第14話 試練の第一関門! 絶望のバリアフリー地獄!
試練の門をくぐった瞬間、目の前に広がったのは――
なんと、全面ピカピカの大理石エントランス。
階段は一切なく、スロープがゆるやかに続く。
天井は高く、優雅なシャンデリアが回転している。
さらに壁には金色のプレートで「高齢者・妊婦・ベビーカー利用者歓迎」とご丁寧に刻まれていた。
「……あれ、地獄って聞いたんですけど?」
「これ完全にショッピングモールの入り口だよな」
エリナが首をかしげる横で、マリアベルは腕を組みながら呟いた。
「油断しないで。こういうのが一番危ないのよ」
歩き出してすぐ、私たちは違和感に気付く。
――スロープが、やたら長い。
「え、これ上り坂? いや下ってる? どっち?」
「距離感がおかしいわ……進んでも進んでも景色が変わらない」
さらに、床がほんのりツルツルしていて、歩くたびにスケートリンクのように滑る。
「うわっ!」
エリナが前のめりに滑り、私が慌てて支えるも、今度は二人でスーッと加速。
「待って! 止まらな――」
ゴンッ!
壁にぶつかる……と思ったら、そこは鏡張り。
反射する自分たちが、見事に転倒している姿を映していた。
「うわー、顔までバッチリ映ってる……やだこの転び方」
「ふふ、情けない顔してるわね」
「マリアベルもさっきすべってたじゃん!」
しかもこのバリアフリー地獄、やたら親切な自動案内ロボが徘徊していた。
「ようこそ! バリアフリー体験ゾーンへ!」
「本日はお身体の具合はいかがですか?」
「……試練の案内じゃないの?」
しかしこのロボ、近づくといきなり持っている巨大クッションで後ろから押してくる。
「えっ、なにこれ、あっち行けって? あっ、滑る滑るぅぅぅ!」
結果、私とエリナはスロープを逆走する形で下まで戻される。
そして中盤に差し掛かると――段差ゼロの恐怖が牙をむく。
バリアフリーのはずなのに、床の模様が3Dアートのような錯覚になっており、
平面なのに段差に見えたり、逆に穴に見えたりして、足がすくむ。
「エリナ、そこ平らだよ!」
「でも落ちそうに見えるんだってば!」
「ほら、勇気を出して――」
ズルッ!
エリナの足がもつれて、私の腰にしがみつく。二人で再びスケート状態。
ゴールが見えたのは、それから延々と滑って笑って立ち上がってを20回は繰り返した後だった。
最後の関門は、自動ドア……のはずが、開くたびに超強力送風が吹きつける。
「髪がぁぁ! 修道服のスカートがぁぁ!」
「私のスカートまで持ち上がって――きゃあああ!」
結局、全員髪も服もぐちゃぐちゃのまま、風に押し出される形で第一関門を突破したのだった。




