Pink 〜世界を滅ぼすために生み出された人造兵器は、王国騎士御用達の酒場を営んでいる〜
人類の魂を養分とする“ヴィジランテ“という「種族」は、『原始のスープ』と呼ばれるオリュンポスの海底に数千年も前から住んでいた。
彼らは人間を“製造”し、種族として成長させ、生物の肉体の元となる「魂=精神エネルギー」のレベルを引き上げることを目的としていた。
成長させた人間たちの遺伝情報を集め、「生物種」としての成長を遂げるため、『魂の器』と呼ばれる“ドライバー”を製造、育成していた。
全ては、“星の運命”に抗うための、壮大な計画の一部だった。
ドライバーと呼ばれる者たちは人間と同じような姿形をしているが、そのままでは「自我」を持たず、「魂」を持たない。
そのかわりエネルギーを入れるための容量が他の生物たちとは異なっており、その能力も人間たちとは一線を画す。
しかし、無数のドライバーを製造する過程で、突然変異種と呼ばれる「アンチ・ドライバー」が生まれたのは、オリュンポスの12柱の1人、『クロノス』の想定していなかった出来事だった。
クロノスはドライバーの「肉体」を作る役目を担っていたが、アンチ・ドライバーの生まれた原因を突き止めることができず、一時製造の中止を余儀なくされてしまう。
アンチ・ドライバーは人間と同じように自我を持ち、「自由意志」と呼ばれる反乱因子を持つ”失敗作”だった。
アンチ・ドライバーとして生まれた“ニッキー・ヴェストフェルト”は、自らの存在が消されることを恐れ、オリュンポスから逃げ出していた。
反逆者として人間界に紛れる傍ら、王国の騎士たちがこよなく愛する酒場、『フリーダム』の2代目の店主として、「人」として生きていくための生計を立てていた。
彼女の住む西の大国、サンシティに、とある危機が迫っていることも知らずに。
酒場の店主
第1話
2024/08/16 22:08