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black flower 黒竜花  作者: ゼル
8/18

black flower 黒竜花 Ⅷ

Episode 8 告白、ハジマリはオワリ?





あれから2日。


そろそろ治ってもいいころだ。







ドラゴンのグアロは洞窟で今日も人間の少女ノエルを待っていた。




喧嘩をした2人だったが、ノエルのその後風邪をひいてしまった。

風邪に効く万能な薬を調合したグアロは、それをノエルにこっそり与えた。



(あの薬は即効性もある…だったらもうそろそろ……)



「あっ…」



「…よお」


目の前にノエルが居た。


いつもの青い髪に黄緑の瞳。

つぎはぎだらけのピンクの服。

いつものノエルだ。


「…えへへ、おはようグアロ。ごめんね。会いに行けなくて…」


「気にするな。気まぐれで待ってやってるだけだ」

「もう、素直じゃないのね」

ノエルはグアロのお腹に飛びついた。


「わっ、何すんだ…!」


「えへへ、暖かい。」

「変な奴だな…」



グアロはノエルの顔を見た。


「…悪かった、怒鳴ったりして」


「ううん、良いの。グアロ。“アレ”が何か知ってたから、私に危険が無いように怒ってくれたんでしょ?なのに私、全然素直になれなかったから…私の方こそごめんだよ。」


ノエルとグアロは仲直りした。



「それとね…ありがとう、グアロ。」


「?」


「薬だよ。あの後嘘のようにどんどん治って行くの。グアロって薬も作れるんだね。」


「ん、あぁ…そこまで上手には作れないけどな」


「村の人たちもみんなグアロのこと気が付いてないみたいだからきっと大丈夫、そっちはどうなの?」

「…どうだろうな、最近よく出かけるようになったなとか…そういうことは言われるけどな」


「そっかぁ…私たち…ずっと一緒にいられるのかな」


ノエルは不安そうな顔をした。

グアロはとっさにノエルの顔をグアロの顔の傍にぐいっと近づけた。


「…分からない…けどな、もし俺たちの事がバレても………」

「グアロ?」


「…いんや、なんでもない」


「変なの。」


グアロは何かを言いかけるが、途中で辞めてしまった。




「ところでお前、風邪はもう完治しているのか?」


「うーん、どうかな。ちょっとまだ熱っぽいけど…」

「…やれやれ、完治してから来いよ…薬の素材の残りがある、調合してやるからそれ出来たらもう帰れ。」


「ええー!せっかく来たのに!」

「またぶり返してみろ!そんなことになったら…」



グアロは顔を赤くしてノエルに言った。



「…お前にまたしばらく会えなくなるだろうが…」

「グアロ…もしかして…」


「な、なんでも…なんでもねっ!良いから大人しくしてろ!」

グアロは焦りながら素材を使って薬を調合し出す。


「…」(なんだかなぁ、可愛い所あるのね。不思議。あなたを見ているとなんだか暖かいわ。)



「ほら、出来たぞ。」

グアロは薬の入った、草で作った袋をノエルにひょいっと投げた。


「わっと…!」

丁寧に結ばれている。

ノエルの両手に乗るぐらいの大きさだ。グアロにとっては非常に小さい物のはずなのに、凄く丁寧に結んであり、グアロの器用さをノエルは知った。


「ありがと、グアロ。」

「いーから帰れ。早く完治させろよ」


「はぁーい、それじゃぁね。」

ノエルは手を振って、洞窟を出た。



「……あー…何ドキドキしてんだ俺は…」



身体がホクホクと熱い。

心臓の鼓動がいつもよりも激しい。


「……やっぱり俺…








あいつに恋してんのかな…」







グアロはため息をついて、しばらくこの洞窟でのんびりと時間を過ごした。


-----------------------




「おい、そんなに走ったら転ぶぞ」


「平気だよー」


それから2日後、ノエルの風邪は完全に治り、二人は、洞窟前の森で遊んでいた。

とはいえ、ノエルがはしゃいでいて、グアロがそれを見守っているだけの図なのだが




「グアロー!見て見てここ綺麗だよ!」

「はいはい…っておい!危ないぞ!」


目の前は川だ。


「あっ!」

「…!」


グアロは瞬時にノエルを抱きかかえ、空を飛んだ。


「グアロー…ありがとー…」


「ったく、危なっかしい。」


グアロは地上に降りようとする。


「あっ、グアロー!せっかくだからー!!」

「…お前なぁ…」


「えへっ。」

ノエルは微笑んだ。

グアロはそれを見るだけでなんだかドキッとなってしまう。


「…ちょっとだけだからな…」


空を飛ぶ事。

それはグアロの姿が無防備であると言うこと。


すなわちノエルを他の竜に見られた瞬間に2人に待っているのは…


グアロはすぐに降りるつもりだった。

だが、ノエルの顔を見ると、しょうがないなと思ってしまう。


「わーっ…!やっぱり凄い!」

手で覆われるノエルだが、すこしの隙間から空を眺めた。



「なぁノエル…」

「なに?」


「…俺、お前と…一緒にいてもいいんだろうか」


「なによ突然、当たり前じゃない!」

「当たり前なんかじゃねぇ…本来なら…有り得ないんだぞ…?竜と人間が一緒だなんて…」


「それは他の人や竜が決めた事よ、私たちの仲ってそんなものに縛られてしまうものなの?」


「……そうじゃない…と、信じたい」

「ならそれでいいじゃない、私はグアロと居たいもん」


「ノエル…」



グアロはずっとドキドキした。

ノエルはいつも自分の心を揺らしてくる。



ノエルの笑顔が好きだ。

ノエルの常識に縛られない姿が好きだ。



グアロはもう自分の気持ちに嘘がつけなかった。



「ノエルっ」


「えっ!?」

グアロは空中にノエルを解き放ち、抱き直した。


「グアロっ?そんなことしたら私の姿見えちゃ……」


ノエルの口が止まった。


(えっ?)


ノエルはグアロの腕に抱かれていた。


「…ノエル、聞こえるか?俺の心臓の鼓動…」

「…うん、とても激しく動いてる…」




グアロはノエルの耳元に顔を近づけた。


目を閉じて、そして…


















「好きだ」







「…えっ?」


「…だから…好き…だ…」

「グアロ…?」



グアロは急降下。地面に降りた。


「きゃっ、何?」


「…すまん、俺もう…自分に嘘がつけない」


グアロはノエルの顔を引き寄せた。

そしてその不器用で大きくてゴツゴツとしたその口がノエルの唇に触れた。


「…!…」(あぁ、そっか)

ノエルはそれを離そうとはしなかった。


(グアロ…ったら。)


「…」

「…」


グアロは口を離した。



「…はっ!お、俺は、俺は何を!?」

グアロはボンと煙を上げるように顔を真っ赤にし、後ろを向いて頭を抱えて震えている。


「…」

ノエルは驚いて声も出なかった。

しかし心の中ではもう言う言葉は決まっていた。



「す、すま、すまないノエル…!今のは全てなしに…っ…」

ノエルはグアロの大きな背中に抱きついた。

ぺたりと身体全体をグアロに触れたノエル。


「…グアロ、私もグアロのこと好きだよ。」


「…でも…俺の好きってのは…その……」


「分かってるよ、私と同じだから。」

「……俺は…いけないことをしてる…人とドラゴンが恋するなんて…」


ノエルは首を横に振った





「誰かを愛するのに種族も、理由も…そんなものいらないわ。」


「…ノエル…」

ノエルはグアロの正面に回り込み、グアロの胸に飛びついた。


「グアロ、嬉しいよ、私。グアロのね、胸の温もり感じる。」


「ノエル…」

「好きだよ、グアロ。」

「俺も…だ」





2人はずっと抱き合った。

あったかい心に気持ちよく抱かれながら…









Episode 8 END…











ガサッ




















「……なんてことを…してくれたんだ…グアロ…」

















幸せの時間。

それはとても満たされた心安らぐ思い出。



でも、そんな幸せが続くとは限らない。






「ガッ!?」



響く轟音。


轟く竜の咆哮。








「やってくれたな……グアロ…」


「…」








激しく、鋭い形相に囲まれてグアロは薄れる意識でうなだれた。






そしてその言葉はグアロの心を深く貫いた。




















「こいつを牢に入れろ。」















Episode8 END








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