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傭兵と冒険者

「そうだなぁ・・・・・・何か仕事をしなきゃいけないんだけど、命懸けってのはちょっと」

 タンタミナの街に入ると、奥の城のような建物へ舗装された道が続いており、枝分かれするように左右へいくつもの道が広がっている。

 門から城へ長く続く大通りがあり、それを基準に街が広がっていった様子が感じ取れた。

 大通りには様々な店が建ち並び、この街の人々で賑わっている。


「ありがとうヴァン。助かったよ」


 音也は先ほどのフォローに感謝を述べる。

 すると、ヴァンは優しく微笑み得意げな表情を浮かべた。


「気にすんなって。何か訳ありなんだろ?それに悪意もないって分かったんだから、問題ないだろう。それよりどうする?俺は傭兵のギルド、集会所に向かうつもりだが」


 ヴァンはそう言って、大通りから右に曲がる道を指差す。その道の奥に木造の大きな建物が見えた。どうやらそれが傭兵のギルドなのだろう。

 そうヴァンに言われ、音也は自分に目的がないことを改めて考えさせられた。

 それもそうだ。そもそも何か目的があってこちらの世界に転移したわけではない。世界を管理している女神のミス、勘違いの契約でこちらの世界に呼び出されてしまった音也。

 強いて言えばこの世界での目的は安全に生きていく、というところだろうか。

 だとするならば、傭兵という物騒な響きの職業は安全とは考えにくい。



 音也がそう言うとヴァンは音也の体をまじまじと見回した。


「確かにオトヤは戦うって感じじゃないもんな。職人なんてどうだ?武器職人、服職人、料理人なんてのもあるぜ。あとはそうだなぁ、傭兵じゃなくて冒険者っていうのもあるな」

「傭兵と冒険者って何が違うんだ」


 ヴァンに疑問をぶつける音也。

 するとヴァンは人差し指を立て、説明を始めた。


「冒険者っていうのは多種多様な依頼をこなすのさ。魔物の討伐、薬草の採取、それに商人の護衛とかね。それに対して傭兵は戦いのプロ。護衛や防衛、はたまた国家間の戦争に雇われ剣を振るう。ほら俺には冒険者のように考えて依頼をこなすなんて出来ないからさ。目の前の敵に剣を振るうのが性に合ってるんじゃないかってね」


 ヴァンはそう言って軽く笑う。

 冒険者はその名の通り冒険しながら戦闘を含む様々な依頼をこなす。傭兵は戦闘に関する依頼のみをこなす専門的な職業ということか、と音也は理解した。

 その話を聞く限り自分には冒険者が向いているんじゃないか、と考える音也。


「なるほど。じゃあ、僕には冒険者が向いているのかもしれない」


 そう音也が言うとヴァンは大きく頷いた。


「確かにそうだな。じゃあこの大きな道を進むと大きな建物が見えると思う。そこが冒険者のギルドなはずだ。さっき門番から街の地図をもらっておいたんだ」


 ヴァンはそう言って地図を広げる。

 音也が冒険者ギルドに向かうならばヴァンとはここで別れる、ということ。短い間だったが別れとは寂しいものだな、と音也は感じていた。

 そんな音也の雰囲気を察したのかヴァンは右手を差し出す。


「短い間だったが楽しかったぜ。同じ街にいるんだからどこかで会うこともあるだろうさ。永遠の別れって訳でもあるまいよ。また酒でも飲もう」


 そのヴァンの言葉に涙腺を刺激される音也だったがなんとか堪え、ヴァンの右手を握り返した。


「ありがとうヴァン。元気で」

「ああ、オトヤもな」


 そう言ってヴァンは傭兵ギルドへと向かい歩き始める。

 その背中を見送ってから音也は冒険者ギルドへと向かった。



「改めて考えると、何も知らないんだな、僕は」


 冒険者ギルドへ向かって歩きながらそう呟く音也。

 そういえば、と懐にしまっていた父親のノートを取り出した。


「確か女神様がこのノートに〈ステータスオープン〉と唱えろって言っていたな」


 音也がそう唱えた瞬間、ノートが光を放ち、立体映像のような形でパソコン画面のようなものが現れた。

 周囲にいる人々がその光に反応し、音也の方をジロジロと見始める。

 そもそも音也はパーカーとジーンズ

というこの世界には似つかわしくない服装をしているため、一度視線を集めてしまうと好奇の目で見られてしまう。

 そんな視線に耐えられなくなり慌てて人の少ない道に駆け込んだ。

 周囲に誰もいないことを確認した音也は先程現れたモニターを確認する。 そこには〈大泉 音也のステータス〉と書かれており、その下には無数の文字が書かれていた。


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