第21話◎親探し
…………次の日…………
四人は目覚め…メルトの待つ1階へと降りた。
メルト
「おはよう!ゆっくり眠れたかしら?」
アース
「寝れたけどまだ眠い~」
アースは大きなあくびをして、眠そうに体を揺らしていた。
ブラッド
「朝が早いからな。まだ空が明るくなり始めているところだ」
三人は朝日が昇ると同時にここを出ることにした。
すると、メルトは三人を呼び止める。
メルト
「幻の薬屋は北の方向へ約500キロよ。薬屋が近付くと氷山が見えてくるわ。氷山を乗り越えさえすれば…もう…あなた達の求める場所はすぐだから」
メルトは一気に言うとニコッと笑った。
メルト
「健闘を祈るわ」
アゲハ
「またここに来てね!アゲハ…サンドイッチ作って待ってる」
アゲハは少し寂しそうだったが、元気な笑顔で…元気な声で三人に向かって手を振った。少しの涙を浮かべて…。
そして…………
また逢える日が来ると信じて。
夏木、ブラッド、アースも手を大きく振り、メルトとアゲハの方へ背を向けた。
夏木
「この世には…アゲハちゃんのように心を閉ざした子供は多いのかもしれない。私にできることは少ないかもしれないけど…少しずつでも…そんな人達を救って、喜怒哀楽の持つ意味を教えてあげたい」
ブラッド
「あぁ…長い道のりになるだろうが…夏木になら出来る気がする。気持ちが違うからな」
アース
「オイラは自分が強くなることしか考えてなかったけど…あいつらみたいな奴は救ってやりたいと思った!」
アースもまた強くなり、たくさんの生命を救いたいと大きな目標を掴んだ。
ブラッド
「さぁ…行こう。北の方向へ」
ザッザッと地面がすり減る音が、静かなこの場所に響き渡る。
遠くへ伸びる細い道を、並んで歩き始めた。
しばらく歩いていると…
ガサガサと何かを荒らすような物音が聞こえた。
アース
「なんの音だ?」
ブラッド
「こっちの方向から聞こえるな」
三人は少し駆け足で、音のする方向へと向かった。すると…
この辺の住人がしかけたのか…?単純なワナに魔物の子供が引っかかっていた。
名:シュルレア
魔種:闇
説:穏やかな性格。人間を攻撃することはないため、恐れることはない。安全な魔物。
シュルレアの後ろには黒い影があった。別の魔物だろうか…鋭い目付きでシュルレアを狙っている。
名:リスキ
魔種:闇
説:主にシュルレアなどの小さな魔物の子供を食べて生きている。魔力は低いが凶暴な性格だ。
夏木
「リスキはシュルレアを食べようとしてるの!?」
ブラッド
「…らしいな。このワナを仕掛けたのは何者かは気になるが」
アース
「助けないと!シュルレアはまだ子供だよ」
シュルレアは助けを求めるように、夏木達に向かってシュ~シュ~と鳴いた。
夏木
「とりあえず魔法で対抗するしかない。シュルレアをワナから外してあげないと…。裟斬久虜朱!」
裟斬久虜朱とは…
一時的に相手の動きを防ぐ魔法。金縛りのような効果を発揮する。
リスキはピタリと止まり、身動きを取ることが出来なくなった。
リスキが動けない間に、シュルレアのワナを外して、アースはシュルレアを抱き抱えてブラッドの後ろへ隠れた。
夏木
「むやみに魔物を殺したくはないけど…ごめんなさいリスキ。あなたはここにいてはいけない…。チューンリバー!!」
夏木が呪文を唱えると、掌から小さな光のドラゴンが飛び出し、リスキに攻撃した。
この魔法は、生命の中に存在するあらゆる細胞を壊し、心臓、脳、肝臓などの臓器も破壊してしまい、命を吸いとってしまう。
リスキは抜け殻のようになり、口から泡を吹いて、その場で倒れ込んだ。
危険な魔物はこうするしか方法はないのだ。
倒れたリスキの死に顔を
悲しそうに夏木は眺める
夏木
「やっぱ…魔物を殺してしまうのは気がめいる…。ごめんね」
夏木は一輪の花をリスキに添えて、シュルレアの様子を見に行った。
右足を怪我していたが、命に別状は無く、お礼を言うように夏木達の顔を舐めた。
アース
「こんな小さな子供なんだからどこかに親か飼い主がいるはずだよな」
ブラッド
「ふっ、探してやるか。きっとこの森のどこかにいる。」
夏木
「この子、昔は飼われていたのかな?首に黄色い首輪があるよ」
アース
「ふぁ…み…りー。ファミリーって書いてある!」
ブラッド
「家族…きっとこいつの親も同じ首輪をつけているのではないか?」
夏木
「きっとそうだね。大きな森じゃないしすぐに見つかるよ!探しに行こう」
三人はシュルレアを優しく抱き抱えて、暗い森の中へ入っていった。
シュルレアはブラッドの腕の中で母親を呼んでいるように甘えた声で鳴き始めた。
なかなか
熱が下がらない紫苑です。
明日には就職試験の結果がわかるということで不安になっています。
落ちていないことを願うばかりですね…。
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