ジャン
20000字ほどの短編です。完結まで予約投稿済。緩めのバッドエンドになります。
それを、最初に聞いたとき感じたのは、困惑だった。
それは、次第に諦めへと変わり、
自らの身に降りかかった時、それが、怒りへと変わった。
最前列、小さな体を利用して、大人たちの足の間、股の下すらくぐって、おれは、そこに立った。
目の前には、処刑台。黒髪の女の子……魔女がいる。
罪状を告げる声が、静かに処刑場に響く。
やがて、それが終わり魔女が振り向く。
悲し気な赤い瞳。それがイラつかせた。手に持った石を投げつける。
「ウソつき!!!!」
とうに、石を投げていい時間は終わっていたけど、俺は、かまわなかった。
右手の石が、魔女の額をかすめたのを見て、左手の石を持ち換えようとしたところで、大人たちの大きな手に肩を押さえられる。
もっとも、俺を非難しようとか、締め出そうというわけではなさそうだった。
その目からは、俺の行動に対する同情が痛いほどに伝わってくる。
魔女は、血が目に流れるのも構わずに、俺の方を呆然と見ていたが、あっという間に処刑人の手に取り押さえられて、処刑台に首が押さえつけられる。
大斧が太陽の光を反射し、その次の瞬間には、処刑台から、桶に首が落ちた。
処刑場に歓声が響く。地ならし、叫び、哄笑。
どう反応したいいのかわからない俺の下に、侯爵様の騎士が、言伝にやってくる。
曰く、
「勇気ある子供よ。お前が、誉を為せ」
俺は、頷いて、開いた処刑場の扉をくぐる。罪の深さからか、処刑場の地面にめり込むほどに倒れ込んで、血を流している魔女の体があった。
処刑人が、俺を見た。あからさまではないが、明らかに嫌悪感を出しているのがわかる。
俺は気にしない。そのまま、侯爵様の下へ向かう。小太りの侯爵様が、俺を視線に捉える。俺は、騎士に導かれるまま、立ち止まる。騎士はそのまま、侯爵様の横に立つ。
「お前、名はなんという?」
侯爵様は、まじまじとまるで値踏みするように俺を見ていた。
「ジャン」
俺の声に、そうか、ジャン、ジャンかと、侯爵様が、何度か口の中でつぶやくのが喧騒の中で聞こえた。
「魔女に何をされたのだ?」
「唯一の肉親である、母を殺されました」
「そうか……ジャン、あの魔女も、いちおうは、我らの家族で、わたしの子なのだよ――」
侯爵が、腰に下げていた、柄に女神の彫刻が成された直刀のような短刀を騎士に渡し、それが、俺の手に渡る。
俺は、侯爵の言いたいことがわかる。
「ジャン・ポルティアよ。魔女を討ち取って誉となせ」
ポルティアそれは、侯爵様の家名。侯爵様の言葉に、力強く俺は頷く。
俺は侯爵様に背を向けると、俺たちを裏切った魔女の下へとゆっくりと歩を進めた。
俺たちを裏切った魔女を討ち取るために。