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童貞坊主がお経をあげていたら、転生して美少女シスターになってしもうたがな!  作者: 枕川うたた


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第20話 深淵のアリアと、溺死寸前の正体バレ

――水。

視界のすべてが水。

上も下もない、ただ全方位から押し寄せてくる冷たく重い圧力。


「ぷはっ……ゴボボッ……ぶはぁっ……!」

私、死ぬ。

酸素ない。

もう酸素ポイントの残量バーが赤点滅してる感じ。

※ゲームじゃないけど。


横を見るとエリナは両腕をばたつかせながら必死で進もうとしているが、ほとんどその場で足踏み状態。

マリアベルは剣を振ろうとして、水の抵抗でスローモーションになっており、「やべえ忍者スロー映像」みたいになっている。


そしてその中心で、あの“黒き歌姫”が優雅に舞っていた。

ドレスは水中でもふわりと広がり、まるで水自体が彼女を持ち上げているかのようだ。

彼女の周囲には、発光するクラゲや魚がゆらゆらと踊り、幻想的……いや、よく見たら全部魔力で作った幻影だった。


「深淵へようこそ……可愛い修道女さんたち」

水中なのに、はっきり耳元で聞こえる。

こっちはゴボゴボ言ってるだけなのに、どういう仕組みだ。


「なに……を……(ゴボッ)」

言葉が水に潰され、泡になる。


肺が焼けるように痛い。

頭がぼーっとしてきて、このままだと本当にヤバい。


――やるしかない。


私は腰の袋から、昨日屋台で衝動買いした最終兵器を取り出す。

『自動膨張式ぷかぷかイルカ浮き輪』(※何に使うつもりで買ったのかは自分でも不明)。


プシューーーッ!

イルカ型の巨大浮き輪が一瞬で膨らみ、視界を埋め尽くす。

それが歌姫の前をふさぎ、彼女の表情が一瞬だけ固まる。


「……何それ」

「最終兵器ッ!」


その一瞬の隙を突き、マリアベルが突撃!

剣を構え、渾身の水中突進。

水の抵抗で時速3kmくらいしか出てないが、それでも刃は歌姫のローブを裂いた。


――バサッ。


現れたのは、人間の脚ではなかった。

光沢のある青黒い鱗、しなやかに動く尾びれ。

そして尾びれの先端には、半透明のヒレが扇のように広がっている。


「……人魚?」

「いや、アニメで見たやつより足長ぇな」

「マリアベル、今それ言う?」


歌姫は笑った。

「人魚? 違うわ。私は深海種アビスシンガー。潮と水流を歌で操る、古の種族よ」


その瞬間、尾びれが水を打ち、大渦巻きが発生。

私たちは簡単に飲み込まれ、ぐるんぐるんと上下逆さまに回転する。


「ぐわあああああ!」

「髪があああ! 顔にベタァァって!」

「エリナ、それより呼吸ぅぅ!」


渦の中心で、歌姫が口を開く。

低く、重く、骨の髄まで響くような音波が放たれる。

石壁が震え、水の粒が細かく振動し、私の視界が白くかすむ。


「終わりよ」

そう囁かれた瞬間、エリナが懐から光る十字架を取り出す。


――ビカーッ!


十字架から放たれた光が、一瞬だけ水を蒸発させ、私たちは石床に叩きつけられた。

「ぐはっ……生きてる……」

「ギリね……」


水面に浮かぶ歌姫は、楽しげに笑っていた。

「面白い……あなたたち、ただの修道女じゃないわね」

その瞳に宿るのは、戦意と好奇心。

敵か味方か……まだわからない。


――深海のアリアは、まだ終わらない。

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