謎の村
シューダさん曰く、このクレキス王国の少し離れた場所にアルゴス村という村があるのだが、その村は少し変わっているらしい。
なんでも、帰ってきたギルドやクレキス王国騎士団は皆、ボロボロになって帰ってくるらしい。アルゴス村まで行く道は舗装されており、モンスターの攻撃でダメージを受けたということではない。
噂では、アルゴス村の者たちではないかと言われている。
「そんな村が…でもなんで攻撃してくるんだろ?」
「私たちも分かりません…」
「俺、その村に行っていいですか?」
「危険ですよ!ギルドが一晩絶たずして、帰ってきたんですよ?レルアさん一人ではもっと危険です!」
「俺たちはアースクを倒したんですよ?攻撃なんて壁を立てて、防いでやりますよ!」
そういうとシューダさんは少し口角を上げた。
「ふふっ。そうでしたね、レルアさんなら大丈夫ですね」
「任せてください!」
災厄の神を一神倒したんだ。ギルドや騎士よりちょっとだけ強い村人が相手だろ?
「でしたら、明後日……ではなく2日後にギルドとクレキス王国騎士団で会議…話し合いをしましょう。アルゴス村のことを聞いて、情報を集めます」
「はい!」
2日後になった。
これって確か……"かいぎ"って読むんだっけ?
クレキス王国の会議室に入った。そこにはシューダさんと王様、ギルドの人たち、クレキス王国騎士団がいた。
よし、俺も会議を参加するぞ。難しい言葉は分かんないから出来れば、簡単な言葉で話してほしいな。
俺とシューダさんは席に座ると、作戦会議が始まった。
「では、これより作戦会議を始める。まずアルゴス村へ派遣したギルドから話を聞こうか」
ギルドの皆んなが立ち上がった。
「はっ。アルゴス村の門には足元に縄が仕掛けられており、その縄の先に幾つものベルがありました」
「そのトラップはまだ避けられますが、見張り塔から村人が狙撃。他にも家の影からの狙撃。村の領地内には地雷型のスキルが設置されてます」
「村人は皆、布を被っており、素顔が見えませんでした」
「スキルは基礎スキルのみで弱いものの、数が多く、避けるのは至難の業かと」
他にもギルドの人たちはアルゴス村のことを話している。まとめると、アルゴス村には様々なトラップがあり、中に入ることは非常に難しいっぽい。
「なるほど。村の住民たちは我々を完全に敵視していると。ではクレキス王国騎士団。他に情報はあるかね?」
すると、隣に座っていたシューダさんが立ち上がった。
「はい。アルゴス村には囲うように柵が建っており、その柵には茨が絡まってます。柵をよじ登る、破壊するなどは難しいかと」
「首領らしき人物も布を被っている可能性があり、交渉は難しいかと」
なるほど、つまり正面突破しかないのか。飛ぶスキルとかないから上からは入れない。……いや、待てよ?俺の地震で地面を生成させたら、上から入れるんじゃね!?
「やはり、アルゴス村との同盟は厳しいか…」
「そうですね…」
「俺、行けます!」
「聞いてなかったのか?あの村は危険だ!そ…それに君は誰なのだ!シューダ団長の隣にずっといたが、関係者なのか!」
あっ、名前言うの忘れてた。
俺は椅子から立ち上がった。
「俺は……レルア・カミアス!災厄の神々を倒し、この世界を救う者だ!」
「レルア・カミアス?」
「君は確か、迷い子だった…」
「はい。王様、あの時はありがとうございました」
俺はこれでも助けられた恩は返せるんだ。アルゴス村とのどう…めい?ってやつを俺がやってやる!
「本当に一人で大丈夫なのかい?」
「任せてください」
そうして、俺はアルゴス村へ行くことになった。一体どんな場所なんだ?ギルドやクレキス王国騎士団がボロボロになるほどの力…
「やはり、私も同行します!レルアさん一人では心配です…」
「大丈夫ですって!俺に任せてください」
俺はクレキス王国を後にした。シューダさんからは食料とか水をもらった。こんなになくても、大丈夫なのにな…アルゴス村までは徒歩で行ける距離だった。
「ここか」
アルゴス村は意外とデカい村だ。ってか、村ってこんな感じなんだ。クレキス王国よりはボロいというか…なんというか。いや、失礼だな。
「誰かいませんかー」
……静かだな。本当に人はいるのか?人気が全くないけど…
「お邪魔しまーす…」
俺は村の門から中に入ろうとした時、ギルドの人たちの作戦会議の会話を思い出した。
「確か、門には縄があって、それに引っかかるとベルが鳴るんだっけ?」
ベルが鳴って、村の人たちに知らせるってことか。いくら馬鹿な俺でもベルには引っかからない……
カランカラン!!
やべ。そうだ、俺ってバカだったんだ…
その時、俺の先に幾つもの魔法陣が展開され、攻撃が始まった。
「マジか!?」
攻撃が一斉に始まった。だが、まだ避けれる数だ。俺が避けれるってことはギルドやクレキス王国騎士団も避けれるってことだよな?これから激しくなるのか…
「出て行け!部外者め!」
「子供を避難させて!」
「攻撃を止めるな!」
だんだん、厳しくなってきたな。反撃をしたら、余計に敵だって思われるだろうし、攻撃も出来ない。地震で攻撃を防御しながら、避けながら……その時、一人の人間が手を挙げた。すると、攻撃はピタリと止まった。
「ほっ…と、ん?止まった?」
すると、手を挙げた人間が布を脱いだ。それに続き、皆んな布を脱いだ。すると、その村人たちは皆、女性だった。男が一人も見当たらない。
「女の人ばっかだ…」
「やはり、貴様が災厄の神の…」
え?災厄の神?確かに、災厄の神は倒したけど…
「災厄の神ではないぞ?倒しただけだ」
「黙れ。神は人間に化けることができる。それに地面を自在に操るスキル…ゴットスキルの類に違いない!」
そうか…災厄の神のスキルである地震を使ってしまったから、怪しまれてるのか。
「これは災厄の神を倒したからであって…!」
「騙されないぞ、貴様から発せられているオーラが人間ではない。それが証拠だ」
かなり強めな口調だな。容姿は美少女でピンク髪に青色の眼をしているツインテールの髪型。ローブのような服を身につけており、身長とほぼ同じ杖を持っている。
「俺はただの人間だ!」
「聞いて呆れるな。自分の身分すらも知らないとはな」
「み……ぶんってやつもよく分からないが、俺はクレキス王国から来たレルア・カミアスだ」
「クレキス王国だと?なら、尚更帰れ、邪神!」
おぉ…いきなりすぎてびっくりしたわ。
「話を聞いてくれ!俺はただクレキス王国とどう…めい?をしてほしいから来ただけだ。何も怪しいことなんてしない」
「信用できるか。下等で劣等な生物の言葉など」
めっちゃくちゃ悪口じゃん。あいつらにも言われたことないぞ。それにこんな可愛い子から言われると余計に傷つく…
「なんでだ!」
「黙れ、男と同じ空間、空気、視界に入れることさえ、嫌と言うのに……消え失せろ」
少女はまた魔法陣を展開した。だが、大きさが明らかに違う。これは避けれない!地震で防ぎ切れるか?
「レイア〜?お客さんには敬語って言ってるでしょ〜?」
「誰だ?」
その声は少女の奥から聞こえてくる。奥から歩いてきた女性は青髪に糸目、褐色の肌をした女性がやってきた。俺より少し身長が高い?
俺、身長まで女性に負けるの!?
「あらあら、本当にお客さんがいらっしゃるなんて、初めてです」
「初めまして…」
綺麗な女性だな。ってか、レイアって言ってたよな?あの少女、レイアって名前なのか?
「すいません、レイアたちが失礼なことをして」
「いえいえ、怪我もしてないので」
「ちょっとお姉ちゃん、危ないって!」
お姉ちゃん!?姉妹だったのか…でも危ないって…なんでアルゴス村の人も危ないって言ってるんだ?派遣された人はアルゴス村が危ないって言って、アルゴス村の人は俺たちが危ない…どゆこと?
俺の頭では理解できない。何がどうなってるんだ?どっちかが間違ってたのか?
「だから、俺は何もしないって!」
「また私たちを騙すつもりだろ!お前らの魂胆は分かってるんだ」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。今は情報の整理しましょう。さぁ、中へどうぞ」
俺はアルゴス村の奥にある家、多分姉妹の家だろう。そこへ入った。家に向かう途中だけど、アルゴス村の人たちからの目線をすごい感じる…そんな怖い目でこっちを見ないで!怖いよ!
「わたしの名前はルシファー。ルシファー・スノー・ファルクリデと言います。こっちは妹のレイア・バリンス・ファルクリデです」
「ふん!」
長い名前だ。覚えれるかな…
「俺はレルア・カミアスって言います」
この村は一体なんなんだ?




