表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界英雄物語  作者: mania
Chapter4 それは呪いか祝福か
65/73

C4-4 クイスの日記 存在しないページ 前半

 

 ここから先は、僕の記憶を綴ります。翌朝、僕は先生にそっと起こされると、ゆっくりと車椅子に乗せられました。岩でできた廊下に出て、車輪がゴトゴトと小さな音を立たせながら、僕たちは進みました。



「嫌だ」



 車椅子が揺れるたびに、僕の心も同じように揺れていました。そして、その不安に耐えられなくなった僕は、小さく悲痛な声を上げました。



「先生やみんなと離れたくない」



 その言葉に先生は一瞬だけ顔を曇らせ、けれどすぐに優しい笑顔を浮かべて答えました。



「でも、お外に行かないと治らないわ」


「嫌だ、嫌だ! ここから離れたくない! 僕は先生のことが好きなんだ。先生にお嫁さんになってほしいんだ!」


「あらあら」



 僕の突然かつ必死の告白に、先生は驚いた様子で立ち止まりました。見上げた先生の頬は、ほんのり赤く染まっていた気がします。



「ここを出れなくてもいいの? 治らなくてもいいの?」


「いいよ! 先生と一緒にいられるのなら!」


「まあ……」



 先生は僕の左手をそっと持ち上げ、薬指にどこからか取り出した小さな輪っかをはめてくれました。それは先生が得意とする織物で作られた、真っ赤な糸の指輪でした。



「先生、これって……もしかして?」



 僕は驚きと期待に胸を高鳴らせながら尋ねました。すると先生は静かに、けれどはっきりと答えてくれました。



「分かったわ。ずっと一緒にいましょう」



 その言葉を耳にした瞬間、飛び上がりそうなほどの幸福感が僕の全身を包み込みました。



「うぐぅ!?」



 しかしそれも束の間、突如として鋭い痛みが背中に走り、全身が痺れました。 目の前が暗くなり、次第に意識が遠のいていく中、先生の綺麗な笑みとカサカサと何かが動く音が脳裏に焼き付きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ