C4-14 争いは避けられない
「よく避けたわね。魔力なんてほとんどないはずなのに」
「待て、商人の出自なんてどこでもいいだろ!」
「残念ね。私はミルグ以外の人間とは取引しないわ」
「こっちはアークウィザードだぞ! 戦うデメリットの方が大きいはず」
「体の傷と筋肉……あなた近距離型でしょ? 私、そのタイプは怖くないの」
虚勢ではない。戦いをくぐり抜けてきた者特有の、冷えた落ち着きが彼女にはあった。
「それに、あなたが欲しいの。どうしても」
「……聞く耳はないか」
ジリジリと蜘蛛たちが距離を詰めてくる。暗い部屋の中、視認できるのは数体の脚のみ。だが、多くの気配を感じる。
「ええ。その子たち、魔力はほとんど残っていないみたいだけど」
一瞬、ラハムは油断してしまう。魔力がないため、体の造りは貧弱。野生動物と変わらないと。
「ふふ。侮ると、痛い目に遭うわよ」
その考えを見透かしたフリーダの一言。そして、部屋中の蜘蛛から一斉に糸が吐き出された。
ーーなんだ、この糸は!?
咄嗟に回避した。吐かれた白い繊維は、自然のものとは思えない粘着力があった。その上
――魔法じゃないから相殺できず、消滅もしない……厄介だな。
「天然の糸よ。存分に味わって」
小石が落下する音が聞こえる。影がさらに距離を詰める。冷や汗は止まらない。
「どうして、無関係な子供たちを食い物にできる? 心は傷まないのか」
「死ぬよりはマシ」
逡巡などない。彼女はきっと、とうの昔に答えを出している。
「そもそも、孤児の私がどうして他の子を助けてあげなくちゃならないの?」
「関係ないだろ!」
「そうね。でも、世界は正論でできているのかしら?」
無駄な問答に思えたが、その間に僅かな猶予は稼げた。思考を整理し、決断を下すための時間が。
――本体狙いだ。
数も配置も不明な僕たちを逐一排除するのは、非合理的。狙うべきはフリーダ本人。短期決戦を目指す。
メリークリスマス
読んでいただきありがとうございます。




