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再び、ジャン

「ジャン。ロアナは、魔女だから、恨んで、わすれなさい」


 俺を心配そうに見つめ、何とか俺が支えていた、力を全く感じない母の手。動かない口で何とか聞き取れるほどに小さく発した言葉が合図であったように、それが、けいれんし、最期の力を失う。俺は、愕然としながら、さっきまで否定してきた、言葉を頭の内で反芻していた。

 すべてが聞き取れたわけじゃない。断片的な言葉それをつなぎ合わせた結果、この言葉が出来上がった。


「この、病は魔女が起こしている」


「魔女は、聖女が生れたことを危惧している」


「魔女の正体は――」


 さっきまで、否定してきた。必死になって、あいつがそんなことをするはずなんかないと言ってきた。



「母さん……」


 母さんに、ロアナの噂を伝えたことなどない。ロアナのことを恨めなんて言わないはずだ。確かに、ロアナが気になる(ヒト)だ。って俺は言っていたけど、でも、母さんは確証を持って、ロアナを疑っていた。そして、死の間際に、ロアナを憎めと言った。俺は、それを信じることにした。




「母さんは言った。ロアナは魔女だから、恨んで恋していたことなんて忘れろって」


「そうか、君は、大変な思いをしてきたのだな。しかし天涯孤独の身か。もし勇気ある君が、承諾してくれるのならば、ポルティア家の養子とならぬか?」


「え、そんなことは」


「うふふ、あなたにとってもいい話だと思うわ。養子と言っても、扱いは使用人のような物だけど、それでも、子供一人で生きているよりかははるかにましでしょう?」


 俺は、その声に驚いた。聖女リリーアが、そう言う提案をしてきたのだから。


「一人で?」


「そう。でも、あなたが魔女を討ち果たす誉を得た。って知ったら、王様も黙っていないかも」



『でさ、すげー化け物退治して、王様に褒めてもらったんだぜ』


『すごーい!ジャンって本当に強いのね』


 幼いころに話したほら話が不意に頭によみがえる。そうか、その化け物が、ロアナだったわけだ。あの悪女、俺に気があるふりをして、話を聞きやがって。危なかった。……俺は、もう少しで騙されるはずだったというわけなのか。


「どうしたのかね?ジャン君?」


「いえ、ぜひともお願いいたします」


 俺は頭を下げて、侯爵に頼み込んだ。まさかの、人生が逆転できる瞬間がやってくるとは思っていなかった。俺の望みは、侯爵に受け入れられて、侯爵の外子として、ポルティア家の養子になった。

 その時俺は、気が付けなかった。にやつく俺の頭の上で、さらにどす黒い笑みが広がっていたことを。


 その後、俺は、王都で厳しい訓練を積んだ。そんな俺でも、10年もすれば、いっぱしの正騎士になることができた。



 リリーア姉は、聖女として、父プッレも健在で、全てが順調に流れていたそんな折だった。



 300年ぶりに魔族が攻めてきた。

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