっかくですから2、3日お世話になります。」
ブラッドは深く頭を下げた。
ファインはアースの手を引っ張って部屋へ連れていった。
アース
「あっ、おい!?」
サルエル
「ははは!ファインはアースが気に入ったようだなぁ!たっぷり遊んでやってくれ」
サルエルは楽しそうに笑った。
ファイン
「こっちこっち~」
アース
「おい待てって~!」
アースはファインにグイグイと手を引っ張られた。
ファイン
「ここがあたしの部屋だよ!」
ファインの部屋は意外にシンプルだが女の子らしい清潔な部屋だった。
アース
「へー綺麗じゃん!」
ファイン
「でしょ?アイテムも配置も全部あたしが決めたの!」
ファインは照れくさそうだが、嬉しそうに微笑んだ。
しばらくはファインの部屋で二人は話したり遊んだりしていた。
ふと、アースは何かを見つけた。
アース
「ん?ネックレス…?」
ファイン
「あっ!触っちゃダメぇぇ!!」
ファインは焦ってネックレスを取り上げた。
アース
「あっ、悪い…ユティさんからもらったのか?」
ファイン
「うん。あたしが赤ちゃんの時から持ってるの。将来…ね。初恋の人を見つけて、本気で結婚を決めた人にこれを渡そうって…思ってるんだ。」
ファインはギュッとネックレスを握りしめて頬を赤らめている。
そんなファインに徐々に惹かれているアースがいた。
アース
「そっか。見つかるといいな!オイラ応援するよっ」
アースは笑ってファインの手を握った。
ファイン
「ありがとうアース!」
二人はしばらくワイワイやっていた。その雰囲気は本当に柔らかく、楽しそうだった。
ご飯が出来たと呼びにきた夏木はドアから覗いていたが、二人のいい雰囲気を壊したくないと思って、クスッと笑い、再び食卓へ戻った。
サルエル
「あれ?二人は?」
夏木
「なんだかすごく楽しそうだったのでソッとしとおきました。」
ユティ
「あらまぁ、では先に食べておきましょうか」
『いただきまーす』
みんなは口を揃えて言い、食事を楽しんだ。
にぎやかな夜が終わり、夏木とブラッドは布団に入ることにした。
夏木
「おやすみブラッド」
ブラッド
「ん…おやすみ」
ここから先は
しばらく戦いは無しで
平和な日々が続きます。
ゆっくり話を進めていきたいなぁと思ってるので、しばらくはリンプンビズキスで過ごします。
1日1話更新続いてます