第九十七話 ぼくのむかし5(ラルフ視点)
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今回は、意外な事実発覚?
それでは、どうぞ!
フィルではなくてフィオナ。ただ、それが分かっていても、彼女には完全な嫌悪感を抱くことはできなかった。
「あ、ごめんなさい。今の私は、フィオナ、でしたね」
そう言って、シュンとしてみせるフィオナの姿に、フィルの姿が重なる。フィルが落ち込む時もやはり、似たような表情を浮かべるのだから、重ねるなという方が無理だ。
「……なんで、性転換なんて、したの?」
何も聞かないままに離れることは、どうしても、できそうにない。本当は、嫌われたのではないかと、この質問をするのは少し怖かった。しかし、何も知らないままでいるわけにもいかない。僕は、フィルの親友なのだから……。
「……これからも、ラルフとともに居るために出された条件、ですね。あ、誰からの条件かとか、詳しい内容までは教えられませんが、その……とにかく、慣れてください、とだけ……」
僕とフィルの間に干渉する存在が気に入らないといえば気に入らないものの、フィルは、それを受け入れる判断をした。となれば、僕は、フィルの言うとおり、フィオナに慣れなければならなち。なんせ……。
「僕と、ともに……?」
頬を赤くするフィオナに、誤解しそうな心を宥めながらも、聞かずにはいられない。
「はい。私は、ラルフを愛していますから」
『アイシテル』なんて言葉は、さんざん聞いてきた。僕を襲った女神達は、大抵、その言葉を口にする。しかし、フィオナがそれを言うと、色々と……威力が違った。
「っ、あぁっ! ご、ごめんなさいっ! ですが、その、今はこれに関しては正直にならざるを得ない状態でして……」
顔を覆ってうずくまった僕に、フィオナは見当違いなことを言い募る。ただ、僕も僕で、フィルが勝手に決めたことを怒っていないわけではない。だから……。
「そう」
「ご、ごめんなさい。ですが、もう、愛してるの気持ちが止まらないんですっ」
熱烈な愛を告げるフィオナに、ついついそっけなく対応してしまう。それを、フィオナはさらに勘違いしてアワアワとし出すのだが、そんなフィオナを前に、僕はさっさと立ち上がる。
「ラルフ……?」
「もう、帰る」
「は、はいっ!」
フィルを……いや、フィオナをもっと僕のところに落とし込むにはどうしたら良いだろうかと、僕は自然に考えてしまう。純真の神だというのに、こんなに歪んだ考えを持っていると知られれば、もしかしたら嫌われるかもしれない。しかし、それでも、僕はそれを止めることはできなかった。
いつしか、フィオナがヤンデレと呼ばれる存在になった頃、僕はようやく、フィオナを戻れないところまで引き込めた気がして、昏く笑った。
ラルフ君は、案外黒かったし、フィオナちゃんをヤンデレに追い込んでましたねぇ。
それでは、また!




