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童貞坊主がお経をあげていたら、転生して美少女シスターになってしもうたがな!  作者: 枕川うたた


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第5話 神意はステージに宿る

王都セレスティアの夜明けは、静けさの中に荘厳な鐘の音を響かせた。


まだ陽の光が街角に届く前、聖アガタ教会の中庭では修道女たちが整列し、朝の祈りに備えていた。


「奇跡グランプリ……って、なんやねん!!」


その列の端で、エリナ・ハセガワの怒声が鳴り響いた。前日までの聖歌祭を終え、ようやく休めると思った矢先の呼び出し。まさか新たな“信仰試験”が待っていたとは、誰が想像しただろうか。


教会の神父、ペテロ・ガルシアが苦笑しながら彼女に応える。


「どうやら主教会からの通達らしい。王都主催で“信仰を競い合い、神の意思に最も近づいた者を讃える”とある。勝者には“聖なるセンター”の称号が与えられるそうだ」


「センターって……アイドルの話ちゃうんか?」


「信仰と芸術を融合させる、という新しい教化の形だそうだ」


エリナはあきれ顔で呟いた。「神をセンターにしとけや……」


その隣で、相棒であるマリアベル・ノワエルが静かに補足する。


「これはきっと、“第三啓典派サード・テスタメント”の影響です。彼らは信仰を明確な“力”として示し、統一された秩序のもとに導こうとする思想を持っています」


ペテロ神父の表情が硬くなる。「……サマエルが動いたな」


サマエル――かつて天啓大学で主席を務め、天才と呼ばれた神学者。その思想は次第に過激になり、今では異端とされる“第三啓典派”の指導者にまで登り詰めていた。


奇跡グランプリの詳細は次のようなものだった。


■参加ユニット:


《エリミカ》:セレスティア正教会代表(エリナ&マリアベル)


《グロリア・デイ》:東方聖霊派の若手エリートたち


《アリマタヤ・ソウルズ》:預言者再臨派の敬虔な姉妹チーム


《サード・テスタメント》:異端組織からの挑戦者たち、サマエル率いる精鋭集団


■ルール概要:


各チームは3つの課題を順に突破し、《神の間》に到達することを目指す。


各課題は“奇跡係数”で評価される。これは「信仰心 × 観衆の感動 × 神意との共鳴」を基に算出される。


最終審査では、自らの祈りと歌で“神意”を舞い降ろさなければならない。



■課題内容:


① 祈祷パフォーマンス(祈りの深さと演出)


② 民衆救済(スラムでの奉仕・慰め・教化)


③ 神学クイズ(信仰知識と心の洞察力)


控室ではエリナが呆れ顔で頭を抱えていた。


「……なんやこれ、まるっきり信仰のバラエティ番組やん……」


マリアベルは真剣な眼差しで彼女を見つめ返す。


「形式に惑わされる必要はありません。私たちは“本物の信じる心”で向き合いましょう。信仰に派手さは要りません、誠実さこそが力です」



――課題①:祈祷パフォーマンス――


会場は中央聖堂。天井高く、ステンドグラスから注がれる光が舞台に降り注ぐ。


マリアベルが登場し、純白の法衣に身を包み、清らかな賛美歌を歌い上げた。静かな祈りが空間全体を包み、観客たちの心が徐々に引き込まれていくのが分かる。


続いてエリナ。


「南無……アーメンッ!!」


と同時に、和太鼓と鐘の音が響き渡る。


光の蓮華が足元に咲き、彼女は蓮華の上で優雅に、しかし力強く踊りながら念仏と聖句を融合させた祈りの歌を披露する。


《♪ありがたや、主の御名を南無アーメン〜》


一見ふざけているようにも見えるが、その瞳は真剣だった。


祈りは形式ではなく、心から出るもの――それを体現するようなパフォーマンスだった。



観客席の一角では、老修道士が静かに涙を拭っていた。



――課題②:民衆救済――


次の舞台は王都のスラム街。


壊れた家々、疲れた顔の民衆。信仰どころではない場所で、希望の火をともすのがこの課題の狙いだった。


エリナは、落書きだらけの壁にもたれる一人の少年に出会う。


「信じるもんなんか、あるわけないやろ」



エリナはその横に腰を下ろし、空を見上げた。


「ワイもな、昔はそう思ってたで。でもな、ワイのこと信じてくれた人がいたんや。そん時初めて“神”って思えた。人の祈りの中に、光があるんやって」


エリナはそっと少年の手を取り、歌い出す。


《♪君が笑えば、神はそこに宿る》


少しずつ、少年の目に光が戻る。


それは一人の心に起きた“奇跡”だった。



――課題③:神学クイズ――


最後のステージは神学的知識と信仰哲学を問うクイズバトル。


対戦相手は《アリマタヤ・ソウルズ》。完璧な答えを連発する敬虔な姉妹たちに対し、エリナは序盤で苦戦する。


「“神の姿”とは?」という問いに、マリアベルは答える。


「姿はなくとも、信じる心に応える存在。それが神です」


そしてエリナのターン。


「光が見えん時、どうやって神を感じる?」


一瞬、沈黙が走った。


エリナは答える。


「見えん時もある。そやけど、誰かが隣にいて、手ぇ握ってくれたら……そのぬくもりが神やと、ワイは思う」


その答えが観衆の心に響き、会場に静かな感動が広がった。


すべての課題を突破し、最高の奇跡係数を記録した《エリミカ》は、《神の間》へと進む資格を得る。


その扉は巨大な金属製で、天使と獣のレリーフが刻まれていた。


扉がゆっくりと開き、神意を審判する《天啓円壇》の姿が見える。


空間の中心に浮かぶ光の台座、その奥にはすでにサマエルが立っていた。


「ようやく来たか、煩悩アイドルとその伴侶よ」



マリアベルは一歩前に進み、瞳をまっすぐサマエルに向ける。


「信仰は争うものではない。でも、伝えたい想いがある。そのためなら、私はこの場所に立ち続ける」



サマエルは微笑み、手を広げる。


「ならばその信仰、我が神の前で証明してみせろ。偽りなき“奇跡”とは何かを」

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