第10話◎謎の少女
あちこちに転がる骨が夏木達を睨んでいるように見える。
まるで…
洞窟から出ていけ
と言っているように…。
夏木
「気味が悪い…。ここはどこなの?ブラッド」
ブラッド
「さぁな…。ダッドウィンダー軍の住処の一つだと俺は睨んでいるがな。その証拠にこれを見てみろ」
ブラッドは1枚の紙を夏木に渡した。その紙には様々な掟のようなものが綴られていた。
【Ⅰ】決して裏切るな【Ⅱ】
我々の自由の為に全てを尽くすこと【Ⅲ】我々の仲間という証、"血潮ワッペン"を胸につけておくこと。
などなど
様々な掟が書いていた。
中には邪魔者は容赦なく殺せとも綴られていた。この掟の揃い具合といい、ダッドウィンダー軍の頭が綴ったに違いない。
アース
「じゃあここにいたら危険なんじゃないの?」
ブラッド
「そうだな。早く洞窟を出よう」
ブラッドが再び船を漕ぎだす。すると…岩と岩の陰から笑い声が聞こえた
???
「クスクス…」
夏木
「そ…そこにいるのは誰!?」
夏木が叫ぶが返事はない。ただ不気味な笑い声が洞窟に響いているだけであった。
三人は一旦、船をおり、声のする方向の岩へと近付いていった。
夏木
「そこにいるのは誰?ダッドウィンダー軍の仲間なの?」
???
「うふふ…あなた達…旅人さん?ランカと遊ぼうよ」
アース
「お前はランカって名前なのか?オイラ達は目的があって急いでんだ。」
アースが前に出て女の子に訴える。
ランカ
「うふふ…ねぇ遊ぼうよ。ランカずぅっと1人で寂しいんだぁ」
ランカと名乗る女の子は
薄気味の悪い笑い声で
夏木達の体を震わせる。
アースよりは小さい…
人間でいう5歳ぐらいの
小さな女の子だろうか。
岩影に隠れていて
よく見えないが、
白いワンピースを着ている、
綺麗な黒色のロング髪だった
夏木
「ねぇ、岩影に隠れていないでこっちに来たらどう?」
夏木は優しい声で誘った。
するとランカは足を前に出し、夏木達に姿を見せた。
片目が髪で隠れており、片目は綺麗な紫の瞳だ。口は不気味なほど口角が上がり、こちらを見てニヤッと笑っている
ランカ
「ねぇ遊んでくれるの?」
ブラッド
「…遊びとはどういうものだ」
ブラッドがランカに聞き出すが、ランカは不気味な笑いを出すだけで同じセリフばかり繰り返していた
ランカ
「遊ぼうよ」
アース
「オイラ達はお前に相手するほど暇じゃないんだよ!お前はなんでこんな洞窟の奥にいるんだよ」
アースは恐怖からか…口が止まらなくなってしまった。
だが、ランカの笑い声はピタリと止まり…独特の雰囲気をかもしだした。
ランカ
「ランカはここに捨てられたんだもん。赤ちゃんの時に…ママに捨てられたんだぁ」
ランカはそう言い
またニヤッと笑う。
赤ちゃんの時に捨てられた…?
こんな誰もいない洞窟に…?
どうして今まで
生きてこれたのだ。
0歳の赤ん坊がこんな
何もない環境で
無事に育つわけがない。
ダッドウィンダー軍が
代わりに育てたのか…。
いや…あの悪の組織が
そんな事をするわけがない。
ならば誰が…?それとも
1人で生き抜いたのか。
それとも…
この子は…。
人間界でいう幽霊のような存在なのだろうか。
しかし幽霊にしては、
ハッキリ姿が見えすぎている
言葉の受け答えもする。
では…この子は一体…?
ランカは夏木を見て
紫の瞳をギラッと光らせた
ランカ
「お姉ちゃん、ランカと遊ぼう。ランカに会いに来たんでしょ?」
そう言うと、ランカはまた夏木達に近よってクスクスと笑い始めた
ブラッド
「夏木離れろ!ランカは何か右手に持っているぞ」
夏木は焦って
ランカの右手を見た。
すると小さいが刃物を手にしていた。一体この子は何をする気なのか。
ランカ
「うふふふ」
ブラッドは周りに転がる骨を見て気が付いた。この骨になっている人物は全て、この女の子に殺されたのだと。きっと身体中の肉が無くなるまで切り刻まれてこの洞窟に隔離され、やがては骨になっていったのだろう。
だがなぜこんな幼い子供が
こんなにもたくさんの命を
簡単に奪い、
刃物を振り回すのか。
アース
「ちょ…オイラ達どうなるんだよっ」
ブラッド
「わからん…だが逃げることは出来ない。かといってこんな幼い子供を殺すことなども出来るわけがない」
夏木
「どうしてランカちゃんはこんな事を…」
ランカは止まることなく
ゆっくり歩いて
夏木達に近付いてくる。
ランカ
「あなた達もランカとここで暮らすの。みんなもいるから寂しくないし大丈夫だよ」
ランカはそう言って刃物を構えた。
夏木
「待ってランカちゃん!」
夏木が叫ぶとランカはピタリとその場で立ち止まった。
夏木
「ランカちゃん…あなたに何があったのかはわからない。でも関係のない人まで巻き込んで命を奪ったりするのはいけない事だよ!何があったの?どうしてこんなにも人を犠牲にするの?あなたは…何者なの!?」
夏木は涙を浮かべ、ランカに向かって大きな声で疑問を繰り出した。
ランカは数秒ほど黙り、
ずっと立ち止まっていた。
ランカ
「ランカは…0歳3ヶ月で捨てられて、その1週間後にこの体は消滅した。ランカの今のこの姿は精神、魔力、憎しみで出来ているわ。」
ランカは親に対する憎しみを募らせ、今日まで、未完成の体で洞窟をさまよっていたという。
そしてランカが生きていたら
2歳ぐらいの頃に突然
この洞窟に人間が押し寄せ、
洞窟を荒らしていった。
それがダッドウィンダー軍だ
それ以来
この世界に生きる者を恨み、
警戒をするようになった。
そして、洞窟に足を踏み入れる者には、この転がる骨になった者と同じ姿にするという。
ランカは幽霊のような存在なので、恨みや憎しみだけでできている
その為、人を殺すこともためらえなく出来るというわけだ。
ランカはそう、全てを夏木達に話してくれた。
アース
「ゆ…幽霊…?じゃあ触れないのか?呪われるのか?オイラ…まだ死にたくない」
アースは
ガタガタと酷く震える。
ランカは顔を上げ…
夏木達には何もしないから
早く洞窟から出ていけと
忠告をした。
やはりランカにも恨みや憎しみ以外にも感情があるのではないか…?
夏木はランカをほっとけず…
ランカの傍に行き
手を差しのべた。
夏木
「私達と一緒に行かない?こんな洞窟に1人でいたら…心がダメになっちゃうよ」
そう言って
ニコッと優しく笑った
ランカは少し驚いた表情を見せたが、すぐにあの笑い声を出し、夏木の手をとった。
ランカの手はひんやり冷たく…まさに死人の手のようだった。
ブラッド
「…さぁ。2人とも船に乗れ」
新たな仲間。
謎の少女ランカを加え…
再び船を進める。
霧も晴れており…
広大な湖が目の前に広がる
アースは少し震えながらも
ジッとランカを見つめる。
ランカはずっとクスクスと
怪しい笑いをたてていた
1日1話を
なんとか続けています><
明日は就職試験の
下見に行かなければ(汗
一応12話までは完成していますが毎日更新するために置いていますw
毎日更新頑張りますので
良ければ読んでください!