かりんとう
しーちゃんは泣いていた。
たまにしか食べない
かりんとうが、チョコ味で、泣いていた。
気にしないというより、気になる時間。
しーちゃんは、注意深く、
商品を見なかったことを、
後悔している。
この前、お風呂洗剤が、レモンの香りで、
悲しかった。森の香りが良かった。
しーちゃんは大人にならなきゃと
11歳なのに考える。
大人はどうだろうか。
しーちゃんの様に、正面玄関に、
居られるだろうか。
雨戸を閉めながら、
しーちゃんはお母さんに、
かりんとうの真実を伝えると、
お母さんは、お客様用の、
黒蜜かりんとうを一袋くれた。
子供で良かった。
素直で良かった。
しーちゃんは、
お夕飯を食べられるように、
3本だけ、黒蜜かりんとうを食べた。
一生懸命生きる子供って、大人。