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black flower 黒竜花 ⅩⅤ

Episode 15 みんなの気持ち、そして…







「何も変わっていないね…」



長年動かしていなくて、慣れない翼を使ってなんとかアーデンに戻ってきたクライムは言う。


「建物とかは燃えてしまったけどね。」

アイラがやれやれと早速片付けに取り掛かった。



「あ、私も手伝う!」


ノエルはアイラの手伝いを始めた。



「ノエル、大丈夫か?長い飛行に疲れていないか?」

「私は乗っていただけだから。グアロこそ大丈夫?」

「俺は平気だ、というか、休んでなんかいられないからな。」


「そうだね、明日から…きっと大変になるかもだし…」



竜族の仲間にアーデンの存在を知られ、竜族の長と交渉するために単身連行されたノエルは族長の説得を試みるが。失敗し牢屋へ閉じ込められる。

しかし、アーデンの人々がグアロを連れて総勢で助けに向かった。

その際に、グアロは、竜族と人間の交流をアーデン内だけ特例で許すように交渉を持ち掛ける。


族長は、掟を管理する者を、納得させることが出来れば認めると約束をした。


長い間牢に閉じ込められていたクライムも一緒にアーデンに一端戻ることになったアーデンの人々。



ノエルとグアロや、アーデンの人々の生活を竜族の管理者が監視することになるのだ。

翌日、その管理者がここで暮らすことになる。



相当な堅物らしく、ノエルたちは不安を隠せずにいた。

しかし、アーデンの皆が居る。ノエルたちはそれだけで大きく気持ちを落ち着かせることができた。



「エリーここ持ってて」

「はい、こうですか?」

「そうそう、そのままねー」



ドラゴンは力持ちだ。

すぐに使えるものと使えないものの仕分けをし、どんどん壊れた建物が復元していく。

森から新しい木を取ってきて、足りない部分を保管したりと、まるで慣れているかのような手さばきで、どんどん復刻されていくアーデンの家々。



「凄い…もうほとんど治っちゃった。」


戻ってきたの朝。そこからすぐに復興作業を開始して、半日以上。

陽はもう沈みそう。

もう壊れた村の7割以上が元通りだ。


「あたしたちのアーデンはよく外の竜族とのもめごとが多いの。だからよく壊されることなんてあるわ。」

アイラは慣れた手つきで再建した建物のチェックをしながらノエルと会話。


「そうだったね…僕はあまりここに居なかったけど、その短い間でも何度かあったよ。」

「クライムさん、お体は大丈夫ですか?」

「うん、なんとか身体言うこと聞くようになったよ。」


ドラゴンたちの方ではエリーがクライムを気を遣っていた。


「そうですか、良かったです。」

「でもまだまだだよ、今日は何度か手伝ってもらってごめん。」

「いいえ、困ったときはお互い様です。」


クライムは何度かエリーに手伝ってもらったらしい。


「ノエル、明日からのこと…どうする?」

「あっ、そうだね…大事なことだもんね、アーデンの人たちを集めて…」

明日から、竜族の管理者が来る。

どうしていくかを考えようとした。


「その必要はないと思うわ。」

アイラが言う。


「アイラちゃん、どうして?」


「あたしたちは普段通りに生活してればいいと思うの。当たり前のように問題なく生活していればそれで十分。外の人が居るからって、生活の在り方を変える必要なんてないわ。」

アイラは笑顔で言う。

「多分、アーデンの人たちもそう思ってる。そうでしょ?」


周りに居るアーデンの住民たちの一部が、力強くうなずいた。

「…そっか。そうなんだよね、ありのままの私たちを見てもらえばいいんだ。そうなんだよね、グアロ。」

「そうだな、そうなんだろうな…皆、迷惑かけるかもしれない、けど…よろしく頼む。」

グアロは今居るアーデンの人々に言う。


「うん、任せて。」

「ええ、私たちもお手伝いします。」

「任せろ!」

「私たちも頑張るからよろしくね。」

アイラとエリー。そしてアーデンの人々が言う。



「グアロ、あったかいね。」

「…あぁ、あったかい。この空間を俺はなくしたくない。」

「私も。」



グアロとノエルはアーデンの暖かさを感じた。

この空間を守りたい。

でも、特別なことはしなくてもいい。普段通りで良い。

その姿こそ自然なものであり、それを見せ続けるだけでいい。


深く考えることはしなくて済みそうだ。


クライムはノエルたちの家にしばらく居ることになった。

新しい住居をこのアーデンで構える予定だ。


そして夜。


復興は止め、明日の為に休むことにした。


「あれ?クライムさんは?」


「昔住んでた場所を探しに行くって言ってたが。」

「そっか…クライムさん、ここで人間の女の子と離れ離れになったって言ってたもんね…」






クライムはアーデンの外れ。

アーデンと外のギリギリの境目辺りをゆっくりと歩いていた。


「…!」



月の光も届かない木の葉に包まれた場所。

そこにあったのは小屋だった。


すっかり使われなくなって木々や草花が生い茂っていた。


「…もう使われていない…」

小屋の木に手を触れるクライム。

埃が舞う。


「…」

扉を開けた瞬間、物音を立ててズシンと木の扉が倒れる。

「あっ…何してるんですかね私は…」



中も埃だらけ。


「…やはりもうここには…ん?」



すっかり廃れてしまっているが、そこにあったのは書物。

その中に何か封が挟んであるのをクライムは見つけた。


「…これは…ここじゃ暗くて良く見えないけど…」

クライムはその書物を持って一端外へ出た。


「…これ…もしかしてあの子の…」



クライムはいったんノエルたちの元に戻ることにした。




「お邪魔します。」

クライムは家に帰ってきた。


「おかえりなさい、クライムさん。ご飯出来てるわよ。」

ノエルがクライムを出迎えた。


「ごめんね、ノエルちゃん。2人の家なのに。」

「ううん、良いの、クライムさんも大変だし。それにここじゃ、皆が家族みたいものみたいだから。」

「そうだぞクライム、遠慮することない。」

グアロも出てきて、クライムに言う。


「ありがとう、2人共。それと…早速で悪いんだけど…」

「「?」」












「グアロ、クライムさん何か見つけられたのかな。」

「あぁ、そうだろうな。クライム、1人になりたいって。」


「うん、きっと何か見つけたんだよね。クライムが一緒に居た人の手がかり。」



ノエルとグアロはクライムを1人にさせ、しばらく見守ることにした。





「…」

クライムは置かれていた書物の封を開いた。



そこには、クライムも知っている、懐かしい文字で、書かれていた…





“クライムさんへ



―――



 もし、このお手紙をあなたが読んだなら…という思いを持ち、このお手紙を書きます。

 このお手紙を読んだ頃、私はもうここには居ないでしょう。


 だから私があなたに言えなかったことを、ここで書き記します。

 クライムさん、1人だった私を、短い間だったけれど一緒に居てくれてありがとう。

 

 私はとても口下手で、あなたに何も言ってあげられなかったし、ドラゴンに脅えていたかもしれません。

 でも、あなたが突然姿を消して気づいたのです。私はクライムさんに救われていたのだと。

 

 あなたが居なくなって5年…私は

 これからアーデンを出ます。

 そして私はこれから新たな場所を求めて旅立ちます、あなたと出会って私は自分の本当の居場所を探そうと思いま

 した。

 でも、願わくばまたもう一度…あなたと会いたい。会ってお礼をしたい。


 だから、さようならは言いません。また、あなたときっと会えると信じています。

 

 最後に、私と一緒に居てくれて本当にありがとう。”


「…あぁ…」


クライムの目には涙がこぼれた。

あれから30年以上。

彼の瞳に映るまだ幼い女の子。


そんな女の子は自分が捕まって、牢で過ごしている間に、自分の力で立ち上がり、そして…今も何処かで…


不思議な気持ちだった。

「…僕も、君に逢いたいよ。」








「お待たせ。」

「…もう、良いのか?」

「うん。ありがとうグアロ。」


クライムは部屋の外へ。グアロとノエルにも大丈夫である旨を伝えた。

「クライムさん…女の子、どうだったんですか…?」

ノエルは聞いた。


「うん、きっとどこかで…暮らしてると思う。僕は彼女を探しに行くつもりだ。また何年賭けてもね。」


クライムは笑顔で言った。


「そっか…」

「でも、君たちの問題が解決するまでは僕もここで君たちのサポートをさせて欲しい。」

クライムはグアロたちに言う。

「良いのか?大事な人を探しに行くのが遅くなってしまう。」

グアロはクライムに尋ねる。


「僕は君たちに助けられて、今ここに居る。恩返しさせてほしいんだ。」

「…ありがとう、クライム。」

「ありがとう、クライムさん…」


グアロとノエルはクライムにお礼する。

「うん、明日から頑張ろうね。」




クライムは自分の寝床へと向かった。

ノエルたちの家の一室を借りることになった。



「…グアロ」

「ん?」


「…私たちも、普段通り生活しようね。」

「あぁ、もちろんだ。俺たちのありのままを見せてやろう。」

「うんっ。」


2人は抱き合いキスを交わした。


星が綺麗な夜の空を窓から眺めながら、2人は眠りについた…




―――




そして翌朝、アーデンの北方から3匹のドラゴンがやってきた。


2匹は護衛。

もう1匹が、族長の言っていた、監視するドラゴンだ。


アーデンの入口で待機するノエル、グアロ。そしてクライム。他にもエリーやアイラをはじめとするアーデンの住民たちが迎えた。



「…歓迎感謝する、と、言いたいが、お前たちにとって私は悪者であったな。我が名はアンフリー…竜族の法を管轄する者である。」

ローブを着た、かなり高齢なドラゴンだ。族長ほどではないが、相当な年を重ねて生きている。



「おはようアンフリーさん、あんたのことは知ってるよ。だが…俺たちは今まで通りの日常を過ごす。それを見ていてほしい。人とドラゴンはごく当たり前に共存できるということを。」

グアロが代表してアンフリーに挨拶する。


どうやらグアロも知っている人物のようだ。この人が来るということも大体予想を立てていたようだ。



「フム…よかろう。やり方は問わぬ、私を納得させてみよ。特例を認めさせるほどにな。」



「よし、みんな!今日もしっかり頑張ろうね!復興作業はもうすぐだよ!」

「おーー!」


アーデンの一部の住民は、アンフリーを睨んでいたが、アイラの掛け声で、アーデンの皆は落ち着いた表情に戻り、普段通りの生活にもどって行った。



「ノエル、クライム。俺たちも家づくりの続きだ。」

「うん、まだ私たちの畑も出来ていないし。アーデンの修繕も手伝わなきゃ。」


3人は、ノエルたちの家へ。

アンフリーとその護衛たちはそれぞれ分散し、アーデンを視察に回った。


もちろんアンフリーが向かうのはノエルたちの家。

アーデンの中心付近は護衛たちに任せてきたようだ。



「グアロ、ちょっと野菜取ってきてくれる?」

「あぁ。」


「クライムさん、ごめんね手伝ってもらって。」

「ううん、しならく世話になるんだし。」


「…あのー…」

ノエルは家の外に居るアンフリーを見て玄関を開けて、声をかける。


「…安心しろ、外から見ている。」

アンフリーは中に入らず、外から3人を見ながら、書物を読んでいる。


「あの、よかったら上がりませんか?」

ノエルがアンフリーに言う。

「断る。私は馴れ合いをしに来たのではない。」

「でも、泊まる場所も無いでしょう。」

「気遣いは無用だ。」


「そうですか…」


ノエルはお辞儀をして中に入る。


「ノエルちゃん、アンフリーは堅物で有名なんだ。一度居座ったら梃子でも動かないよ。」


「そうなんだ…だけど」

「大丈夫だよ、ノエルちゃん。僕たちは普段通りに生活しよう。」

「…分かりました。」

「ノエル、こんなもんでいいか?」

グアロが野菜を持ってきた。

「ありがと、グアロ。このあとフシュ取りに行くからお願い。」

「おう。任せてくれ。」


「ノエルちゃん、ここ、傷んでる。」

クライムが家の家具が傷んでいるのを発見。

「あ、本当だ。」

「僕が直しておくよ、2人はフシュを取りにいっておいで。」

「…じゃぁ、お願いしちゃおうかな。よろしくお願いします。」

「すまんな、クライム。」

「良いよ。いってらっしゃい。」



クライムに家具の修理を任せて、2人はフシュを取りに小川へ向かった。



ノエルの提案で、小川など、近くに向かう時は、徒歩で行くようにしている。

アーデンの景色を堪能しながら、散歩をしつつ、食料を取りに行く。


「あっ、これなんだろ。」

「ここにも落ちているのか、旧文明の遺産。」

「みたいだね、グアロ、これは平気?」

「ん?あぁ、そうだな。これは大丈夫だ。」

「良かった。」

ノエルは遺産を拾った。


棒きれのようだが、なんだか持ちやすい。

「あっ、見てこれ!」

ノエルが棒をきゅるきゅると回すと、棒がグングン伸びていく。

「凄い!これ物干しに使えるね。」

「あぁ、持って帰ろうか。」

「うん!」


新しい発見もある。

空を飛んで移動するだけでは分からないこともあるのだ。



ちなみに、こんな時でも、アンフリーは後ろからついて来ている。

しかし、ある程度の距離は取っているようで、ノエルには気を遣っているように見えた。

「アンフリーは人間が嫌いなんだ。だから近寄ろうとしない。」

グアロが言う。


「そう…なんだ…」


「アンフリーと族長は、人間がまだ文明を持っていた時に生きていたと言われててな。人間の文明が崩壊した瞬間を目撃した生き証人なんだ。だからひときわ人間を拒んでいる。」


「…もう人間にはそんな力は無いのにね…法を変えるって、そんなに大変なのかなぁ…」

ノエルは難しいことはよく分からない。

だが、人間とドラゴンが暮らせない法は嫌だなぁと思っている。


歩いて入ると小川に到着した。


「わぁ、アーデンの水はきれいだね。」

ノエルは水を大きな容器にくんだ。

グアロは手の爪で、器用にフシュを籠に入れていく。


「たくさんとれたね。」

「そうだな!」

「この水とっても気持ちいいよ!」

ノエルは水に足を付けて、はしゃぐ。


「あっ、おい!転ぶぞ!」

「へーき!」

ノエルは気持ちよさそうにくるくると身体を回転させながら手を大きく上にあげる。

「あっ!」

ノエルはずるっと足を滑らせる。


「ノ、ノエル!」

「グアロが転んだノエルに手を差し出す。

「えへへ。えいっ!」

ノエルは水をばしゃっとグアロの顔にかける。


「わっぷ!やったな!」

「えへへーそれそれー!」

「わっぷ!?このっ」

「きゃっ、あははは!」


水を掛け合う2人。

びしょびしょだ。

グアロの鱗を流れる水が太陽に反射して輝く。

満点の笑顔で水遊びする2人。


本来の目的からズレているが、こういう時間もとても愛おしくて、大事で。

楽しい。



「…」(…なるほど。確かにグアロとノエルの絆は深そうだ…ならばステップを引き上げるとしよう。)


アンフリーは離れた場所から2人を見て小さな笑みを浮かべた。何かを企む顔だ…


「グアロ、大丈夫?」

「平気だ。もっと持てるぞ。」

「そんなに取っても食べきれないよー」


夕方、すっかり遊んでしまった2人は、少し早足で帰り道を歩く。

大量のフシュの入った籠をかつぐグアロ。



「グアロ、いつもありがとう。」

「どうしたよ急に」


「えへへ、何か言いたくなったの。」

「そっか…おっ、アレ見て見ろ。」

グアロが手空きの方の手の指で何かを指している。


「これ…お花?」

ノエルはしゃがんで、グアロの指した花を見る。


「これがどうしたの?」

ノエルが持った花は青い花。

10枚の花びらがまんべんなくバランスよく重なっている。


「なんだ、知らないのか?この花の名前な…“ノエルの花”って言うんだぞ?」


「あっ、私と同じ名前!」

「あぁ。そして…」

グアロはその傍にあったもう一つの花を器用に摘んだ。

その花はチューリップのような形だが、黒い菊、黒い葉。そして黒いつぼみ。

それは花になりかけていて、中も黒い…




「もう居ないが、俺の親がこの花の名前を俺の名前にしたんだ。」

「じゃぁ、この花の名前は…“グアロの花”?」

「そうだ。」


「へぇー!私たち、2人共花の名前なんだね!」

「あぁ、偶然だよな。」


これこそまさに“黒竜花こくりゅうか”だ。


「ノエル、花には言葉があるんだぞ。」

「言葉?」

「それぞれの花には意味があるんだ。」

「そうなんだ!グアロってば物知りなんだね!」

「そんなことはないさ。俺なんてまだまだだ。」


「グアロの花の言葉は、“飛翔”、“飛ぶ”等の意味があってな。この空を強く羽ばたいて欲しいっていう意味を込めて俺の名前が出来上がったって、親が生きていたころに教えてもらった。」


「へぇー!」

「俺も空を飛ぶのが好きでな。この名前で良かった、そう思うんだ」

グアロは微笑んで言う。


「そしてノエルの花。これはな“最たる感謝”。つまり、ありがとうっていう意味だな。」


「ありがとう…かぁ。私もお父さんもお母さんも居ないけど、これを元にして私の名前を付けたのかなぁ」

「そうかもしれないな。生まれてくれてありがとう。そういう意味が込められているかもしれないな。」


ノエルはそっかぁと、空を見上げた。


「なんだか嬉しいなぁ。」

「花だけでも詳しく知れば楽しいだろう?」

「うん、凄いよグアロ!」


ノエルとグアロは帰り道で、2人の共通点を見つけた。

種族の違う2人にとって、共通点とはとても嬉しいことだ。



グアロはノエルの花を。

ノエルはグアロの花を交換した。


「グアロの花、私大事にする。」

「俺もこの花を大事にする。」

「お家に飾ろうよ!」

「良いな。そうしよう」


夕陽を浴び、のんびりと家に帰る2人。


アンフリーはそれを後ろから着いていく。

特に2人には干渉せず、ただ見ながら、本を読みながら。


何を考えているのか、誰にも分からなかった。







夜遅く。

アンフリーは再度村の中心部を歩いた。




「はい、これ。」

「あぁ、ありがとう。」


「いつもありがとう」

「感謝してます」


「大好きだよ」

「嬉しいなぁ」

「ありがとう」


「ここはこうするべきだよ」

「ありがとう、次からそうするよ」



いつもこの村で交わされる言葉は暖かい。優しい世界が続いているような。

ここは楽園か。そう錯覚されそうな気分になる。


アンフリーはそうは感じていなかった。


「…フム…」







(確かにこのアーデンの住民たちの絆は真のようだ。)



アンフリーは翼を羽ばたかせ、空を飛んだ。


向かう場所は、族長の所だ。



「報告いたします族長。」




深夜。

報告を待っていた族長と、その御前の前にアンフリーが頭を下げた。


「良い。こういう時ぐらい対等に話そうではないかアンフリー。」

族長はアンフリーの顔をあげさせた。


「族長、今は立場が違う、勘弁してほしい。」

「律儀な奴よな…まぁ良かろう。報告を頼む。」


「はっ。彼らの住むアーデンの住民たちの絆ははっきり申し上げて、実に芯の太い絆で作り上げられております。彼らの愛情や友情は非常に硬いと推測されます。」


アンフリーが得た情報や、自分で見た光景を脳内に浮かべ、真実を述べる。



「…そうか…人と竜はいつの間にか、そこまで深い親睦を築けるようになったか。」


族長はそれをあっさりと受け入れた。

「族長、いかがいたしましょう。」

アンフリーが指示を求めた。


「良い、多くの計画を企画しておったが、それらを全てやる必要は無いようだ。最終段階へ一気に移行することとしよう。」

「なんと!正気なのですか!?」

アンフリーは険しい目で族長を見る。


そして、その直後にハッとし、「失礼しました」と謝罪した。


「あぁ、この最終段階の計画…これさえも、彼らの愛が打ち勝つというならば、私はグアロの意志に従おう。」


「…アーデンのみ、人と竜の付き合いを認めるという特例を…お許しになるということですか。」

アンフリーは焦りの表情を見せて族長に言う。


「……アンフリーよ。私たちは今まで幾千もの時代の流れを生きてきた……もし彼らの愛が私たちを打ち負かすのならば、それは新時代の幕開けなのかもしれん。」

「…族長、あなたは……」

「…話はここまでじゃ、ご苦労。休息を取り、早朝から最終段階の計画を発動せよ。」



「……かしこまりました。」


アンフリーは頭を下げ、族長の部屋から出た。





「…法を変えることは安易では無い…奴らは事の重大さが分かっておらん…じゃが……」

族長は小さくため息。



「…時代の流れは残酷なものだ…私の傲慢が、この秩序を創りだしたのではないか…」



族長は悩んでいた。

(私は人を憎んだりはしていない…だが、族長であること、そして人間を嫌う我が同胞の為…必要だったのだ……人間を遠ざける法が……しかしそれは人間を差別する要因となった…これが私の犯した罪じゃ…)



族長は心のどこかで思っていた。


いつか自分を解放してくれるほどの、強い意志を持つ、真の愛を持つ人間とドラゴンが現れることを。




「…」(グアロ、小娘…証明して見せよ、ぶつけてこい。その真の愛を…)




族長は、それまでは族長らしく。ふるまうことを決めた。


夜が明ける。





―――




翌朝はなんだか騒がしかった。


「…!!」

「…!」


「…!?」

「!!!!」



「…なんだろう…?」

その声を聞き、ノエルは目をさまし窓を開けた。


「!!グ、グアロ!!クライムさん!!」


「んー…どうした…?ノエル…」

「…?」

グアロとクライムは眠そうに起き上がる。



「村から大きな物音がするの!誰かの怒鳴り声とか…」


「…本当だ…これは一体どうしたことだ?」

クライムが険しい顔をする。


「…なんだ…この感じ…クライム、感じるか?」

「…うん、何だろう…こう、お腹がムズムズする…」

クライムはお腹をさすってみる。


「…グアロ、私もなんだか…」

ノエルは顔色が真っ青だ。

「ノ、ノエル!」

「…なんだろ、おかしいよ、これ…私、どうなっちゃうの…!?ああっ!!」

ノエルの顔は段々険しくなり、髪をもみくちゃと掻き廻す。


「ノエル!正気を保て!」

グアロはノエルを抱きしめた。


「話してよ!このデカブツ!!」

「なっ…!」


「ご…ごめ…ごめん、なさい。」

ノエルは多量の汗を掻き、身体を震わせる。

「ノ、ノエル…」

グアロはノエルに触れようとする。

するとノエルは勢いよくその手を弾いた。

「いゃああああっ!」

ノエルは傍にある、ノエルの花とグアロの花が入った瓶を弾き飛ばした。

バリンとガラスの割れる音と同時にノエルは突然発狂して外へ飛び出していった。


「ど、どうなって…俺…」

グアロは酷く落ち込む。


「グアロ…追うんだ。僕らはまだ正気で居られている。僕らが動かないと!」

クライムはグアロを励ます。


「…そ、そうだな…こうなった原因を調査しなければ……」


グアロとクライムは村の中心へ向かった。


今、その村の中心が2人の予想以上にとんでもないことになっていることなど、知る由もなく…




Episode 15 END


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