表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
童貞坊主がお経をあげていたら、転生して美少女シスターになってしもうたがな!  作者: 枕川うたた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/27

第8話 風詠の街アウルブリーズ


——風は語る。風は導く。風は、歌う者の魂を見抜く。


空舟エアロシップ・ソフィアが蒼穹を滑空し、大気を震わせながらアウルブリーズの空港へと近づいていた。

大聖堂から新たな使命を託されたエリナとマリアベルは、天恵祭への参加者としてこの地を訪れていた。


アウルブリーズ——風の神ゼフュロスを祀るこの都市は、巨大な丘陵地に築かれ、街全体が風の流れを意識して設計されていた。

中央の「風の聖域」からは巨大なエオリアン・ハープが空高く伸び、その旋律が風とともに街を包んでいる。

家々の屋根には風見鶏と風鈴が備えられ、道端の燈籠には風を受けて回転する羽根車が飾られていた。


「エリナぁ、見て見て! あの猫、風に吹かれて耳だけ動いてる! 何あれ可愛すぎじゃない!?」


「マリアベル……風で耳が動くのは普通じゃない……?」


「普通でも可愛いは正義!」


石畳の通りには、風紋模様が刻まれており、歩くたびに足元で風精霊がきらりと舞う。

子供たちは風精霊を追いかけながら凧を揚げ、老婦人は風詠みのカードで天気を占っている。

市場では風干しの果実や風の塩が売られ、風紡ぎの衣が棚に並ぶ。


街に降り立った瞬間、エリナとマリアベルを出迎えたのは風の唄だった。


「うわぁ……見てエリナ、空中に吊られた無数の風車がまるで踊ってる!」


「街全体が……音楽みたい。風が奏でてる」


透明な羽根を持った小さな風の精霊たちが、二人の周囲をくるくると旋回しながら笑い、優しく髪を撫でてくる。その仕草はまるで、「歓迎しているよ」と告げているかのようだった。


宿屋に到着した彼女たちを出迎えたのは神官見習いの青年・レセフ。

風を読む力に長け、都市の案内人を務める彼は、どこか憂いを帯びた瞳の持ち主だった。


「風詠の街にようこそ、旅の乙女たち。君たちの歌声が、この地にどんな風を起こすのか……とても楽しみだ」


彼の妹・シェイラもまた風神官候補生であり、風の精霊と直接会話できる「風交者ゼフィランサー」として注目されていた。

彼女は快活で、マリアベルに何かと絡みたがる年下の少女だった。


「ねぇねぇ!あんたたちホントに神の使いなの? へぇ〜……でも風に好かれるかは別問題だからね? 風って気まぐれだし、特に寝ぐせには超厳しいから!」


「寝ぐせ!? それ関係あるの!?」


街には他にも個性豊かな人物たちがいた。風の衣装職人ヴァルドは、風の流れを読むことで最適な舞衣を作る達人。

精霊の世話をする老婆ミルリィは、「風の精霊語」を紡ぎ続ける詩人でもあり、精霊から『風のばあば』と慕われていた。


三日後に行われる「風の儀」では、試練として《風の舞踏》《風詠ライブ》《風読神託》《精霊契約儀式》の四段階が課せられることに。これは近年稀に見る厳格な内容だった。


——風を受け、風を読み、風を誘い、風と結びつく者こそ、神意を体現するに相応しい。


試練《風練かざね》の第一段階、《風の舞踏》はまさに風と踊る儀式。

街の中心広場で、風に逆らわずに舞い続けることが要求される。


だがこの日、突如として吹いた「いたずら風」により、マリアベルのスカートが翻り、観客に一斉に風鈴のような笑いが広がった。


「ちょ、エリナ! この風、絶対狙ってきてるーッ!?」


「落ち着いてマリアベル。パンツの色は問題じゃない、今は風との対話よ!」


「いやいや問題しかないからぁぁぁぁっ!!」


第二段階


《風詠ライブ》では、風の流れを即座に読み取って即興で歌に変換する必要があった。ここでもまた、マリアベルの歌の途中で突風が吹き、彼女のマイクが空中を舞った。


「うわああ!? 待って、マイクー!? ……誰かー!マイクキャッチマン!」


幸い、風見鶏の着ぐるみを着た観客の少年がキャッチして拍手喝采。


「この試練、試練っていうより、風とのネタ合戦なんじゃ……?」


第三段階、

《風読神託》では風の塔で吹き抜ける風から神託を読み取るというもの。エリナが集中して風を読もうとしたそのとき、風が「フッ」と吹き抜け、彼女の額に貼られていたメモを飛ばす。


「……今の風、私のカンペを持ってった……?」


「エリナ、それ多分神のツッコミ」


「風って、意地悪だね……」


そして最終段階、《精霊契約儀式》。ここでついに、風の精霊長シルフィリアと対面。

厳粛な雰囲気の中で、エリナとマリアベルは真剣に自身の心と向き合う……はずだった。


が——


「あなたの心、風が震えてるわ」


「えっ!? なんで!? 何もやましいことしてないよ!? お風呂も入ったし、ちゃんと精霊に挨拶もしたしっ!」


「……あ。昨日寝る前にこっそりドーナツ食べたこと……?」


「それだーー!!!」


そんな軽妙なやりとりを経て、しかし二人の誠実な心は精霊に届き、契約は無事成功。


最終日、神殿の天空ステージに立った二人は、街の風と一体となったパフォーマンスで観客を魅了した。


「風よ、私たちの想いを——舞わせて!」


風鈴が鳴り、空が揺れ、光が舞う。風の神ゼフュロスの神像が微かに頷いた——


——風は、祝福した。彼女たちの魂を。


こうして、第一の都市アウルブリーズでの試練は笑いと歓喜と感動に包まれ、幕を閉じた。


次なる目的地は、炎の神を祀る灼熱の都市「バルミレッタ」。だがその旅路には、さらなる試練と陰謀、そしてアイドル衣装での灼熱地獄が待ち受けているのだった——!




【アフターエピソード:風宿る午後のカフェタイム】


試練を終え、全身から緊張が抜け落ちたエリナとマリアベルは、アウルブリーズの名所「風宿る葉音はおんのカフェ」で束の間の休息を取っていた。


店内では常にそよ風が流れ、風鈴が静かに響く。注文したのは名物「風流ゼリー」と「ふわふわ風巻きパン」。風の精霊たちがテーブルの周囲をくるくると舞いながら、彼女たちの健闘を讃えるかのように歌を奏でていた。


「いやー……終わったねぇ。ふとももに風が当たるたびヒヤッとしたよ……いろんな意味で」


「私は何回突風にメイク飛ばされたかわからない……でも、楽しかったね」


と、そこへ現れたのは風の精霊長・シルフィリア。


「ごきげんよう。精霊契約後の余韻、楽しんでいるかしら?」


「シルフィリアさん!? こんなカフェにも来るんですか?」


「当然よ。私は風なのだから、どこへでも行けるの」


そう言ってウィンクをひとつ。精霊たちが小さな笑い声を上げる。


「あなたたち、風と踊り、風に歌い、風に心を開いた。その絆は、もう消えない」


エリナとマリアベルは視線を交わし、静かに頷く。


「また……来ます。きっと、もっと強くなって」


「そのときは私が直接、風のご加護を贈りましょう。あ、でもドーナツの隠し食いはナシよ?」


「うっ……やっぱバレてた……!」


笑いと風が通り抜けるカフェの午後。新たな旅路へ向かう前、二人はそのひとときを大切に味わっていた——


そして、空舟の汽笛が響く。


「さあ、次の目的地は——炎華の都バルミレッタ! 行こう、マリアベル!」


「待ってエリナ、風巻きパンあと3口!」


旅は続く。風とともに、歌と笑いを乗せて——!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ