受け継いだ能力と悪意
「体術999 剣術999 魔力量999 聖魔法999 闇魔法999 炎魔法999 水魔法999 氷魔法999 自然魔法999 風魔法999 無属性魔法999 成長速度999・・・・・・まだまだあるけどこれって・・・・・・」
読み上げながら音也は女神の言葉を思い出す。
それはコトヤが契約の時に使ったこちらの世界での力よ。コトヤの積み重ねを全部キミに返す。それがあれば余裕で生きていけるでしょ、という女神の言葉。
「父さんがドラゴンを倒した時のステータスだよなぁ。でも魔法って言っても使い方が分からなきゃ何もできないし、どうすればいいんだろ。冒険者ギルドに行けば学べたりしないかな」
そう呟いていると、突如音也は腹部に電撃が走るのを感じた。
「痛っ・・・・・・何だ」
その痛みに驚愕しながら音也は自分の腹部を摩る。
すると細い針のような物が刺さっていた。
ステータス画面に集中していた音也はどこからか飛来した針に気づかなかったというわけだ。
「な、なんだこれ・・・・・・」
針を抜こうとすると体に力が入らないことに気付く音也。
「くっ・・・・・・力が・・・・・・・」
力が抜けたことに困惑していると音也の前方から人影が現れた。
「珍しい服装をしているな。他国の貴族か何かかもしれん、一応連れて帰るか。ん?何だ、この汚い書物は。まぁ、 金目のものではなさそうだし、いらねぇか」
力が抜け倒れ込む音也はそんな声を聞いた。
声から察するに男らしい。
「だ・・・・・・誰だ」
痺れる体、薄れゆく意識の中で音也は言葉を絞り出した。
その男は音也の体を抱え、口角を上げる。
「俺はこの街で生まれた悪意さ」
男の言葉を聞きながら音也は意識を失ってしまった。
音也が意識を失った同時刻。
「ではこちらで傭兵登録は完了です。依頼はこちらで受けることができますが、どうされますか」
傭兵ギルドの受付でヴァンは傭兵登録を完了させていた。
「今日は、宿を探さなければならないので」
傭兵ギルドの受付嬢にそう伝え、ヴァンは傭兵ギルドを出る。
そのままヴァンは大通りに向かって歩き、そこで音也のことを思い出した。
「大丈夫かな、オトヤ。ちょっと冒険者ギルドを覗いてみるか。常識がなさそうだもんなぁ。何か問題を起こしたり厄介ごとに巻き込まれてなきゃいいけど」
そう呟きながら大通りを冒険者ギルドに向かって歩いているヴァン。
すると前方から、見覚えのある書物を持っている小さな男の子が歩いてきた。
すぐにそれが音也の持っていたノートだとヴァンは気付く。
「それは、オトヤの・・・・・・・ねぇキミ」
ヴァンは男の子に声をかけた。
「どうしたの」
男の子は首を傾げながらヴァンの声に反応する。
改めて男の子が持っているノートを確認したヴァン。見慣れない文字とデザインの書物にそれが音也の持っていたノートだと確信した。
「それは俺の知り合いのものなんだ。どこでそれを」
そうヴァンが男の子に尋ねると男の子は少し離れた横道を指差す。
「あそこに落ちてたんだ。見たこともない服装をした男の人が誰かに抱えられて連れてかれたんだけど、これを落としたみたいで帝国兵に届けようかと思って」
男の子はそう言ってからノートをヴァンに渡した。
その話を聞き、ヴァンは音也が何か厄介ごとに巻き込まれたことに気付く。