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異界英雄物語  作者: mania
Chapter4 それは呪いか祝福か
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C4-0 クイスの日記


 初めまして、僕の名前はクイス。年齢は十歳くらいの男の子です。元々どの国に属しているのか分からない、辺境に住んでいました。


 盗賊に両親を殺され、薄汚れた服装で当てもなく荒野を彷徨っていました。自分の誕生日を迎えたのかどうか分からなくなるくらい、長い間歩き続けました。


 ある日捕まえられて、怖そうな大人たちに孤児院に連れてこられました。 そこは元々地下に作られた牢獄を再利用した場所で、暗い岩だらけの穴の中にいくつも牢屋があります。


 ここは色々な薬品や苔、カビの匂いが充満していて、まるで絵本で読んだ魔女の住処のような雰囲気です。



「今日からこんなところで暮らさなきゃいけないのか……」



 そう思うと、僕の気持ちはどんどん沈んでいきました。でも、そんな気持ちもあっという間に消え去ります。なぜなら僕は運命の人に出会ったから。



「あなたがクイスね。私はフリーダ。今日からあなたの先生で、家族よ」



 何本か蝋燭(ろうそく)が灯るだけの、石材でできた薄暗い通路で迎えてくれたのは、この世のものとは思えないほど綺麗な女の人でした。


 黒く長い髪を揺らすフリーダ先生は、流線型のたおやかな体の上に、品のある黒いワンピースを纏っていました。


 そして、宝石のような綺麗な赤い目で僕を見つめて微笑みました。その笑顔に魅了された僕は、気づけば先生のことで胸がいっぱいでした。



「お前が新入りのクイスか。俺はイーズっていうんだ。一緒に遊ぼうぜ」



 それに加えて、ここには僕と同じくらいの歳の子供たちが大勢連れてこられていました。みんな優しくて、遊ぶ相手には不自由せず、寂しい思いはせずに済みました。


 両親が死んだとき、僕は自分が世界で一番不幸だと思いましたが、ここに来てからはそうではないと思えたのです。



「クイス、一緒に食事をしてからお昼寝をしましょう」



 フリーダ先生は、本当の家族のように僕たちの面倒を見てくれました。この場所で過ごす時間は全てが宝物です。


 色々と辛いことはありましたが、これから幸せな未来が待っているのだと信じることができたのです。


 


 あのときまでは。

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