black flower 黒竜花 ⅩⅢ
Episode 13 スカイハネムーン 夜空に抱かれて
「…そう、決意、固められたのね。」
「うん、アイラちゃん、大事なことを教えてくれてありがとう。」
「よしてよ、あたしは大したことしてないよ。」
ノエルとグアロは、将来の事をしっかり話し合い、そして。共に生きる上、種族上、先に居なくなってしまうノエルの事を気にするグアロと、一人になってしまうグアロを気にしたノエルだが、グアロは何があってもノエルを死ぬまで思い続ける。
ノエルは、グアロに全てを委ね、そして消えた後も、ずっと見守り続けると。
お互いが決意をしっかり固めた。
それを気づかせてくれたアイラの元に、ノエルは翌日来ていた。
「それにしても…なんか気合入ってるように見えるけど。」
アイラはノエルを見つめながら言う。
「あっ、分かる?実は……」
ノエルの服装はいつもの服装では無い。
いつもはつぎはぎだらけの服を着ているが、今回は色や種類は同じではあるが、つぎはぎがない。
「じゃぁね!アイラちゃん!エリーもまたね!」
「うん、楽しんでおいでよ!」
「いってらっしゃい。」
「はーい!」
アイラとエリーと別れ、ノエルはうきうきとスキップしてもどって行く。
「にしても、ほんとにラブラブね、あの子たち。」
「良いことではありませんか。」
「そうね、今、きっとあの子たちは、ううん、これからも。きっと幸せよ。」
2人は微笑みあう。
「で、どちらに向かわれると?」
「それは教えてくれなかったね。でも良いなぁ。スカイハネムーンだなんて。」
「ええ、私たちもそのうちやりますか?」
「いいね。ハネムーンじゃないけど空のお散歩!久しぶりにやろうか!」
どうやらノエルは、グアロとこれからスカイハネムーンに出かけるようだ。
主に、空を旅する新婚旅行のようなものだ。
「おまたせー!」
「よう、済んだか。」
「うん!いつでも良いよ!」
「よし、なら俺の背中に乗ってくれ。」
家ではグアロが待っていた。
ノエルを背中に乗せ、翼を羽ばたかせる。
「出発だ。」
「おー!」
空を飛ぶグアロ。
背中から風をたっぷりと感じ、空の雲を突き抜けた。
「うわーーーっ!すごい!」
雲が下に見える。
キラキラ輝く太陽が2人を照らす。
「今はお昼だ。夜になったらきっと星が綺麗だぞ。」
「そうだね。楽しみだなぁ」
グアロは雲の下へ移動。
自然に囲まれた風景が戻ってきた。
緑がどこまでも広がり、岩場があちこち無数に点在しており、小さな川がずーっと先まで続いている。
これを全て彼らは上から眺めている。
ノエルにとってはどれも新鮮で、グアロにとっても知らない場所を飛ぶことに快感を覚えた。
何時間飛んでても飽きることは無い、知らない世界。
ノエルも、グアロも。
最高に楽しんだ。
「よし、あの辺りに降りよう。」
グアロが選んだ場所は、小さな河原。
魚がたくさん暮らしていそうな、澄んだ綺麗な小川が流れていて、静かな場所。
「ここで夜を待とう。」
時刻は夕方。
もう何時間も飛行した。
アーデンからどのぐらい時間が流れただろう。
時間の感覚がつかめなくなるぐらい、ノエルもグアロも楽しんだようだ。
2人で手分けして夜の準備を整えた。
グアロはその巨体で小川のフシュを大量に取り、炎で焼いた。
ノエルは森で薪を集めてきた。
おまけに、旧文明の遺産も何点か混じっていたが、ノエルらしい。
「よーし、焼けたぞ。」
「うわーっ、おいしそう。いただきまーす!」
グアロお手製の身体に良い薬草をトッピングし、調味料替わりに美味しい木の実の香りをしみこませた。
ただの焼きフシュとは思えないぐらいに仕上がった完璧すぎる料理。
「グアロって、主婦みたい。」
「よせよ、しかも俺はオスだぞ。」
「じゃぁ主夫だね。」
「うーむ…それなら…」
「なんだか夫婦みたいな会話だね。」
「ホントだな!でも俺たち、もうそんな感じだろ?」
「そうだね。この空を旅するハネムーン。グアロが言いださなかったらこんな素敵なこと、起こらなかったわ。」
このハネムーンはグアロが提案したのだ。
ハネムーンだと言い出したのはノエルだが、まんざら否定もないので、結局ハネムーンということになっている。
1日だけのハネムーンだが、それでも十分だ。
「ノエルと一緒に、一緒の思い出を創りたいんだ。これからもずっと、ずっと。な。」
グアロは恥ずかしがりながら言う。
「嬉しい。」
ノエルは笑顔で言う。
「そうか、良かった…。」
グアロは恥ずかしくて言葉が上手く出せないでいるようだ。
「…陽が暮れてきた。夕日も沈みそうだ。そろそろ…行こう。」
「うんっ。」
グアロの背中に乗ったノエル。
グアロは再び空を飛んだ。
夕陽のオレンジ色の光に包まれて、雲の上へと突き出た。
「…わぁ…!!」
オレンジ色に包まれる2人。
雲も、空も。全てが幻想的なオレンジで包まれた。
そんな光を創りだす夕陽が沈んでいく。
「…グアロ。私、こんな美しい景色。見たこと無い。」
「俺が見た景色をお前にも見せたかった。」
共有の思い出…
美しい夕陽は沈み夜が訪れた。
星々が姿を現し、空を綺麗に染める。
「凄い凄い!地上で見るのと大違いだわ!」
流れ星。
一番星。
繋ぐ星座。
ぼんやり光る月。
全てが地上で見るよりも近く、そして美しい。
「グアロ。あなたの手に乗せて。」
ノエルはグアロの手のひらに乗った。
「グアロの顔を見ながら、この空が見たいわ。背中からじゃグアロも私が見えないし私もグアロが見えないから!」
「よし、一緒に見るか。」
空を眺める2人。
キラキラと輝く星々の流れを静かに2人は見た。
時々見つめ合っては笑いあい。
グアロは星もそうだが…ノエルの方を見ることが多いように見受けられる。
「グアロ、私ばっかり見ちゃなんだか恥ずかしいよ…」
「ん、あぁ…すまない…ノエルも…その、何だ…この星々よりも…良い。」
グアロは顔を赤くして言う。
「そんな大げさだよ。でも嬉しい。ありがと。」
ノエルの笑顔が眩しい。グアロは心の底からノエルに見惚れ、高揚した。
「…これからも、傍に居てやる…」
「うん、私もだよ。ずっと、傍に。」
2人は口を合わせてキスを交わした…
ずっと続く楽しい時間。
幸せな時間。
大好きな人と一緒に居られる時間。
そんな時間をたくさん作って、決して後悔の無いようにしたい。
最後のその時まで、愛して、愛して、最後まで愛し続けて…
この星空も、夕陽も。
2人にとっては、本当に忘れられない最高の思い出になったことだろう。
そしてこれからも2人はこんな楽しい思い出を創りながら暮らしていくのだ。
その先の未来も、楽しみだ。2人はそう思った…
Episode 13 END・・・
?
「楽しかったね。」
「あぁ!また行こうな。夜空の旅。」
「うん!次は季節が変わったら行こうね!きっと違う星が見られるよ!」
「そうだな。」
「もうすぐアーデンだね。」
「…?」
「グアロ?」
「…焦げ臭くないか?」
「…本当だ…!あぁっ!!あれ!アーデンが…!!」
「行ってみよう!」
「…!!」
楽しい時間。
それは決して無限では無い。
有限だ。
しかし、そんな有限の中で、楽しい時間は費やされ、それは思い出となり残り続ける。
そしてそんな限られた時間の中、すべてが幸せな時間とは限らない。
そんな時間を手にするために…乗り越えなくてはならないこともある。
「…これ…!」
「皆は何処だ!?」
ノエルとグアロが帰ってきた、新しい故郷アーデン
ここをハネムーンで出てわずか1日。
そんなわずか1日で、アーデンは変わっていた。
「アイラちゃん!エリー!」
「どうなっている…まさか…これは…!?」
平和な村に立ち込めていたのは
灼熱の炎だった
Episode 13 END




