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異界英雄物語  作者: mania
Chapter2 女王をモノに変えるまで
18/73

C2-1 ラハムとフレナ(ラハム、フレナ 挿絵あり)

挿絵(By みてみん)

ラハム イメージ図(傷なし)


挿絵(By みてみん)

フレナ イメージ図


AIの画風が違うのは作者の腕不足です。キャラはこういう顔の形してるんだなとイメージしてもらえれば幸いです。


「うわー、すげー……格好いい」



 進の目に映るのは馬車を引くペガサスだ。全長は3m近い。白く逞しい体に、美しい銀色の両翼。童話でしか見たことはなかったが、今は実際にその生物がいる。



「そのペガサスの名前はベレオンだよ」


「ベレオン……名前も格好いいな」



 進の昂る感情とは逆に、ベレオンは変なやつが来たと言わんばかりに、そっぽを向く。黙々と進んでいく、その無愛想な姿すらも気品を感じるものだ。



「この世界に来てよかったって思える貴重な瞬間だ……」


「ベレオンも大切だけど、フレナとラハムにも挨拶して」


「ラハム?」



 フレナという名は知っている。朦朧とした意識の中で、進の切られた手を治療してくれた女性だ。だが、ラハムとは誰だろうか。



「ほら、こっちに来て」


「なんだこれ、鏡?」



 目の前には白い大理石のような石で囲われた、大きな鏡が見える。馬車の中にはそれだけが隅にポツンと置いてある。



「その中に入るの」


「え? 入る?」



 フォランは躊躇うことなく進の背中を強く押し、彼を鏡へと押し込んだ。



「ちょ、ちょっとぶつかーー!?」



 鏡が体に接触した瞬間、水面のように鏡面に波紋が広がる。それと同時に、まるでカーテンをくぐるかのように別の空間へ移動した。



「な、なんだこれ?」



 移動した先は、倉庫らしき場所の中で、先ほどの鏡と同じものが置いてある。そこから出ると、広がる草原に青い空。その中にポツンと立つ、レンガ造りで煙突つきの中世の一軒家。


 家の後方の崖からは海も見える。つい先程まで馬車に乗っていたはずなのに、突然全く違う空間に移動してしまったのだ。



「魔法の鏡よ。魔道具の一種で、特定の場所にワープできるの」


「なんでもありだな、この世界……」


「そんなに便利なものでもないけどね。一度ワープ先を決めると固定されるし」



 『いくわよ』とフォランが声をかけ、二人は歩き出す。庭や馬小屋のある立派な一軒家の敷地を進む。ただの馬車だと思っていたが、ここは彼らにとっては家に等しいのだろう。



「いるー? ラハム、フレナ?」


「お邪魔します」



 木の扉を開けると、目の前のリビングに二人の男女がいた。女性の方はフレナ。三つ編みで黒髪の可愛らしい女の子だ。幼なげのある、少し丸っぽい顔に丸い大きな瞳。進の記憶の中でおぼろげに残っている。


 年は十五、六ほど、背丈は150cm後半ほど。比較的少ないが、やはり彼女もあちこちに傷が見える。少女のような見た目に反して肉付きがよく、正直目線のやりどころには困る。特に胸のあたりが。



「あ、手を切られた人」


「あ、あの。治療してくれてありがとう」



 進は深々と頭を下げた。その姿は、まるで試合が終わり、勝敗を超えて礼を尽くす野球部員のように礼儀正しかった。



「うん。でも、腕の治りが遅かった。みんなより」


「遅い?」 


「それに、手をくっつけられなかった。ごめんなさい」


「え? 他の人はくっつけられるの?」


「腐ってなければ」



 どうして治療する速度は遅かったのだろうか、そして手を接合できなかったのだろうか。おそらく、これも体の造りのせいか。改めて進は自分の体の造りを恨んだ。それは一体人生で何度目か。



「初めまして。君が進か」



 フレナの隣に立っていた青年が挨拶をする。端的に言えばイケメンだ。筋の通った鼻に、流線型の綺麗な二重の目、上品に整った形の唇。茶色いセンター分けのショートな髪型。


 175cmほどの身長に、服の上からでも分かる鍛え抜かれた体。女性の理想を絵に描いた、物語の主人公のような見た目だ。歳は進と同じくらいだろう。


 だが、最も進の目を引いたのは、視認できる箇所全てに刻まれた(おびただ)しい数の傷だ。切り傷、殴打の後、火傷、何がなんだかわからないような跡もある。


 フォランもメリアもあちこちに傷があったが、彼はその比ではない。言われなくとも分かる、このラハムが最前衛で戦う戦士なのだと。



「俺の名前はラハム。よろしく」


「あ、ああ、よろしく」



 差し出された左手と握手をする。手にも数えきれないほどの傷跡とタコがある。それを見ると思わず涙ぐんでしまうほどの。



「伝えてた通り、進には雑用からやってもらうわ。色々教えてあげて」


「了解。ところで違う大陸から来たんだって?」


「大陸というか、異世界というか……」


「魔法か何かのせいで記憶がおかしくなってるだけだから、あんまり真に受けないでよ」



 未だに信じる気のないフォラン。これ以上証明する手段が見当たらないので、一生このままのような気もすると進は諦めていた。



「そうだとしても、話を聞かせてくれ」


「わたしも。聞きたい」



 ラハムとフレナは少年少女のように目を輝かせる。おそらく二人とも小説のようなファンタジーの話を聞けると思っているだろう。歴戦の猛者のように見えるが、まだ幼いところがあるのかもしれない。



「その前に、はい、マジックアーム左」


「え……それってガントレット?」

進以外の登場人物のことを掘り下げられてないですが、全員の過去編も物語の中で書きます。

皆様のブクマと評価をお待ちしております。

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