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black flower 黒竜花  作者: ゼル
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black flower 黒竜花 Ⅵ

Episode6 曇り空 雨模様




グアロと仲の良かった友人で、かつて人間と関わり、牢に入れられたドラゴンのクライム。


グアロはクライムに人間とドラゴンの関わりについて聞いた。


そこでグアロはクライムに、人間と付き合うことの覚悟を言い渡された。

人とドラゴンは生きる時間が違う。

ノエルはグアロよりも早く死ぬ。

その覚悟を持って人間と付き合うとこが出来るのか?


そう問われたグアロは、更にノエルの事を考えてしまうのだった…



「グアロー!おはよーっ!」


ノエルはガラクタをたくさん持ってやってきた。


旧文明の遺産のようだ。


「あぁ…ってなんだよそれ。」

グアロはノエルの持っている旧文明の遺産を指す。


「知らないわけないでしょ?旧文明の遺産よ!行きがけにたくさんあったの。」

ノエルはばーっとガラクタを地面に落として広げた。


「見て見て!これ何だろ?」

ノエルは丸い球体のようなものを持ってグアロに見せた。


綺麗な丸をしていて、大きさは手で掴めるぐらいだ。

サビている為鉄で出来ていると予想できる。


「…それ…いや、なんでもない…」(まさかな…?)


グアロは一瞬嫌な予感がした。



旧文明、それは人間が好き放題科学の力を利用して、世界を崩壊まで追い詰めた狂気の時代。

そんな時代の遺産なんてどうせロクでもないものに決まっている。

グアロはそう思いながら、旧文明の遺産をグアロに見せびらかしてキラキラしているノエルを見る。


「おいノエル…気を付けろよ。変なの拾ってきやがって…ったく…」


「変なのじゃないもん~遺産だよ!」

ノエルはたくさん遺産をグアロに見せびらかす。


「これなんかすごそう~」

ノエルは今度は大きなリングを見せる。

どうやらおもちゃのようだ。


「ほらほら、こうやって…」

ノエルは身体に通してぐるぐると腰を回した。

するとリングはぐるぐるとノエルの周りを回りだす。


「あはは!おもしろーい!」

ノエルは大喜びだ。


「絶対使い方違うだろこれ。」

「そうかなぁ。」


ノエルはリングを戻し、新しい遺産を漁った。


「凄いよね、昔の人間はなーんでも作ってたのね。どんな人たちが暮らしていたのかしら。」


「…お前な、昔の人間が何してたか知ってて言ってるのかよ。」

「知ってるけど、娯楽が無かったなんてことは無いでしょ?きっとこの中に昔の人が遊んだ物があるわよ!」




この日ノエルは遺産の話ばかりだった。


昔の人間のこと、昔の物の事。

ノエルがそう言うのが好きということを知ったグアロだったが、あまり良い気分ではなかったようだ。




「じゃぁねグアロ!」

「おー。」


ノエルはいつも最後に満点の笑みを浮かべて帰って行く。


グアロはそれを見ていつも安心してしまう。



(…はぁ…)


グアロはまだ考えていた。

クライムに言われた、人間とドラゴンの関係を。


まだ自分がノエルとどうしたのかも定まっていないのに何故自分はこれからのことなんか考えているのか。


グアロはまだ自分の気持ちに正直になれなかった。


「…帰るか。」


グアロは翼を広げ、巣に戻って行った。

------------------------


翌日、ノエルはまたガラクタを持ってきていた。


「今日はね、なんだかすごい物見つけたんだ!」

ノエルは嬉しそうに後ろにそれを隠している。


「…」

グアロはまたか…と思いながらもノエルを見た。


「へへ~じゃーん!」

「!?」


ノエルが見せたものにグアロが驚いた。


なんだこれはという驚きではなく、その物自体に驚いたのだ。


「凄いでしょこれ!何かみたことない形しててさ!」


ノエルが見せたものは、横長で、棒状の鉄だった。

が、何やら引き金のようなものがあり、先には穴が開いていた。


間違いない。


グアロは確信した。

ノエルが持っている者は


“銃”だ。


グアロはそれが何なのか知っている。

故に驚いた…いや、脅えた。

かつて人間が生み出した簡単に命を奪える恐ろしい武器だ。

こんなものが近くに転がっていたなんて。


「お、おいそれ!やめろ!」

グアロはノエルに言うが、ノエルは夢中になっているようだ。


「ここ動くわ、何かしら。」

ノエルは取っ手の引き金に手をだした。

銃口…穴の部分がノエルの額のすぐ目の前だ。


「やめろ!」

グアロは腕を振り、ノエルが持っていた銃を弾き飛ばした。

「あっ!?」

銃は勢いよく吹っ飛んで、壁に当たった。



「な、何するのよ!」

ノエルは手を押さえながらグアロに怒った。


「そんな…そんな物騒なもん…持ってくるんじゃねぇ!!!!」

グアロは大声でノエルに怒った。

今までに無いぐらいグアロは怒っていた。


「な、なによ!そんなに怒らなくてもいいじゃん!それに壊れてるわどうせ!」

ノエルは我が強い性格だ。グアロに言い返した。


「壊れていようがいまいがだ!あれがどんな物かも知らないくせに…!」

グアロは地面に落ちた銃を指して言った。


「だからって…そんなに怒ることないじゃん!びっくりしたわよ!」


「だからってもクソもあるか!とにかくだ!二度と旧文明の遺産になんか触れるんじゃない!命が惜しければな!!」

グアロの声はいつになく荒く、喋り方も荒い。多量の汗をかき、大声でノエルを叱りつける。


「そんなキツイ言い方しなくてもいいじゃん!もう良いわよ!知らない!」

ノエルはグアロの顔にガラクタを投げつけて走って洞窟を出ていってしまった。


「っ……あ~…クソッ…やっちまった…けど…」



「俺はあいつのこと気にして…」


グアロはノエルを守ったつもりだった。物騒な物を純粋に眺めるノエル。

無知な人間がいかに恐ろしいかというのをグアロは感じたのだ。

だから怒った。


元々争うことは好きでなく、クライムが牢に入れられるときも、争い事が好きでなかったが為に庇うこともしなかった。

その争いの為の道具にもなっていた銃もグアロにとっては恐怖の対象でしかないのだ。


その引き金を引くだけで命を奪える恐ろしい物だ。

そんなものをノエルに持って欲しくなかった。

武器を使って武力制圧していたかつての人間と重なってしまうノエルなど、見たくなかった。

「言い過ぎたな…」


グアロは酷く落ち込んだ。

静かな洞窟だったが、外から音が聞こえる。

ザーと、小さな水滴が流れる音だ。

雨のようだ。


「…帰るか…」

グアロは翼を広げ、雨にうたれながら巣に戻った。



「あーっ!もう雨って…早く帰らないとってあっ!」

ノエルは足を滑らせて派手に転んだ。

「いっ…たぁ…もう………」


足を怪我したノエル。

ついてしまった汚れを払うが、雨で更によごれてしまう。

段々強くなる雨。ゴロゴロと空が鳴り響く。


「…グアロ…私のこと心配して怒ってくれたんだよね…でも…何で素直になれなかったんだろ…もう…馬鹿。」


ノエルもグアロにキツく言ってしまったことを考えた。

(グアロは自分が持ってきた遺産が危ない物だって知ってたんだ…だから私が怪我しないように…怒ってくれたんだ…)

何故かムキになってグアロに怒ってしまった。


しかし、悪いのは私だ…

ノエルは洞窟の方を振り向いた。


「…もう…居ないよね…」

ノエルは雨に撃たれながら足を抑えながら歩いて村へ帰って行った。



「あっ、ノエル。どうしたんだいその怪我は!」

村人だ。

村に帰ってきたノエルは早速村人に発見された。


「あっ…転んじゃって…」


「大丈夫かい?それに酷く濡れているじゃないか、早く身体を温めなさい。一緒に行こうか?」

「ううん、大丈夫……ありがとう…」

ノエルは力の無い声で村人に言い、自分の家に入った。


「…全く、遺産なんか毎日探してるからだよ…それにしても今日は元気が無いなぁ」

村人は心配しながらも、自分の作業をした。




「…」


ノエルはすぐに体を温める為、暖を取った。


「…グアロ…ごめんね。」


ノエルはしょぼんと落ち込みながら壇の前で蹲った。

そしてそのまま疲れてしまったのか、深く眠ってしまうのだった…


雨が降る中、グアロ、ノエルはそれぞれの傷を刻んだまま一夜を過ごしたのだった…


Episode6 END

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