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ニセ彼氏とニセ彼女

佐藤くんが手を離し、足を止めたのは小さな公園に着いてからだった。浴衣で走ることに慣れていない私は、疲れてベンチに座る。

「ごめん、いきなり走って」

「だ、大丈夫だよ。でも、どうしたの? すごく焦ってたみたいだけど……」

「あぁ、えっと……。小説の参考にしようと思って。こういうシーンがあるんだ」

佐藤くんは目を泳がせながら言った。絶対嘘だろう。でも、そう言われてしまったからには、もう何も聞けない。

「そうなんだ……」

少しは仲良くなれていたつもりだった自分がなんだかちょっと恥ずかしくなる。

「帰りはタクシーを使おう。疲れただろうし」


その言う佐藤くんに促され、その日はタクシーを使って帰った。


◾︎ ◽︎ ◾︎ ◽︎


結局あの行動は何だったんだろう?

さくらはあの日から、あの行動のことばかり考えている。

「……寒川!! 」

先生に呼ばれてハッとする。

「はっ、はい! 」

そういや、今は授業中だった。

「ったく、どうしたんだ、珍しい。ボーッとしてるんじゃない! 次までの宿題は“問題15”な。やってこいよ」

そう先生が言い終わるとチャイムが鳴った。最近全然集中できてない……。何をやっていても、佐藤くんに掴まれた手の感触が私の思考を邪魔するのだ。


そして、授業が終わった後、愛梨が近づいてきた。

「ねぇさくら、正直に答えてね」

やけに真剣な顔をして言う。

「う、うん」

「さくら、最近ボーッとしてるじゃん。それって、もしかして佐藤くんと付き合いはじめたからなの!? 」

!?!?

その言葉を聞いた瞬間、私と佐藤くんは、開けっ放しの筆箱を机から落とした。2人分の文房具が、教室の床にぶちまけられる。

どどどうゆうこと!?!?

大きな音に反応してみんなの目線がこちらに集まる。

「ちょっと、愛梨、あっちで話そうか!! 」


そう言ってさくらと愛梨は教室を出た。


◾︎ ◽︎ ◾︎ ◽︎


「えっと、どうして、そんな話になるのかな……? 」

私は、動揺を隠しきれないまま、愛梨に尋ねる。もしかするともしかして、家政婦として家に入って行っているのを、見られて勘違いされたのかな!!??

「だってこの前、佐藤くんと2人でお祭り来てたでしょ? 私、見たんだから! 」

愛梨は私に詰め寄った。

「あぁ、そっちか……」

全く良くはないが、ホッとする。どうやら、家政婦として働いてることがバレるという最悪の事態は、避けられたようだ。

「そっちって? 」

「あぁ、何でもないこっちの話! 」

「……そっか。で、いつから付き合ってるの!? 」

愛梨の脳内ではもう、付き合ってることになっているようだ。うーん、どうしよう。『良い小説を書くため』なんて言えないし……。男女2人でお祭りに行くなんて、彼氏と彼女でしかできないことだろう。言い訳が思いつかない。……でもまぁ、付き合ってることにすれば、もし家に入って行っているところを見られてしまっても、怪しまれることはない。それなら、いっそその方がいいかな。

「う、うん、まぁ、1ヶ月前くらいから付き合ってるかなー? 」

「うぁー! そうなのー?? もっと早く言ってよー♡」

「えへへ……」

「じゃあ、これから恋バナいっぱいしようね! 」

「う、うんー! 」


こうして、佐藤くんと私の関係が[小説家と家政婦]+[ニセ彼氏とニセ彼女]となった。


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