第19話◎言葉
夏木特製のサンドイッチを完食して、しばらく二人は見つめあっていた。
アゲハはまだ警戒をしているのか、ぬいぐるみを強く抱き締めてこちらの様子をうかがっている。
夏木はアゲハと距離が近付いたように感じて、すごく感動していた。
こんなに近くにいるのにアゲハは夏木に攻撃をしない。通常なら確実に風魔法でドアの外に追いやられているだろう。
だが今は魔法を使う気配さえない。ずっとぬいぐるみを抱いて、警戒しながらも夏木を部屋から追い出そうとしなかった。
夏木はこの成長を素直に喜んだ
夏木
「アゲハちゃん、また明日も来るね」
アゲハ
「……………」
夏木はそう言って自分から部屋を出た。
そしてそのことをメルトに話した。
メルト
「え!?あの子が…夏木ちゃんの手からサンドイッチを…?一緒の空間にいて何もされなかったの?」
夏木
「はい…っ。私のサンドイッチを美味しそうに最後まで食べてくれました。私は感動してその場で涙を流しちゃいましたよ」
アース
「へぇ…あいつは夏木に心を開き始めたってことか」
ブラッド
「きっと今までの奴等はアゲハに攻撃をされてすぐに諦める奴が多かったのだろう。だから諦めなかった夏木の真剣さが…アゲハには伝わったんじゃないか?」
メルトは少し安心したように椅子に座った。
メルト
「いつか…もう一度あの子の笑顔を見ることができたら…私はもう幸せよ。」
メルトは涙を浮かべて笑った
夏木は次の日も
いつものように早起きをして
アゲハの待つ部屋に入った。
夏木
「アゲハちゃんおはよう!」
夏木がいつものように
元気に挨拶をする。
すると……いつもは
口を開かないアゲハが初めて
夏木に返事をした
アゲハ
「……おはよう」
小さな声だが夏木にはハッキリ聞こえた…。
夏木
(アゲハちゃんが…返事をしてくれた。また一歩前進したって…思ってもいいよね…?)
夏木は少しずつ距離が近付く嬉しさに、胸がいっぱいだった
夏木
「今日のサンドイッチは自信作だよ!良かったら食べてね」
夏木は具は変えても、ハムだけは必ずサンドイッチに入れていた。アゲハがハムを好きなことを理解しているから。
アゲハは一口
サンドイッチをかじると
自分から口を開いた。
アゲハ
「…おいしい。ハム…好き」
アゲハがこんなにも素直に感想を述べてくれるだなんて信じられるだろうか?
夏木は言葉も出なかった。
夏木は恐る恐る気になる事を聞いてみた。
夏木
「ねぇアゲハちゃん、私のこと…どう思ってる?」
そう…今アゲハは夏木のことをどう思っているのか…どう感じているのかが気になって仕方がなかったのだ。
しばらくアゲハは沈黙になり、ずっと夏木の顔を見つめていた。
すると……
アゲハ
「…わからない」
そう一言を発して、アゲハはぬいぐるみを抱いてベッドに座った。そして…
アゲハ
「…まだ…こわい。」
と言って涙を浮かべて夏木を見た。
やはり警戒心と恐怖はなかなか解けないのか…。
夏木には毎日毎日サンドイッチを持ってきて、
少し話をすることぐらいしかできなかった。
夏木とアゲハはしばらく沈黙の場に佇んだ。するとそこに…
ブラッド
「夏木ー、メルトさんが呼んでいるぞ」
ブラッドが夏木を呼びに2階へ上がってきた。
すると突然、アゲハは髪を逆立てて憎しみのつまった鋭い目付きで魔法を唱え始めた。
そう、アゲハにとってまだ話すことができるのは夏木だけで、
ブラッドやアースへは憎しみや恐怖、警戒の対象でしかないのだ。
アゲハ
「出ていけっ!」
アゲハは突風を呼び起こして、ブラッドを階段から落としてしまった。
夏木
「ブラッド!?アゲハちゃん待って…っ」
夏木がアゲハを止めると、アゲハは以前のように攻撃を続けることをやめて、魔法を止めた。
夏木
「アゲハちゃん…驚かせてごめん。でもブラッドやアースだけは攻撃しないで?」
夏木は真剣な表情でアゲハに言った。
アゲハは悩みに包まれた表情をしているが、夏木に言われた通り、それ以降魔法を使うことをしなかった。
夏木
「ブラッドやアースはね…私にとって…家族と同じぐらいに大切な人なの。…アゲハちゃんが家族を思っていたのと同じぐらいに。。」
アゲハはその言葉を聞いて、少しうつむき、優しい風魔法で、ブラッドを2階へ運び、癒し系魔法で怪我を治してくれた。
ブラッド
「これは…驚いたな。アゲハをここまで……」
ブラッドもアゲハに怪我を治された事に対して、驚きを隠せなかったようだ。
アゲハ
「……………」
相変わらず無口を貫き通すアゲハ。
夏木…そしてブラッドも加わり…しばらくアゲハに話をすることにした。
今日初めて
感想を頂きました><//
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