第11話 羊毛暴走!エリナ服食べられ事件
今回、私たち一行は旅の途中で知り合った宿屋の主人の勧めで、少し離れた「高原牧場」へ足を運ぶことになった。
「ねえ、なんでわざわざ牧場に?」
マリアベルが眉をひそめる。
「いやぁ、こういう場所に行けば、たまには都会では手に入らない食材や情報もあるだろ?」
そう言いつつ、私はお腹が空いている。正直なところ、情報よりソーセージやバターに惹かれていた。
「わぁ……空気が美味しいです……!」
エリナが両手を広げて深呼吸する。純白の修道服が風になびき、牧歌的な景色にまるで絵画のように溶け込んでいる――
と、そのとき。
もしゃっ。
「……え?」
エリナの足元に、ふわふわの羊が一匹。目を細め、恍惚とした表情で、彼女の修道服の裾を食っていた。
「ちょっと! 何してるんですか!? それはパンじゃありませんっ!」
エリナが慌てて引っ張るが――
もしゃもしゃもしゃ……ぺっ、もしゃもしゃもしゃ……
「ちょ、強いっ! この羊、馬並みに力があります!」
「馬並みに服食べる羊って何!? 新種!?」
マリアベルは腹を抱えて笑いながら、全然助ける気がない。
私が慌てて駆け寄るが、羊は負けじと引っ張る。
修道服の裾を中心に、完全に綱引き状態になった。
「エリナ、踏ん張れ!」
「無理ですっ! あぁっ、仲間を呼んでますっ!」
案の定、別の羊たちがわらわらと集まり、まるで合唱団のように「メェェェ」と鳴きながらエリナの袖やフードにもかぶりつく。
ここに来て、綱引きは多方向乱戦へと発展。
「助けてくださいぃぃぃ!」
「ははははっ! 今日の晩ごはんは『修道服のカルパッチョ』ね!」
「誰が食べるんですかそんなもん!」
やっと牧場主が駆け込んできて、羊たちを引き剥がす。
しかしその頃には――
エリナの修道服は、裾がミニスカート並みに短くなり、糸くずとヨダレで芸術的にカオスな状態。
牧場主が「いやぁ、うちの羊たち、白くて清らかな布が大好物でして……」と申し訳なさそうに笑う。
「……帰りたいです……」
涙目のエリナの肩を、マリアベルはまだ笑いながら叩く。




