C4-5 クイスの日記 存在しないページ 後半 (フリーダ 画像あり)
「起きちゃった? クイス」
気づいたとき、僕は裸で冷たい寝台の上に乗せられていました。周囲は暗く、わずかに灯りが灯るだけ。辺りには、花ような甘くていい香りが充満していました。
「ふふ、なんて可愛いのかしら。外に送る予定だったけど、まあいいわ」
先生は下着姿で僕の上に跨っていました。闇の中でボンヤリと目に映るその姿はあまりにも美しく、まるで彫刻のようでした。僕は真顔のまま、言葉も感情も失ってしまいました。
知識のない僕は何が何だか分かりませんでしたが、これから僕と先生は結婚のための儀式をするのかな、と浮かれていました。
だけど奇妙なことに気づいたのです。僕は両手両足を縛られ、拘束されていました。何本もの白く細くネバネバとした糸の束で手足を縛られ、猿ぐつわを噛まされていたのです。まるでこれから拷問が始まるかのように。
「いただきます」
先生は唐突に一言を発しました。そして次の瞬間激しい痛みが走り、腕が先生の口元で無残に引き裂かれていました。
「んんん!?」
あまりの激痛に僕は声にならない声を出しました。痛みと恐怖が入り混じり、冷たい汗が額から頬を伝い落ちました。
「うふふ」
先生は赤く染まった口元に、妖しい笑みを浮かべていました。その笑顔は不気味でしたが、同時にとても綺麗で、僕は一瞬その姿に見とれてしまいました。苦痛さえも忘れるほどに。
「私もね、昔は孤児だったの。あるお方に拾われるまで。何もない場所でひたすら飢えに耐えてたわ。爪がズタボロになるまで噛んで、誤魔化した」
濡れた口元を手でぬぐい、先生は淡々と語り続けます。そのときの先生の顔は言葉では表現できないものでした。悲しみや怒りなど、負の感情が複雑に絡み合っていたのです。
「そしてある日、我慢できなくて人の肉を食べたの。信じられないほど美味しくて、とってもとっても幸せな気持ちになれた」
先ほどとは打って変わって、先生の喜びに満ちた表情が目に入りました。まるで運命の恋人に出会ったかのような、うっとりとした顔でした。
「だから止められないの。いつまで経っても」
続いて僕は首を噛まれました。長くてサラサラとした髪の毛が肌に触れる感触と、いい匂い。それらを感じると同時に、頭の中で体が裂ける音と痛みが響きます。
「んんんぅ!!」
「クイス、愛してるわ。あなたの歯応えを、味を、決して忘れない。私の血肉になって、ずっと一緒にいましょう」
フリーダ先生は容赦なく僕の体を噛み締めます。鋭い痛みと出血によって、やがて意識が遠のいて気を失いました。
「あれ? ここは?」
次に目覚めたとき、僕は真っ白い霧がかかったような場所に立っていました。目の前には死んだはずのお父さんとお母さん。それにこの孤児院で亡くなった子供達がいました。霞がかかった世界で、人間の姿だけが鮮明に見えました。
「そっか。全部終わったのか」
どうやら僕は卒業してしまったようです。何もかもから。
たまたま立て続けに女性の悪役ばかり書いてきましたが、次の章からは男の敵を出そうと思っています。今まで以上にヤバイ奴を。




