1話
逃げるとはどう言うことだろうか。
逃げることを恥だと言う者は孤高な精神と理想の持ち主なのだろうか。
もちろん、TPOがあるだろうが。
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「風雅!学校行かないの!?」
「行きたくない…」
「どうしたの?何があったの?もう1週間も学校行ってないじゃない?先生も心配しているのよ?」
「そんなはずがある訳ないじゃないか!」
「急に大声出してどうしたの?学校で何かあったんでしょ?お母さんも着いて行くから一緒に学校に行きましょうよ」
「嫌だ!嫌だ!」
「もう…」
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「風雅くん?どうして学校に来ないの?」
「知ってるくせに」
「先生にちゃんと言ってくれないとわからないよ」
「本当に言っているんですか?目の前で起こっていたことを忘れたんですか?」
「どれのこと?」
「僕は虐められているんだ!先生もみてたでしょ!」
「AくんとBくんの話?あれは遊んでるだけじゃないの?」
「あれがイジメじゃないって本当に言ってるの?」
「たまたま手が当たっちゃったって話してたじゃない?」
「たまたまで何回も当たる訳ないじゃないか!」
「わかりました。それじゃ私は学校に戻って他の子にも聞いてみます」
「どうせ言うだけでしょ。何の解決にもならないんだ」
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「ほら、みんな謝ってくれたんだし、学校行こうよ」
「どうせ仕返しに来るんだ」
「ちゃんと先生たちが見てるから」
―
『悲報です。昨日に引き続きイジメによると思われる自殺事件が起こりました。先生たちはイジメはあったが解決したと思
っていたと話しております。岐波風雅くん中学2年生と若い…』
―
『これでも逃げるのは恥だと言うのだろうか』