第9話 炎華の都バルミレッタ
——炎は舞う。炎は試す。炎は、魂を燃やす者を選ぶ。
アウルブリーズでの試練を終えたエリナとマリアベルは、次なる目的地「炎華の都バルミレッタ」へ向かった。
道中、魔導列車“火輪号”での車内温度にやられながら、冷えた水筒をめぐってじゃんけんし続けるという無意味な争いを繰り広げた挙句、結局二人で譲り合って脱水症状になりかける。
◆ バルミレッタ到着:焼け焦げる歓迎
赤く焼けた大地、太陽を受けてきらめく黒曜石の建物群、熱風に揺れる旗。まるで大地そのものが燃えているかのような都市——バルミレッタ。
「うそでしょ!? 砂が湯気立ってる!? 私の足音、ジュッて鳴るんだけど!?」
「うん……たぶん私のサンダル、もう存在してない。さよなら、靴底」
出迎えたのは、神官長アグニ・ファルヴァ。炎のような赤毛に、鋼鉄のような筋肉、全身から熱を発している男である。
「ようこそ、灼熱の都へ。ここは、魂を裸にする街。君たちの“歌”が真実かどうか、炎で炙り出させてもらう」
その背後から、氷飴を片手にひょこっと現れた見習い巫女セイラ。
「やったー! 本物のアイドルだー! あ、でも写真撮りたいけどカメラが溶けちゃう〜〜!!」
「……もう魂に焼き付けるしかないわね……」
こうして、バルミレッタでの灼熱の四試練が始まる。
◆ 第一の試練:フレイム・ダンス地獄
ホールの名は“マグマティカ・ホール”。おしゃれな名前に反して、足元は地熱直通。
「足裏が今、パリッて音したんだけど!? ねぇ!? これ演出!? 本番中!?」
「私のスカートが勝手にフレアしてるんだけど!?」
熱風をタイミングよく吹きつけてくる炎の精霊たちが、わざとエリナの髪型を崩すように狙っている。
「ちょっとフェルグラン様!? あなたの部下、めっちゃ悪ふざけしてるんですけど!?」
観客たちは大喜び。
「来週も来よう」「来週あるの!?」「アイドルって大変……」
◆ 第二の試練:ボイス・フォージ
火山音響室での発声修行。空気が厚い。音が曲がる。
「なんで私のドが、レ♯に!? 音程、逃げ出してない!??」
マリアベルは扇風機型魔導具で伴奏するが、風でスカートが大事件。
「ぎゃあああああああ! セイラ、リボン貸して!!」
セイラは氷飴を持ったまま、うちわで必死に応援。
「うちわ、風速6mあるよ! アイドルに冷却支援!」
「セイラ、もうあなたが精霊なんじゃない……?」
◆ 第三の試練:ハート・エクスプロージョン
観衆の前で情熱スピーチ。
「私は、アイスを愛してます!でも、溶けるからこそ、美しい!」
「私の心は熱帯夜!常に寝苦しいくらいに燃えてます!!」
……という謎の比喩連打に、観衆は大爆笑しながら涙を流す。
◆ 第四の試練:イグナ・パクト
ついに登場する炎の精霊王フェルグラン。威風堂々、額から火花が飛び散るレベル。
「なぜ、炎を“歌”にする? その答えを、示してみせよ」
エリナは汗だくの顔で決め顔。
「アイドルの歌は、心の炎! その炎で焼きマシュマロにしてやるわ!」
「比喩がキャンプなの!? でもなんか納得しちゃう!!」
フェルグランの金色の瞳が細くなる。
「面白い。その熱意……我が力に値する」
魂の共鳴——フェルグランの記憶がエリナに流れ込む。
かつて孤独に炎を司っていた日々。誰も近づかず、熱さ故に傷つけ、誰にも歌を聞かせることのなかった時間。
「君も、誰かに歌ってほしかったんだね……」
「……ああ。お前たちの歌には、熱さだけでなく、優しさがあった」
赤い光がエリナとフェルグランを包み、魂が繋がる。契約成立。
「では、我が力を、アイドルという名の奇跡に託そう」
火の翼が舞台に広がり、バルミレッタ中が光と音楽に包まれる。
観客は総立ち。セイラは泣きながら氷飴を落とす。
「これが……炎と歌の、融合……! って、あっつ!! 床が燃えてる〜〜〜!」
神官長アグニも、腕を組んだまま呟いた。
「……まさか、ここまでとは。炎の精霊を、ここまで笑わせるとはな」
こうして、バルミレッタの試練は熱く・コミカルに、幕を閉じた——
そして次なる地「リュミエール・セレーヌ」では、水と静寂の中で、新たなドラマが待っていた—
◆ 精霊フェルグランとのアフターエピソード:炎の休日と友情と——アイドルグリル!?
試練の熱狂が冷めやらぬ中、バルミレッタでは精霊フェルグランとの“契約後”を祝う特別な一日、「炎の休日」が宣言された。
エリナとマリアベルは、フェルグランから直々に「ちょっと街、案内するぞ」と誘われ、バルミレッタ観光(超灼熱ver.)がスタートする。
「こっちが“フレイム焼きそば”の屋台だ。辛さレベルは、舌が溶けるか、記憶が消えるかの二択だ」
「……え、それ食べ物なの? 敵対呪文じゃない?」「メニューに“意識消失級”って書いてあるよ!?」「私たち、今日ライブないよね!? お腹壊しても大丈夫な日!?」
フェルグランは満面の笑みで焼きそばを買い、「歌で熱くなった体には、激辛で追い打ちが基本だ」と力説する。
その後も、溶岩で温められた露天風呂“灼熱の湯”に案内されたり、火山の噴気で膨らむスフレパンケーキ作りに挑戦したりと、予想外のバカンス(?)が展開される。
「このパンケーキ、膨らむ前に私の顔面に直撃したけど!?」「炎の試練より過酷なんだけど!?」
フェルグランも思わず苦笑い。「人間というのは、なんでこんなに……面白いんだ」
そして夜、三人で高台に登り、都市を見下ろす。
「……炎って、燃えるばかりじゃないんだな」フェルグランが呟く。
「え?」
「お前たちと出会って、初めて知った。炎は、誰かを温めるものにもなれる。私が忘れていた役割を、君たちが思い出させてくれた」
「フェルグラン様……」
マリアベルが静かに手を差し出す。「じゃあ、これからはその“温かさ”を、みんなに広めていこう。一緒に」
フェルグランは微笑み、その手を取る。「ああ。アイドルという炎で、世界を照らしてやろう」
セイラが後ろからひょこっと現れる。「それじゃ、記念撮影しよ〜! はい、マグマの前でチーズ!!」
そしてシャッターが切られると同時に、後ろでマグマが大噴火——
「きゃーーーー!? 背景が災害ーーー!!!」「でもなんか、青春っぽいよ!」「うん、これが……アイドルと炎の友情!!」
バルミレッタの夜空に、熱と笑いが響いた——




