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異界英雄物語  作者: mania
Chapter3 それでも俺は
32/73

C3-0 英雄が死んで生まれた日 (歌姫アルジェ 挿絵あり)

挿絵(By みてみん)

茶髪の少女アルジェ イメージ図


 

 小さな湖のある草原に一人、茶髪の少女が座り込んでいる。彼女の端正な顔は、何とも複雑な表情に歪んでいる。驚き、恐怖、愛情が均等に入り混じったような。


 動揺を(あら)わに少女は目の前の青年、多田進(ただ すすむ)を見つめながら叫ぶ。



「どうして!?  私といればあなたは英雄になれるのよ!?」



 急に強い風が吹く。ザァァっと揺れる草は、まるで彼女の叫びに反応するかのようだ。風により何枚もの木の葉が近くの湖に落ち、終わらない波紋を作り出す。まるで今の混乱した状況を表すかのごとく。



「そうかもな」



 進は平然と言葉を返した。言葉自体は肯定の意味であっても、込められた感情は無音のごとく空虚だ。



「だったら……」



 もしかすると説得できるかもしれない。少女がそんな淡い期待を抱いた瞬間、彼はナイフを強く握りしめる。刃渡10cmを超える真紅の色の持ち手のナイフを。


 それはオーパーツと呼ばれる、古代に作られた特殊な武器。最上位の魔法使いを傷つけられるほどの。



「っ!」



 驚く彼女にお構いなく、彼は振りかぶりながら駆け寄ってきた。悪意と敵意と殺意を抱いて。少女は恐怖のあまり、足が(すく)んでいた。



「それでも俺は、こう生きる」



 ナイフは少女の小さな喉仏を、ズブリと貫く。



「あああぁぁぁ!?」



 上がる悲鳴。倒れもがき苦しむ少女を、彼は汚泥でも見るかのように冷たく見下げている。



「お前みたいな悪魔と、それを統べる帝王を地獄に叩き落とす。俺がここに来た理由が、きっとそれなんだ」



 ドドメは刺せなかったが、ちょうどいいと思えた。最後の瞬間まで、この子に痛みと向き合わせると誓う。死ぬまでに僅かでも罪滅ぼしの前払いをさせるのだと。


 そしてこの瞬間に完全に決まった。いや、決めてしまったのだ。多田 進は大国への反逆者、テロリストとなることを。

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