第3話 センターの条件、煩悩か信仰か
あかん……あいつ、圧倒的や。
礼拝堂でマリアベルの自己紹介が終わったあと、神父と修道女たちはすぐさま大盛り上がりやった。
「なんて神々しい!」「まさに天からのギフト!」
「これはもうエリナとマリアベルのWセンターやな!」
いや待て。ワイは“元・坊主”、煩悩を捨てた者。争うなんて愚かな行為……そう、思うべきやのに。
(……なんでや……なんで心がザワついとるんや……)
胸の奥がモヤモヤする。これが嫉妬か? それとも……
「エリナ? 顔色が悪いですね。あら……まさかセンターを取られるのが怖いんですの?」
マリアベルが、あの完璧な微笑みでワイに言ってくる。
(うっわ、わかってて言うてきよった!)
「……別に、そんなことは……」
「でもご安心なさいな♡ 私、仏教も勉強してみますわ。“えーっと……ぎゃーてーぎゃーてー?”」
――ぎゃーてー言うなや!!!
それから数日後。
ワイは、神父の命令で“アイドルの真の資質を問う”試練に挑むことになった。
その名も――
「センター適性試験・徳目オーディション」
「信仰・ビジュアル・歌唱・ダンス・煩悩耐性・布教力・自己肯定感!」
神父が指を立てながら力説する。
「このれを極めた者こそ、センターにふさわしい真の偶像アイドルや!」
「いや、徳目のチョイス雑すぎません……?」
こうして、教会アイドルによる試練の幕が開けた。
「煩悩耐性テスト」
なぜか突然、半裸のイケメン神官たちが登場し、香水をふりまきながら囲んでくる。しかも「エリナちゃん、今日もかわいいね♡」とか言いながら耳元で囁いてくる。なにこの地獄。
(あかん……このままじゃ……目を合わせたら負ける……)
必死で般若心経を唱える。
「ぎゃーてーぎゃーてー、はらぎゃーてー……!」
「す、すごい……イケメン耐性が完璧……!」
「仏の加護やな……」
いや、童貞力の加護や。
マリアベルはというと、まったく動じず、むしろイケメンたちに「あなたたちの信仰心、甘いですわね」などと言い放っていた。
「うっ……な、なんか逆に恥ずかしい……」
「ドM属性に刺さるやつやん……」
その場にいた神官たちの精神を逆に浄化してしまう始末。
「自己肯定感アピールステージ」
自分を見つめ、短い自己紹介をするというコーナー。
マリアベルは流れるように言った。
「わたくしはこの教会に舞い降りた奇跡。聖なる舞で人々を導く者、マリアベル・グレイス。推しは自分。神もわたくしのファンですわ♡」
すげえ自己肯定感。
対してワイ。
「えー……元は山奥の寺で暮らしてた柴田誠、三十三歳独身童貞でしたが、えー、転生して美少女になりまして……今はアイドルです」
\シーン……/
(なんでや! 正直に言うたやんか!)
でもそのあと、なぜか一部の修道女たちがざわついた。
「……逆に信じられるかも」「魂からの懺悔……?」「むしろ清い……」
思わぬところで謎のカルト的支持を得るワイ。
「歌唱&ダンスパフォーマンス」
マリアベルは荘厳なオルガンに合わせて、天使のような聖歌を披露。声量も感情も完璧、礼拝堂中が涙した。
そして、ワイの番。
背景に般若ビートが流れ、ワイは言うた。
「YO! ナムアミダブツ、煩悩退散! 仏もイエスも韻でぶった斬る!
センターの座は譲らんぞ、ハレルヤと唱えてぶちかませ、ワッショイ!」
\\イエーーーイ!!!!!//
なぜか信者の若者たちがノってきた。
修道女までタオル回してる。
「アーメン! ナームー!」
「アーメン! ナームー!」
新宗教始まりそうで怖い。
その後の控室で、マリアベルがポツリと呟く。
「……なんですの、あれは。ラップ念仏?」
「いや、れっきとした布教活動や。現代の経典ラップや!」
「……仏教の未来、すごく不安になりますわ」
「信仰深さチェック」
神父の用意した質問に、心からの答えを返すという試練。
「あなたにとって“信仰”とは?」
マリアベルの答え:
「神への絶対的な忠誠。そして、導く側としての責任と覚悟」
さすがの答えに、一同うなる。
対するワイ。
「えー……一応、前世では仏門で学んでまして……あの、信仰ってのは、“弱さを受け入れる力”ちゃうかなって……」
一瞬沈黙、そして拍手が湧いた。
「……それ、すごく……人間らしいわ」
「親近感ある……」
【そして、結果発表】
神父がマイクを手に取る。
「……センターに選ばれたのは……」
「エリナ!」
「……ってワイかい!」
なんでや!? マリアベルのほうが正統派やろ!?
神父がニヤッと笑って言う。
「エリナ。あんたには“人間臭さ”がある。迷い、煩悩、葛藤、でも前に進もうとする。信者はな、そういう“生っぽさ”に惹かれるんや」
……ワイの童貞力、まさか信仰の武器になるとは思わんかった。
【その夜】
マリアベルが一人、礼拝堂でピアノを弾いていた。
「……センター、取られましたわね」
静かに、でも確かに悔しそうな声だった。
ワイは、そっと声をかける。
「マリアベル……。でも、あんたの聖歌、ほんまに綺麗やった」
「……ふふ、負けませんわよ。仏も、イエスも、ステージでは関係ない。センターをかけた戦いは、まだ始まったばかりですもの」
その後、二人は遅くまで、礼拝堂の片隅でハモり練習をしていた。
オルガンに乗せて響く声は、まだ未完成だったけど、確かな未来を感じさせるものだった。
こうして――
美少女シスター vs 神の歌姫による、
宗教融合アイドルユニット《セイント・ステージ・セイレーン》の
本格始動が始まった!




