第百十六話 対峙(ピンク頭視点)
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今回は……久々に、フィオナちゃんを出してあげましょうかね?
それでは、どうぞ!
「う、うぅん……」
ぼんやりと目を覚ました私は、一瞬、ここがどこなのか分からなかった。背中に感じるのはベッドの柔らかな感触などではなく、わりと硬質なもの。何が起こったのかと、随分と痛む頭を抱えて体を起こしたところで……。
「あ、お目覚めですね」
嬉しそうな声をあげる悪役令嬢を見つけてしまった。
「あ、あ、あ……」
「ふふっ、どうでしたか? とりあえずの宣戦布告は?」
唐突に頭の中に雪崩込むのは、気絶する直前の記憶。全身に虫が這い回り、いくつもの虫が飛び交うその光景を最後に、耐えきれずに意識を失った記憶を……。
「あれ? お気に召しませんでした? 嫌がらせというのはああいったものだと認識していましたが、もう少し、レベルを上げるべきでしたか?」
黒い髪の、悪役令嬢。フィオナと名乗る彼女の言葉を、私はすぐには理解できなかった。
「な、なん、で……」
我ながら、蚊の鳴くような声だと思いながら、必死に問いかけようとするものの、恐怖ばかりが先立って、まともに質問もできない。
「? うーん、それは、『何で嫌がらせなんてするんですかっ! 酷いですっ』みたいなヒロインのセリフですか? なら、そうですね。私の答えは決まっています。『貴方が見苦しくて、目障りだからですよ』と」
(違う、もう、私はゲームをしたいとは思わない!)
そう言いたいのに、震える唇は、言葉を紡いではくれない。
「あ、そちらの神は、完全に精神を崩壊させちゃったみたいなので、後で治療してあげますね? ヒロインの仲間が精神崩壊、なんていう物語はないですもんね?」
「あ……」
聖の神が居るらしい方向を指し示され、私は思わず絶句する。そこには、床にダラリと倒れた状態で、焦点の合わない瞳をさまよわせながらブツブツと何事かを呟いている聖の神の姿があった。
「この後は、もう挨拶は終わりということで、さらに過酷な嫌がらせをご用意しますね? もちろん、命の危険と隣り合わせなものを」
「や、やめ、て……」
「? なぜです? 貴方はヒロインでありたかったのでしょう? ならば、悪役令嬢による数々の嫌がらせを乗り越えてハッピーエンドを迎えないと」
もう、ハッピーエンドなんてどうでも良かった。この悪役令嬢から逃れられるのであれば、何だってするつもりだったのだから。
必死に、それでも、ぎこちなくしか動かない首を横に振って、イヤイヤと意思を示すものの、彼女は受け入れてくれる様子はない。
「大丈夫ですよ。あと、もう何回か心をバッキリボッキリ折ったら、チャンスをあげますから」
「チャン、ス……?」
「はい、その時、私の手を取るのであれば、ちゃんと嫌がらせは止めてあげますね」
ニコニコと笑みを浮かべる悪役令嬢に、私は、上手く動かない体で、必死に彼女の足元に食らいついた。
フィオナちゃん、ガッツリ心を折りにいっております(笑)
とっても素敵な子に育ってくれて、作者(お母さん)は、嬉しい!(笑)
それでは、また!




