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硬く結ばれる姉妹の絆


 彼女を送り届けた翌日。僕はいつも通り支度をすませるとスマホに着信があった、それも鈴宮家からだ。何かあったのかと思い急いで通話にでる。


 「もしもし?」


 『お兄ちゃん!お姉ちゃんが、、お姉ちゃんがぁたおれちゃたぁぁぁ!』


 「⁉︎ 落ち着いてくれ香澄ちゃん。すぐに行くから待ってて!」


 雨に濡れた次の日から様子が変だった、もしかしたら風邪の可能性が高い。

 そう思った僕はすぐさま家を飛び出し最寄りの薬局で店員さんによく効く薬を幾つか見繕ってもらい鈴宮家に向かって駆けた。


 玄関の前につきチャイムを鳴らそうとしたが緊急事態のため申し訳ないがそのまま開けて中にはいりリビングに行くとそこには泣きそうな香澄ちゃんと顔も赤くフラフラな鈴宮がいた。


 「あんたなんでここに。」


 「香澄ちゃんから電話があって急いできたんだよ」


 「香澄余計な事しないで。私は大丈夫だから」


 「いやいや、落ち着けって顔もこんなに赤いし薬も買ってきたぞ」


 そういって僕は急いで袋から取り出しみせると睨みつけ殺気も立ち昇りはじめた。なぜに?そう思い薬をみる。


 あっ。ーーこれ座薬だ。


ヤバイと思った僕はすぐさま袋を漁りだす。


 「だ、大丈夫ほら普通の薬もあるから!」


 「はぁ、別に心配しなくても大丈夫だから。」


 「いや、そんなフラフラしながら言われても安心できるかよ」


 「ただ座って授業受けるだけなんだから何も問題ないわ」


 「ダメだよ、お姉ちゃん。さっきたおれちゃったからもうやすもうよ!」


 「…っ!だから大丈夫だって言ってるでしょ‼︎」


 鈴宮が怒鳴りついに香澄ちゃんは泣き出してしまう。

さすがの僕もこれには怒った。


 「鈴宮」 


 「さっきから言ってるけど私は_」


 パァンと音と共に彼女が尻餅をつく音が静まり返ったリビングに響く。


 「え、あ、辰巳……」

 「いい加減にしろ鈴宮。さすがのでも怒る。」


 「た、辰巳には関係でしょ…」


 「確かに関係ないだろうが、それでも口出しさせてもらう。お前は今自分が何してるかわかってるのか?下らない独りよがりの意地で香澄を心配させてあげくに怒鳴り泣かせて何がしたいんだ?」


 「別に私は大丈夫だって…」


 「いい加減にしろォ‼︎」


 ついに怒鳴ってしまった。大粒の涙を流しながら怯えを見せる瞳でこちらを見上げる。


 俺は不器用だから上手くは伝えられない。でも知ってる、子供はとても敏感だ。少しの体調不良や気分の落ち込みですらも不安に感じてしまう。

 これが原因で姉妹の仲に軋轢ができるかもしれない。それならば例え嫌われようが2度と家に来るなと言われようと伝えなければならない。


 鈴宮が普段香澄を心配しているように香澄もまた鈴宮を同じくらい心配していることを。


 「お前が倒れたとき香澄はどんな気持ちで泣きながら電話をかけてきたと思う、香澄にとっては今この家で頼れるのはお前だけだ。みろ、お前に怒られて怯えていても大好きなお姉ちゃんが心配でたまらないから歯食いしばってお前を止めようとしてんだろ。お姉ちゃんならただ意地張るんじゃなくて一刻も早く治して不安を取り除くことなんじゃねぇの?」


 「違うの…そんなつもりじゃなくて…ごめんなさい、ごめんなさい……」


 まだ言ってやりたい事もあるがまずは休ませることだ。


 「…香澄ちゃん。俺は鈴宮を部屋に連れて行くからそこの薬とお水もってきてくれ」


 「うん。わかった」


 へたり込んで動けそうにない鈴宮を抱き抱えるとしがみ付いてきたのでそのまま二回に上がり彼女の部屋のベッドに寝かせる。


 それまでずっと彼女は、ごめんなさい、と泣き続けていた。


 ベッドに寝かせて彼女の変わりに出来る限りの家事をやろうと思い立ち上がりドアノブに手をかけると背後から


 「置いていかないで、1人にしないで…」


 そんな泣きそうなとてもか細い声とともにバタンとベッドから落ちた音が聞こえ慌てて駆け寄る。


 「パパもママもどうして、私を、置いていくの、、1人は、いやだ、1人にしないでよぉ、…」



 彼女はとても強い女の子だ。きっとこれまでも気丈に1人で大丈夫と言ってきたのだろう、だからたった一言でいい言葉も言えず耐えてきたのだろう。


 俺はそんな彼女を優しく子供をあやすように抱きしめた。


 「鈴宮、そんな時は一言でいい。寂しいからそばに居て、でいんだよ」

 

 強くしがみつき嗚咽を漏らす彼女を抱きしめ頭を撫で続けた。


 それから数分後香澄ちゃんが水と薬を持ってきた、それを泣き止んだ鈴宮に飲ませベッドに寝かしつけると手を握って欲しいと言うので握ってあげる。


 眠りについた彼女を眺め俺が張って赤くなった頬に手を添え額同士をつける。


 今回のことで嫌われてしまったかもしれないと思うと泣きそうになる。 


 「それでも、俺はには笑っていて欲しい、悲しい顔をしていて欲しくないんだ…」


 つい声にしてしまったが今彼女は眠っているため聞こえはしないだろう。


 それからしばらくして僕はまず掃除したり香澄ちゃんにご飯作ったのち大半は看病のため鈴宮のそばにいた。


 日も落ち暗くなってきた頃鈴宮が目を覚ました。こちらを見つめてガッツリ目が合ってるのに何も言わないので僕も無言で彼女の口に体温計を突き入れた、それでも彼女は何も言わずされるがままだ。熱も下がりきりもう完全に元どうりといった感じだ。

 


 「辰巳、、ごめんね。」


 「俺は別に気にしてない。それよりも謝る相手は別にいるだろ」


 「うん」


 「香澄ちゃんならリビングにいるからいくぞ」


鈴宮を連れてリビングに入るとお姉ちゃんの事を認識した香澄ちゃんの顔がくしゃくしゃになる。


 これからは姉妹水要らずの時間だ。僕はリビングのドアをそっと閉め壁に背を預ける。


 他人からみれば彼女達の喧嘩は大した物には写らないだろうが、この家にほとんど2人暮らしの彼女達にとっては日常を一変させるものの筈だ。


 ちゃんと話し合うべきなのだ。手が声が届く時にやっておかなければ届かなくなってからではもう遅い。


 部屋から所々姉妹の声が聞こえはじめる。



 『香澄!ごめんね香澄!私が変な意地なんか張ったから、ごめんね!ごめんね‼︎」


 『お姉ちゃん!お姉ちゃぁぁん‼︎』



 どうやら上手く仲直りできたようだ。これ以上盗み聞きするのも忍びないので退散するとしよう。


 そう思い歩きだすとガチャっとなり背後から凄まじいタックルをくらいそのまま壁に激突した。


 あぁー、現しづらいぐらいに満遍なく顔面が痛い。


 なんだろう、彼女には人を背後から襲撃する習性でもあるのだろうか。



 「辰巳、辰巳ぃ」


 今度はどうしたんだろうか。


鈴宮が離れるのに十分かかった。ぎこちなさは有るもののまた3人で夕飯をいただく。ああ、やっぱりこれだな。鈴宮の料理は暖かくて染み渡る。


 これまた久しぶりに2人で食器を洗う。

 その最中鈴宮から話しかけてきた。


 「ねぇ辰巳、今日は迷惑かけてごめんね。そしてありがとう、辰巳がいてくれなかったら香澄を取り返しがつかないぐらい傷つけてたかもしれない。」

 

 「前も言ったが僕は別に気にしてない。鈴宮が勝手に解決しただけだよ」


 「捻くれてる。……いつの間にか僕に戻ってるけどもう俺って言わないの?」


 「なるべく使わないようにしてるし、なんだ急に」


 鈴宮は心なしか顔を赤らめ僕に打たれた頬にまるで今はない後に手を添わせるようにあてる。


 「その、なんていうか、あの時の辰巳ドキっとしたっていうか、別に痛いのがいいとか罵られたいとかじゃなくて、俺とか、強くきてほしいてきな感じで肩をドンってされたい的な…ね」




 ゑ?なに?どういうこと?僕のせいで何か扉を開きかけてるってこと?ダメだ、全然理解が追いつかん!


 「あ、お、おおそうだな、いつかな」


 僕はどうしようもないので生返事で誤魔化し彼女の扉が自然に閉まるのを待つことにする。南無三。




 そんなことがあり僕は帰りながら友の司に電話しこの部分だけ掻い摘んで話した。


 「という訳なんだけどさ」


 「あ、ああ。それは多分ギャップ萌え的な奴じゃないか?自然と消滅するって。たぶん」


全然あてにならない友だった。

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